豚コレラ ワクチン接種拡大 発生県周辺指定へ 農水省
2019年12月19日
豚コレラ(CSF)の感染拡大を防ぐため農水省は、飼養豚に打つ予防的ワクチンの接種地域を拡大する。関東では神奈川や千葉など、近畿では京都や奈良を接種推奨地域に指定することを検討。ウイルスをまき散らす野生イノシシからの感染が広がる中、ワクチンの数を確保できる見通しが立ち、範囲を広げる。20日に専門家で会議を開き、正式に決める。
現状のワクチン接種は、感染した野生イノシシが見つかった県を国が推奨地域に指定し、県の接種プログラムを承認してから使う流れ。18日までに群馬、埼玉、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀の12県が接種している。このうち埼玉では感染イノシシが見つかるよりも先に養豚場での発生を確認。山梨では接種プログラムの承認を受けて、翌日からワクチンを打つというタイミングに農場で発生した。
18日の同省の牛豚等疾病小委員会では、こうした背景を踏まえ、感染イノシシが見つかる前に推奨地域を広げ、予防的ワクチンを使うべきか議論した。推奨地域を広げるのは、人や物の移動などでもウイルスの拡散が進んでいる恐れがあるため。また、野生イノシシでウイルス拡大を防ぐため経口ワクチンの範囲を広げており、感染拡大防止を強化する狙いだ。
不足が指摘されていた飼養豚に接種するワクチンは、増産で一定数が確保できる見通し。範囲を広げても対応が可能になるとみられる。同省は接種推奨地域の間に空白の県ができないよう、広域での指定を目指す。接種地域拡大では12月上旬、群馬、栃木、茨城の各県知事が首相官邸を訪れ、安倍晋三首相や江藤拓農相に要請している。
現状のワクチン接種は、感染した野生イノシシが見つかった県を国が推奨地域に指定し、県の接種プログラムを承認してから使う流れ。18日までに群馬、埼玉、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、滋賀の12県が接種している。このうち埼玉では感染イノシシが見つかるよりも先に養豚場での発生を確認。山梨では接種プログラムの承認を受けて、翌日からワクチンを打つというタイミングに農場で発生した。
18日の同省の牛豚等疾病小委員会では、こうした背景を踏まえ、感染イノシシが見つかる前に推奨地域を広げ、予防的ワクチンを使うべきか議論した。推奨地域を広げるのは、人や物の移動などでもウイルスの拡散が進んでいる恐れがあるため。また、野生イノシシでウイルス拡大を防ぐため経口ワクチンの範囲を広げており、感染拡大防止を強化する狙いだ。
不足が指摘されていた飼養豚に接種するワクチンは、増産で一定数が確保できる見通し。範囲を広げても対応が可能になるとみられる。同省は接種推奨地域の間に空白の県ができないよう、広域での指定を目指す。接種地域拡大では12月上旬、群馬、栃木、茨城の各県知事が首相官邸を訪れ、安倍晋三首相や江藤拓農相に要請している。
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[新型コロナ] イベント自粛で販売苦戦 “うち花見”で応援して
花き小売り大手の日比谷花壇は、全国約60の同社店舗で花の消費を促すキャンペーンを展開する。「#うち花見」と題し、家庭で気軽に花を飾り、その様子をインターネット交流サイト(SNS)で広げてもらう。産地や市場業者と連携し、消費を盛り上げる。
新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた式典やイベントの自粛で、販売が落ち込んでいることを受け、13日から始める。JR新橋駅(東京都港区)に隣接する店舗では、先行して特設コーナーを設けた。
桜やスイートピー、ラナンキュラスなどピンク系の季節の切り花が中心。桜のミニブーケ(500円)や盆栽(3980円)など、家に飾りやすいサイズの商品も並べる。「家にいる時間が長くなっている人に、自分や家族のために飾って明るい気分になってもらいたい」(同社広報室)。
実施店舗では、毎週金曜日に、対象の切り花を1本100円で販売する。同店を訪れた20代女性は「普段は家で花を飾らないが、小さなブーケなら家でも飾りやすい」と興味を示していた。
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2020年03月10日
ミツバチ98・9%ウイルスに感染 初の全国調査 日本養蜂協会
国内の養蜂家が飼育するミツバチの98・9%が、チヂレバネウイルスなどの病原ウイルスに感染していることが、日本養蜂協会の調査で明らかになった。62%は複数種類のウイルスに感染していた。ウイルス感染の実態を探る本格的な全国調査は初。調査をまとめた東京農工大学の国見裕久名誉教授は「日本の養蜂で大きなリスクとなり得る」と指摘する。
ミツバチは近年、ウイルス感染が世界的に問題になっている。影響するウイルスは数種類が確認され、感染し発病すると、羽が縮れたりまひを起こしたりするなどの症状が知られている。
