杉山淳一の「週刊鉄道経済」:新幹線と飛行機の壁 「4時間」「1万円」より深刻な「1カ月前の壁」 (2/6)

» 2019年03月15日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 自宅にも昼夜問わず電話がかかってくるし、帰りは遅いし、週末は接待ゴルフばかり。仕事が楽しくて、営業接待費などを自腹で払ってしまうから、家には最低限の金しか入れない。典型的な昭和のサラリーマンで、家庭の父親としてはあきれた人格だけれど、私は営業マンとしての父を尊敬している。忌野清志郎の歌のように「昼間のパパはちょっと違う」のだ。

 航空業界の施策の変遷を一言で表すと「温故知新」だ。これまで築き上げた施策を保ちつつ、格安航空会社(LCC)の台頭など、新しいサービスも生み出した。それができた理由は自由化と競争だ。78年に米国で国内航空業界の規制緩和が行われ、航空業界は激しい価格競争に突入した。それが国際航空にも波及し、日本でも航空規制緩和が行われた。航空業界は買収と破産の洗礼を受けて現在がある。今の航空サービスでさえ不満を持つ人はいるだろうけど、規制緩和前よりはずっとマシだ。

 日本の鉄道はどうかと言えば、87年に国鉄が分割民営化されJRになった。これは規制緩和や自由化や競争とは関係ない。大きな嵐ではあったけれども、単純に破綻した組織を分けただけだ。国の様子をうかがう鉄道からお客さま本位の鉄道になったけれど、サービスの根幹は国鉄時代と変わらない。競争がなく、改善する必要がなかったからだ。鳥塚氏が「大好きな鉄道がサービスで航空に負けている」と感じる理由はココだろう。

photo Lufthansa Boeing 747-230B; D-ABYX@FRA;11.10.1995 / Aero Icarus(出典:flickr

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