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【今は昔】転生!かぐや姫【竹取の翁ありけり】 作者:七師

第1章「天照」

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拾陸.呪文も魔法もあるんだよ

 その夜、皆が寝静まるのを待って、俺は床下に潜り込んだ。寝殿造りの建物は高床の構造になっているので、大人はともかく子どもの身長なら難なく潜り込める。おまけに俺の目は暗闇でも周りが見える特別製なので、すぐに隠してある太刀を見つけて部屋に戻った。


 (人生初の魔法だぁ)


 天照にはリアルの魔法なんて興味ないと言ったが、あれは嘘だ。


 いや、人生と引き換えにしてまで興味があるわけではないという意味では本当だが、ノーリスクで使えるなら使いたいに決まっている! それどころか、俺の場合、もうすでにショバ代は支払い済みだ。使いまくって元を取る以外の選択肢は存在しない。


 さて、太刀だ。これをあの木箱の中にしまえるようにしたい。狩衣や魔法の本と同じ魔法をかけることができたら便利なのだが、あいにく太刀に後付けでその魔法をかけるのはちょっと面倒みたいだ。なので別の魔法を使うことにした。


 山ほどある脈絡のない魔法の中から俺が選んだのは、装備品を手のひらサイズに小型化するという魔法だ。特に魔法の名前はないらしいので、アクセ・シュリンカーと俺が命名した。なぜ平安時代なのに英語かって? 日本語だと俺の命名センスだとダサくなるんだ。言わせんな恥ずかしい。


 アクセ・シュリンカーは、魔法の中では簡単な部類だ。器用な奴なら練習次第ではできる奴もいるかも知れない。まず、小型化したいものを手に持って目の高さまで持ち上げて、そして、呪文を唱える。


 呪文は約500音くらいの脈絡のない音の羅列。これを息継ぎなしで50秒以上53秒以内に唱え切れば成功で、それ以上かかったり、それ以下で終わったりすると失敗だ。もちろん、間違えても失敗になる。平均1秒約10音。結構な早口言葉だ。


 俺「○※&%×$…」


 失敗。


 俺「○※&%×$…」


 失敗。


 俺「○※&%×$…」


 失敗。


 (結構ムズいな、これ)


 うーん。俺の身体能力なら一発で決まると思っていたのだが、意外にうまくいかない。というか、よく考えたら、時計もストップウォッチもないから、50秒がどのくらいの長さか分からないじゃないか。さすがに当てずっぽうでは当たらないか。


 (…、そういえば、前に、物理の先生が、1メートルの高さからものを落とすと、地面に落ちるまでに約0.5秒とか豆知識を期末試験に出して、ブーイングを受けてたな)


 俺の身長はだいたい120センチメートルくらいとすると、鼻の高さくらいから落として、落ち切るまでに5音言えたらいい? 何回か練習して、後は、俺の身体能力でなんとかなるかな。


 俺はもう一度床下に降りて、手頃な小石を一つ拾って、部屋に戻った。


 (よしやるか)


 俺は小石を顔の前に持ちあげて、そして落とした。


 俺「○※&%×」


 (ちょっと遅い)


 俺「○※&%×」


 (今度はちょっと早い)


 俺「○※&%×」


 (OK。じゃあ本番行くか)


 俺「○※&%×$…」


 俺が呪文を唱え終えると、目の前に掲げていた太刀が光を発して、次第にその光を発する元が小さくなって行き、光が消える頃には目の前に掲げていた太刀は消えていた。握っていた手をゆっくりと開くと、手のひらサイズに縮小した太刀が現れた。


 (すげ。成功した)


 思わず顔がにやけてくるが、誰も見ていないから隠す必要もない。そのまましばらく小さくなった太刀をいろんな角度から見てみたり、振り回してみたりして、ひとしきり遊んだ後に例の箱に閉まって、俺は横になった。


 (明日は、結界を張るぞー)


 明日が楽しみだ。

この世には、呪文も魔法もあるんです! ただ、ちょっと無理ゲーなだけなんです!

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