米欧中銀、市場の鎮火急ぐ 3日夜にもG7電話協議

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2020/3/3 11:30

2019年7月、G7財務相・中央銀行総裁会議に出席した米欧中銀の首脳(フランス・シャンティイ)=AP

2019年7月、G7財務相・中央銀行総裁会議に出席した米欧中銀の首脳(フランス・シャンティイ)=AP

【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など米欧中銀は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気下振れリスクに対処するため、協調的な金融緩和に踏み切る方向だ。パニック的な株安の進行を避けようと、各中銀はリーマン・ショック後以来となる異例の措置で市場の鎮火を急ぐ。ただ、先行きの利下げ余地は乏しく、景気不安が長期にわたって続けば金融政策が「弾切れ」となるリスクもある。

主要7カ国(G7)の財務相・中銀総裁は日本時間3日夜にも緊急の電話会議を開き、新型コロナへの対応策を議論する。議長国である米国のムニューシン財務長官が各国と調整に入っており、共同声明では「あらゆる手段を用いてリスクに対処する」などと打ち出す方向だ。

米欧中銀は利下げなど協調的な金融緩和に踏み切る検討に入った。ECBのラガルド総裁は2日夜という異例の時間帯に声明を出して「新型コロナという潜在リスクに対し、必要でふさわしい的確な措置をとる用意がある」と強調した。英中銀イングランド銀行も同日に「あらゆる措置をとれるよう、緊密に連携していく」との声明を出し、利下げを排除しない姿勢を鮮明にした。

FRBはすでに利下げの検討に入っており、17~18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を予定する。ただ、米金融市場ではダウ工業株30種平均の2月24~28日の下落幅が3500ドルを超え、投資家の不安が強まっている。早期に火消しするため会合を前倒しして利下げを決める可能性がある。ECBも12日に理事会を控える。米欧中銀は金融危機直後だった2008年10月にも、協調して同時利下げに踏み切ったことがある。

米欧中銀がそろって金融緩和の検討に入ったのは、金融市場がパニック的な株安に見舞われたためだ。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大と株価下落は企業と消費者の心理を二重に悪化させ、米ゴールドマン・サックスは1~3月期の世界経済がマイナス成長に転落すると予測する。金融政策が後手に回れば、4~6月期も2期連続のマイナス成長となり、世界的に景気後退に陥るリスクもある。

市場はすでに協調的な金融緩和を織り込んだ。ダウ平均は2日に前週末比1293ドルも上昇し、過去最大の上げ幅となった。先物市場はFRBの3月中の利下げを100%の確率で織り込み、欧州市場でもECBが8割の確率で金融緩和に踏み切ると予測する。主要中銀は市場に包囲網を敷かれた状態で政策判断を迫られる。

もっとも、米国は政策金利が1%台半ばにとどまり、ECBもマイナス金利政策を敷いたままだ。英中銀の政策金利も0.75%しかなく、各国・地域とも利下げ余地は乏しい。緩和カードを早々に切れば、景気の持ち直しが遅れた場合の政策手段を失うことにもなる。世界的なサプライチェーンの混乱や旅客需要の落ち込みに利下げで直接対処するのは難しく、「金融緩和頼み」にも限界がある。

08年10月の米欧協調利下げは、各国・地域が政策決定のタイミングを合わせ、利下げの発表も同時に行った。今回は2月28日にFRBのパウエル議長が「あらゆる政策手段を使って適切に行動する」との声明を出して口火を切り、週明けの2日に黒田東彦・日銀総裁が「金融市場調節や資産買い入れを通じて市場の安定確保に努める」と表明。その後に英中銀、さらに時間をおいてECBが声明を出した。

3日にG7の電話協議を予定しながら、その直前に競うように個別に声明を出す姿は必ずしも協調的と映らない。景気が堅調な米国はドル独歩高を警戒し、真っ先に金融緩和の可能性を表明。米国が大幅な利下げを視野に入れたことで、次は日本や欧州が円高やユーロ高を不安視し始めた。協調緩和の形をとる米欧中銀だが、現実には通貨高を恐れた「競争的」な利下げの側面もある。

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