廿漆.カウンターストップ
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
とりあえず、話を合わせて機嫌をとっておかないと、と思っても、この局面をごまかせるうまいセリフなんてそう簡単に思いつかないぞ?
俺『いや…、その…、俺も好きだから気が合うなと思って』
天照『…(ぽっ』
(あ、機嫌が良くなった。って、こいつめんどくせー)
なんて神経の磨り減る会話なんだ。地雷だらけじゃないか。雪とはえらい違いだ。ああ、もうなんかコスプレのこととかどうでもよくなってきた。
俺『ところで、今日は何しに来たんだ? 21世紀に帰してくれる気になったのか?』
天照『ううん』
(即答かよ)
俺『じゃあ、いつ帰れるんだ』
天照『もっと遊んでくれたら』
俺『もっとってどのくらいだよ』
天照『お腹いっぱいになるまで』
俺『1000年遊んでお腹いっぱいになったら21世紀って落ちじゃないだろうな』
天照『そうか、その手があったか!』
俺『おい!!!』
どうも俺は当分21世紀には戻れないらしい。しかもここで怒っても前みたいに天照がへそを曲げていなくなってしまったら結局帰れないわけで、俺には待ちの一手しか残されていないようだ。
俺は深いため息をついて天照を見た。天照はにこにこと機嫌良さそうに俺を見ている。
(こいつは結局俺に何をさせたいんだろうな)
結局のところ、それが一番の問題なのだ。天照はわざわざ21世紀から俺を連れてきておいて、何をさせたいのかという話になるとなぜかごまかしてしまう。でも、コスプレの件を考えても、誰でもよかったというわけではないようだ。俺でなければならなかったかどうかは分からないが、何かしらの条件があるのは間違いない気がする。
(例えば、同人誌を描きたいとか?)
それはあり得るかもしれない。天照が実は腐女子でしたとか暴露されても、ああやっぱりなとか思っている俺が想像できる。しかし、俺は絵もかけないし、やおい話を作るような才能なんてないぞ?
(まあ、絵はばかみたいに高性能な身体能力でなんとかなるかもしれないけど)
俺『そういえば、俺の身体能力は何でこんなばかみたいに高いんだ? …!??』
天照『うみゅ?』
俺は天照に声をかけて、さっきまで目の前にいた天照が消えていることに気づいた。その次の瞬間、天照は何か変な声を出して、俺の左側から体重をかけてきた。びっくりしてそちらを見ると、脚を前に投げ出して手を太ももの上あたりにのせて座った姿勢のまま、俺に体重を預けるように倒れ掛かって来ていた。
上目遣いになった天照と目があった俺は、赤面して慌てて目を逸した。
(なんだこの恋人同士っぽい態勢は! お、女の子同士だぞ、一応)
天照『ふふー、身体能力はねー、転生した時に能力値をカンストまで上げておいたから、最強だよっ!
俺『カンストって、ゲームかっ!』
天照『攻撃力とか魔力とか防御力とかだけじゃなくて、魅力も上限値だから、腹踊りだって天女の舞に見えるよ』
俺『腹踊りをする必要がどこにあるっ!!!』
(それで俺の可愛いオーラで死者が出てたんだな。納得した…)
八岐大蛇は8つの頭と8つの尾を持つ怪物で、天照の弟であるスサノオが退治したことになっている伝説上の生き物です。
ちなみにその尾から出てきたのが