廿陸.ねぇ、褒めて
天照『お前じゃなくて、天照ちゃん』
俺『はいはい。で、天照ちゃん、その服はどこで手に入れたんでチュか?』
天照『ふふふ。姫ちゃんのために一所懸命作ったんだよ』
俺『え? マジこれ、手作り?』
まさか手作りだったとは。『できる平安魔法』の時もそうだったけど、天照が持ってくるネタは相当手が込んでいる。それを発揮する方向性が残念なのは遺憾だが。
俺『この服の生地、この時代にはないものなんじゃないか。レースを作る技術はまだないはずだし』
天照『頑張った!』
俺『いや、頑張るとかの問題じゃないから』
天照『ねぇ、褒めて』
俺『なぜ!?』
天照『だって、頑張ったんだよ?』
俺『…』
確かに、これだけのものを手作りするのは大変そうだ。だから、頑張ったのは間違いないんだろう。間違いないんだろうが、なぜか釈然としない。何か根本的な疑問が解決していない気がする。
俺『なあ。お前』
天照『天照ちゃん』
俺『…、天照ちゃん、何で俺を21世紀から平安時代に連れてきたんだ?』
天照『それは、…、姫ちゃんが、…、好きだからに決まってるじゃない(ぽっ』
俺『はぁぁぁぁ?』
(いかん。こいつと話してると頭がおかしくなりそうだ)
俺『ちょっと待て。その好きになったってのはいつのことだ? 俺はお前とはこの前のが初対面だぞ?』
天照『…』
(あれ? なんか、今、あからさまに元気がなくなったぞ?)
この流れは嫌な予感がする。前回、確かこんな雰囲気になったところからおかしくなって、天照が泣いて俺が置き去りにされたような。ひとまず機嫌を取っておくほうがよさそうだ。
俺『よしよし』
とりあえず、機嫌を取るといってもどうしたらいいか分からなかったので、天照の頭を撫でてみた。2人の身長差のせいで、あたかも小学生が中学生の頭を撫でてよしよししているような光景で妙だが、仕方がない。
俺『よく頑張ったな』
天照『へへへー』
天照の顔が、あからさまににこにこ嬉しそうな笑顔になった。やっぱり女の子の笑顔はいいな。見てるだけで幸せになれる。
(それにしても、天照は表情がころころ変わるな。気持ちがストレートに顔にでるタイプなのかな)
しかし、機嫌がよくなったのはいいが、さっきから疑問が1つとして解消していない。むしろ拡大するばかりなのはどういうことなんだ? …、これ以上天照に聞いても埒があかないから自分で考えるか。前の魔法の本はともかく、今度のコスプレは俺のために作ったんだよな。俺以外理解できる奴がこの時代にいるわけがないし、これは俺の趣味なわけだし…。
俺『おま…、天照ちゃんは、本当に俺が好きなのか?』
天照『大好きだよ!』
俺『なんで?』
天照『…』
(あ、また機嫌が悪くなった)
なんかフラグ立ったぽいですが、勝手ながら作者は冬休みに入りますので、年内の更新はこれでお終いです。新年の更新は6日を予定していますが、前後する可能性はあります。
タイトルがかぐや姫なのに、まだ主人公がかぐや姫にすらなっていませんが、忘れてないので心配しないでください。多分、近い内に5人の公達の中の何人かが登場することになります。お楽しみに。
あと、試験的にジャンルをファンタジーから歴史に変更します。様子を見て、すぐ元に戻すかもしれませんし、ずっとそのままかもしれません。
では、良いお年を。