拾弐.後で感想聞くからね
俺は不覚にも、この残念女神のことを、一瞬、可愛いと思ってしまった。ていうか、手を握って目を潤ませて笑顔を決めるって反則だろ。今は俺の方が身長が低かったから直撃は避けたけど、これで上目遣いに見上げられたら、生き残れる自信がないぞ。
俺『こっ、これで魔法の勉強をしておけばいいんだな』
天照『後で、また感想、聞くからね。絶対に読んでね』
天照は感想をやたらと聞きたがっているけれど、この本を読むのは俺が初めてなんだろうか、と俺はなんだか楽しそうにしている天照を見て思った。と、そこで、ふと頭に浮かんだ疑問を口にしてみた。
俺『お前、まさか、遊べって言っておいて、この本の読者になれってこと以外はノーアイデアなのか?』
天照『エッ、ソンナコトナイデスヨ?』
俺『あからさまに怪しいぞ。本を書いたんなら友達に見せればいいじゃないか。何でよりによって21世紀から赤の他人を連れてくるんだ』
天照『いいじゃない、別に。そんなのあなたに関係無いでしょ!』
思いがけず天照に逆ギレされて、俺はムッと来た。そこは、お前がキレるべき所ではない。キレるべきなのは俺の方だ。
俺『関係ないことあるか! 勝手にこんな所に連れてこられて。いい迷惑なんだよ』
天照『いいじゃない。魔法が使えるんだよ? すごいでしょ? いくらでも喜んでいいんだよ』
俺『ふざけんなよ。そんなこと誰も頼んでねーよ。いい加減にしろよ』
天照『そんな、…。魔法とか興味ない? 嬉しくないの?』
俺『ああ。興味ないね』
さっきまでの楽しそうな表情の天照とは一転して、今にも泣きそうな表情の女神がそこに立っていた。
天照『だって、テレビとか、漫画とか、小説とか。魔法が出てくる話ばかり見てたじゃない』
俺『それはお話だから面白いのであって、自分が使うというのとは別だろうが! こんな平安時代みたいなところに無理やり連れてこられた身になってみろ!』
俺は、だんだん自分が抑えきれなくなっていた。最初は夢だと思っていたこの世界。1ヶ月も経ってさすがに長いかと思っていた矢先の天照の登場、そしてこの時代に連れてこられた理由。元の時代に戻るために天照に話を合わせようと思っていたのだが、まさかこんな誰でもいいようなことのために連れられて来たとは思わなかった。そう思うと、無性に腹が立ってきた。
天照『そっか。分かった』
天照は、興奮に身を震わせる俺から目をそらして、そう言うと、力なく宙に浮かび上がって、そのまま空に向かって去っていこうとした。
俺『あ、おい、ちょっと待て。まだ話は終わってないだろ!』
俺の呼びかけに反応せず、天照はどんどん空へと昇っていく。
俺『待てってば。あの式神、お前が作ったんだろ。どうやって消せばいいんだ?』
天照が本当に行ってしまいそうなのを見て、俺は怒りを脇において、慌てて、どうしても聞いておかないといけないことを問いただした。昼に式神を実体化させた後、消す方法が分からなくて本当に困っていたのだ。
天照『あれは、箱に触れれば元の紙に戻るよ。それ以外のことはその本に書いてあるから』
最後の方の言葉は、ほとんど消え入るような音になって、天照は姿を消した。
(…、俺、置き去りかよ!)
俺は、再びふつふつと沸き起こってきた怒りをぶつける宛のないまま、右手に持ったままの『できる平安魔法』を眺めた。
(何でまた、こんなもののために俺は連れてこられたんだ)
ふと目を上げると、天照が現れる前と同じように、ホタルは幻想的な光を灯しながら、俺の周りを飛び交っていた。しばらくそのホタルの不規則な動きを目で追う内に、俺の心の中で煮えたぎる怒りが徐々に鎮まり、さっきの出来事を冷静に振り返る余裕が生まれてきた。
俺『最後、あいつ、泣いてたな』
俺は無意識にそうつぶやくと、元来た道をまた同じように駆け抜けて、自宅へと戻っていった。
読者の皆様、いつも転生!かぐや姫をお読み頂いてありがとうございます。
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というか、そうでないと天照ちゃんが泣いてしまいます。機嫌を損なって天岩戸に引きこもってニート宣言とかされたら日本が終わってしまいます。どうか、そうなる前に。
逆にたくさん評価していただければ、天照ちゃんが喜んで、こんなことやそんなことやあんなコトまでしてくれるかもしれません!(にぱっ
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