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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第1章「天照」

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拾漆.カラスの勝手でしょ

 (ちょっと、背が高くなったかな?)


 朝起きて服を着て、俺は思った。成長の速度があまりに早いので、すぐに丈も袖も短くなってしまう。この服も今日で最後だろう。


 さて、今日は居住環境の改善のために、結界を張ろうと思う。そのためにはいくらか準備が必要だ。


 結界は、魔法の中ではかなりポピュラーな部類で、極めてたくさんのバリエーションがある。難度もさまざまで、手頃なものから大掛かりなものまであるが、効果の割に簡単なものが多い。


 俺が使おうと思っているのは、まさに居住空間を改善するためにあるような結界だ。これを使うと、室内の目隠し、調光、空調、調湿、清掃、防音、防虫、防臭、防犯などの機能を自由に設定できる。例によって名前はないので、居住結界と俺が名づけた。なぜ英語じゃないかというと、結界に相当する英語が思いつかなかったからだ。言わせんな恥ずかしい。


 この結界を作るには、頂点に護符を配置する必要がある。結界は、敷地全体、建物全体、部屋の3重に設定するつもりなので、四角形の結界が3つ、計12枚の護符が必要になる。少し大きめの紙を、書き損じも考えて30枚ほど雪にお願いしておいた。


 さて、紙を護符に変えるには、紙に絵や字を書かないといけないのだが、そのための墨に特殊なものを使う必要がある。なに、そんな大したものではないのだが、カラスの糞と黒猫の目くそを墨に溶いてやらなければならないのだ。


 (もうちょっと上品な材料を使おうという発想はなかったのかね)


 今日は朝からまだ雨は降っていない。とはいえ、空は曇っているし梅雨でもあるので、いつ降ってくるか分からない。


 (さっさと集めてしまおう)


 俺は、いつものように袿の裾をたくし上げ、腰紐を1本タスキにかけて袖を縛り、例の箱から足駄を取り出すと、庭に降りた。庭の隅の方の木に、カラスがよく止まっていることは知っているので、まっすぐそちらに向かった。


 (できたてじゃなくても、落ちてるやつでもいいんだよな、多分)


 木の枝にはカラスが3羽止まっていたが、そっちには目もくれずに地面に落ちている糞を拾おうと下を見たまま木に近づいた。


 カラス「アホー。アホー」


 ぼと。ぼと。


 (あれ? 何か背中に落ちてきたような)


 俺は事態を把握するために、頭上を見上げた。


 カラス「アホー。アホー」


 俺の視界に映るのは、青々と茂る木の枝、アホ面で鳴くカラス3羽、そしてそのカラスから落ちてくる何かの塊だ。


 ぼと。


 その塊は、吸い込まれるように俺の額に命中して、不快な感触を俺に与えた。


 俺『ふっ、ふ、ふふ、ふふふふふふふふふふ』


 別に何かが可笑しいわけでもないのに、思わず笑いが込み上げてくる。俺の心のなかに、カラスの羽よりも黒い何かが沸き起こってくるのがはっきりと感じられた。


 カラス「アh?」

墨には松ヤニから作る松煙墨と油から作る油煙墨があるのですが、松煙墨の方が古くから作られています。奈良時代には貴重品だった墨も、平安時代には松煙墨が大量生産されるようになって広く普及するようになりました。同時に平安時代には世界に先駆けて油煙墨が開発され、次第に墨の主流が油煙墨に変わっていきます。


舞台の設定では、松煙墨が普及してきた頃で、油煙墨はまだ普及していません。なので、今回使われるのは松煙墨の方です。

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