同協会は、全国のミツバチ92群から健康な働きバチを送ってもらい、チヂレバネウイルス、カシミール蜂ウイルスなど7種類について感染の有無を検査した。
ウイルスが確認できなかった群は92群のうち1群だけ。特にチヂレバネウイルスは98・9%で検出し、全国で満遍なくみられた。1種類のウイルスだけが検出された群は34群で、検査対象の7種類のウイルスのうち6種類に感染している群が2群、5種類が6群と、複数のウイルスによる感染が広がっている。
ウイルスの伝染ルートは、ミツバチに寄生するミツバチヘギイタダニの媒介が疑われている。検査したミツバチの採集場所周辺に、同ダニがいたかどうかも聞き取り調査し、ダニの寄生が報告された群は全体の42・4%。ダニがいてもいなくても感染率に差はなく、ダニ以外のルートでもウイルスが広がっている恐れがあるとみられる。
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2020年03月09日
[新型コロナ] 中小乳業被害50億円 学乳供給網に打撃 乳業連合試算
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休校で、学校給食に牛乳が出荷できなくなった中小乳業の損害額が50億円超に達することが10日分かった。全国約140社の中小乳業を束ねる全国乳業協同組合連合会(乳業連合)が試算した。中小乳業の経営悪化は、学校給食に牛乳を安定的に供給する体制が崩れる事態ともなりかねない。
学校給食向けの牛乳(学乳)は飲みきりサイズの200ミリリットルと小型で、地域に基盤を置く中小乳業が全体の半分以上を担っている。年間9億本の学乳出荷を予定していたが、乳業連合の試算では2日以降の学乳中止に伴い13日までの2週間で50億円を超す売上額減少になる。1本50円で計算した。来週も休校になれば、損害はさらに膨らむ。
また、乳業連合の会員緊急アンケートによると、学乳中止による経営への影響を「深刻」「重大」とした回答が8割を超えた。トラック配送取りやめなど物流問題、パート従業員の休業など人手不足と、影響は広範囲に及んでいる。
地域に根差した中小乳業の経営悪化は、地域経済への打撃や、酪農家の生乳出荷先の減少にもつながりかねない。中小乳業は、一定規模以上になるとスーパーなど一般販売向けの1リットル牛乳への振り分けもできる。だが、小型パック専用の製造ラインしかなく、スーパーへの販路切り替えが難しい中小も多いのが実態だ。
乳業連合は「子どもの発育には、栄養に優れた学乳の安定供給は欠かせない」とし、学乳中止に伴う損害への補償を国に要請していく方針だ。
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2020年03月11日
天国へかける“風の電話” 癒えぬ傷と生きる 庭園を解放 岩手県大槌町の佐々木さん
自分だけ助かってごめん。ずっと、ありがとうって言いたかった──。岩手県大槌町の高台に、洋風の電話ボックスがぽつんとたたずむ。ボックスの中にあるのは黒電話と1冊のノート。電話線はつながっていない。だが、東日本大震災で失った大切な人に最後の別れを言おうと各地から遺族が訪れる。家屋の倒壊で両親を失った男の子、娘を津波で亡くした母親。行き場のない悲しみを電話口にぶつけ、天国に話し掛ける。気持ちのつながりを求めて。(高内杏奈)
家族へ、友へ…言えなかった「ありがとう」
電話ボックスを設置したのは、花きや野菜を栽培する同町の佐々木格さん(75)。約70アールの庭を整備し、2011年4月に「メモリアルガーデン」として開放した。電話ボックスの周りを100種類以上の草花が囲む。「津波で親友を亡くした。誰が死んでもおかしくない状況で、自分が生かされた意味をずっと考えていた」(佐々木さん)。
亡くなった親友はいつも突然電話をかけてきた。「おい、飲もうよ」。朝まで語り明かしたことも一度や二度ではない。「“いつも急だな”と怒ってみせたが、本当は電話があるとうれしくて」と振り返る。
9年前のあの日、最大20メートルの津波が同町を襲った。親友は海沿いに住んでいた。連絡が取れなくなった。「いつものように電話がかかってくるはず。死ぬわけがない」。だが願いはかなわず、遺体で発見された。変わり果てた姿に、本人かどうかさえ分からなかった。胸ポケットにメモが入っていた。佐々木さんの電話番号だった。「肌身離さず持っていたのか」。突然の別れに絶望と虚無感に襲われ、体が震えた。
「一言、“ありがとう、またな”って、それすらも言わせてもらえねぇのか」。その思いが電話ボックスに込められている。佐々木さんはつながらないとは知りつつも親友の電話番号をゆっくり回したという。「酒を飲むときは、いつも一緒だからな。今までありがとう」。少しだけ心が軽くなるのが分かった。
電話ボックス設置後はメディアや口コミで広がった。これまで訪れた人は4万人を超える。
