拾伍.雪は俺の嫁!?
雪「竹姫さま?」
俺「ん? どうしたの、雪?」
雪「ずっと黙ったまま難しい顔をなさっているので、お加減でも悪いのかと」
俺「まあ、うれしい。心配してくれたのね」
(ああ、なんて可愛いんだ、雪は)
俺はとびきりの笑顔を見せて、膝の上に座ったまま、雪に体重を預けるようにもたれかかった。雪の発する良い匂いが鼻腔の奥を刺激して、慎ましやかに発達した小ぶりながらも弾力のある双丘が後頭部を優しく支える。
ああ、そうだ。平安時代には素晴らしい言葉があったんだ。雪のように身の回りの世話をする女性使用人、つまり侍女のことを指すあの言葉。今こそ声を大にして言おう!
俺「雪は俺の女房(キリッ」
雪「はい、そうですが、それがどうしましたか?」
俺「竹姫は雪が大好きです」
雪「雪も竹姫さまが大好きですよ」
雪は俺の嫁、ではないが、俺の正式な女房だ。平安時代には、貴族の侍女は、その貴族が男であれ女であれ、女房と呼ばれる。まあ、貴族でなければそもそも侍女なんていないから、つまり「侍女=女房」だ。そして、俺の場合、雪が唯一の女房でもある。
俺の女房が雪だけしかいないのには理由がある。爺は今や平安京でも有数の金持ちなので、俺の女房を増やすことなんて造作ないことで、実際、初めの頃は10人くらいの女房がいた。ところが、俺がうっかり可愛いオーラを出すとすぐに失神してしまうので、女房として仕事にならなかったのだ。
そんな中、雪は唯一、俺の可愛いオーラの直撃を食らっても失神しなかった。あんまり雪が可愛いので、一度、うっかり全開をぶつけてしまったことがあって、その時はかなり息が苦しそうだった(顔は上気して恍惚としていた)が、失神せずに耐えていた。これまで全開で失神しなかったのは雪だけだ。
そういうわけで、最終的に、雪が唯一の女房となり、それ以外の使用人は必要なときだけ俺の前に姿を見せるという体制になったのだ。爺や婆は歳のせいか結構すぐに失神してしまうので、俺にとって雪は唯一全力で甘えられる相手でもある。
だから、俺は雪が大好きだ。
俺「雪はいつかお嫁に行っちゃうんですか?」
雪「雪は竹姫さまが一番ですから、ずっと一緒にいますよ」
(可愛いーーーーーっ)
ああ、俺はまさに声を大にして叫びたい気持ちだ。雪は可愛いと。
若干、雪の返事に、年頃の女子としてどうなのよ、と思わなくもないし、もしそれが本音だとすると倒錯的なナニかを感じなくもないが、そんなことは些細なことだ。
俺「竹姫は雪のお嫁さんになる!」
雪「ッ…!」
しまった。やってしまった。つい興奮して可愛いオーラを全開にしてしまった。雪の肩がプルプル震えて、息遣いが荒く不規則になっている。
俺「雪。大丈夫? 雪」
雪「…、だ、大丈夫、…、です。…、た、竹姫さま、に、…、そう言ってもらえて、…、幸せです」
反省した俺は、雪が落ち着くのを待って、自室に戻ることにした。
女房とは、今風に言うとメイドですよ。メイド。メイドさん。メイドというより、ちょっと身分が高いイメージですが。
女房は、邸宅内に専用の部屋を与えられて住み込みで仕えます。天皇、皇族、公卿に仕える女房はそれに見合った身分が与えられ、中流貴族の娘がなることも多くあり、教養のある女性も少なくありませんでした。
「雪」は
ちなみに、女房とは別に、