インターコンチネンタル・ホテルにあるフランチレストラン「Rech by Alain Ducasse」が突如閉店したほか、マンゴーを使ったスイーツで知られる「許留山(Hui Lau Shan)」が家賃滞納で訴えられるなど、飲食業界の苦境が一段と厳しさを増す中、香港政府は3月5日から、飲食店を対象にした補助金の申請を受け付けている。
「Rech」はフレンチを代表するシェフ、アラン・デュカスさんが経営する店で、3年連続ミシュランで1つ星を獲得していた。しかし3月11日、突如、閉店を従業員に通知。30人のシェフを含めた従業員は即日解雇となった。もともと「Rech」は2020年末に同ホテルを出て別の場所で開業する予定になっていたため、予定より早く閉店することとなったが、1カ月前に解雇通知などをするのが原則だ。原則を無視した決定は次の香港でビジネスを再開にハードルが上がる。同じフレンチでは、インテリアに凝った上環(Sheung Wan)にある「Bibo」も突如、閉店した。
マンゴーを使ったスイーツで知られる「許留山」は逃亡犯条例改正案に端を発するデモで業績が悪化し、2015年に中国の「煌天國際」が許留山を5億2,400万香港ドルで買収した影響で民主的な店ではない「藍色」に指定されて苦境に陥った。その結果、2018年は38店舗を構えていたが、2019年に12店舗を閉鎖。そこに新型肺炎が起こり、資金繰りがさらに悪化。藍田(Lam Tin)にある匯景商場支店(Sceneway Plaza)は2019年10月からの家賃19万香港ドルの支払いを滞納していることから、オーナーであるBansque社は高等法院に支払いを求めて訴えた。
ビーフジャーキーなどを販売するマカオ発祥の「鉅記餅家(Koi Kei Bakery)は尖沙咀(Tsim Sha Tsui)、旺角(Mong Kok)、銅鑼湾(Causeway Bay )の3店舗を2月29日に閉鎖した。香港国際空港にある支店は継続して営業している。
キャセイパシフィック航空は、日本便を含めたフライトが大幅に減便していることから機内食の製造を委託している企業の従業員と機内誌「Discovery」に関わるメンバー合計約200人に対して解雇通知などをしていたことが明らかになった。労働組合であり、政治政党でもある工會聯合會(Hong Kong Federation of Trade Unions)に解雇された従業員が助けを求めている。キャセイは平日で1日8万食、最大では10万食を製造していたが、減便により1万6000~7000食にまで落ち込んでいる。
香港政府はすでに飲食業の救済措置についてさまざまな政策を行う事を表明してきたが、2020年2月14日以前にライセンスを取得している店を対象に「防疫抗疫基金資助計劃(Subsidy Schemes under Anti-epidemic Fund)」と呼ぶ補助金の申請受け付けを3月5日に始めた。一般のレストラン、工場の食堂などは20万香港ドルを補助、軽食店、食品工場、ベーカリー、生鮮食品の販売などは8万香港ドル、屋台は5,000香港ドルを補助する。申請受け付けは5月4日まで。