佐々木さんは訪れた人に「お茶でもどうぞ」と声を掛ける。最初は沈黙しても、そのうちぽつりぽつりと話し始め、涙を流す。「自分が覚えている限り、故人は自分の中で生き続ける。だから、精いっぱい生きろ」と助言する。
ノートに思い思いのメッセージが残されている(岩手県大槌町で)
ノートには訪れた人がメッセージを残す。「もう一度だけでいい。あなたの声を聞きたい。話がしたいよ」「お姉ちゃん、会いたい」と手紙を書く人、「自分の気持ちに向き合えた」と感謝のメッセージを書く人もいる。「心の傷が癒えることは一生ない」と佐々木さん。だが「気持ちとうまく付き合っていくことはできる」という。
震災から丸9年。自らの庭を開放し、遺族の心を癒やす佐々木さん。これからも高台に訪れる人に声を掛け続ける。電話はつながらない。だが、故人を思う気持ちは、いつもつながっている。
<メモ>
岩手県大槌町は、東日本大震災による津波で町の50%が浸水し、死者1233人、行方不明者413人(19年12月時点)。農地12ヘクタールのうち浸水被害で現在も半分が営農困難。避難先への移住が相次ぎ、農家戸数は10年の195戸から19年は152戸まで減少した。
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2020年03月11日
[新型コロナ] 北海道に現地本部設置 農水省
農水省は8日、札幌市の北海道農政事務所に、新型コロナウイルス対策のための北海道現地対策本部を設置した。道内の農林漁業者から感染者が出た際のガイドラインの策定、農業ヘルパーの紹介など事業継続へのセーフティーネット対策、関係機関との連絡調整を行う。
本部長は伊東良孝副大臣、副本部長は山田英也農政事務所長、本部員として同省課長補佐級5人が担う。
立ち上げ式に参加した伊東副大臣は、食品を介してウイルスが感染しないことが基本原則とした。酪農への影響を最大の懸念事項とし、家族経営で感染者が出た場合に搾乳・生乳生産が止まってしまうことに危機感を示し、「搾乳から生乳出荷のルートを確保することが何より大事」と強調。農林漁業関係者が発症した場合について、「本部から適切な対策や指示を出し、農林水産業者を守っていく」と話した。
伊東副大臣は9日、札幌市中央卸売市場、北海道漁業協同組合連合会、道庁、JA北海道中央会、ホクレンの関係者と意見交換をする予定だ。
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2020年03月09日
農政の新着記事
品目別30年輸出目標 牛肉3600億、米261億円 生産基盤強化へ 支援拡充が必須
農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円とする政府の新目標の内訳が14日、判明した。農畜産物の品目別で最も目標額が大きいのは牛肉で、30年に3600億円。19年実績の12倍に当たる。達成には生産基盤の強化や中国との検疫協議の進展が必要だが、実現性を問う声が出る可能性もある。
19年の牛肉の輸出量は4339トン、輸出額は297億円だった。……
2020年03月15日
自然体験した小・中学生 学力テスト好成績 教育政策研が全国調査
自然体験や自然観察の経験があるほど好成績──。国立教育政策研究所の調査で、そんな結果が出た。全国規模の学力テストを受けた小学6年生と中学3年生のうち、自然の中で遊んだことや自然観察をしたことがあると回答した児童・生徒は、平均正答率が高かった。
2018年度の学力・学習状況調査で学力テストを受けた児童・生徒を対象に調査した。
国語も算数も
小学6年生は、知識を中心に問う「国語A」で、自然体験などの経験が「ある」と回答した児童の平均正答率は72・1%に達している。「ない」と回答した児童の平均正答率は63・6%にとどまった。思考力や表現力を見る国語B、計算やグラフの読み取りなどを見る算数A、文章題が中心の算数B、理科も同様に、自然体験などの経験がある児童の正答率は「ない」などと回答した児童よりも高かった。
中学3年生も同じ傾向。中でも知識を問う国語Aは、平均正答率が78・3%に上った。
調査結果を取りまとめた同研究所は「自然体験が学力向上にどれだけ貢献しているか明確には分からない」とするが、どの教科でも自然体験などの経験の有無で、テストの成績には開きが出ている。
児童・生徒の自然体験を推進するため、与野党5会派は昨年の通常国会に「子どもの農林漁業体験活動を推進する法案」を提出。義務教育の中で2~4泊以上、農山漁村で宿泊体験する「子ども農山漁村交流プロジェクト」の制度化が目的だが、法案は衆院文科委員会に付託されたままとなっている。
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2020年03月15日
牛 血統不一致を調査 全国の状況把握急ぐ 農水省
農水省は13日、取引時の血統と実際の血統が異なる和牛が流通していた問題を受け、再発防止の対応を強化することを明らかにした。同様の疑わしい事例がないかどうか調査に着手。日本家畜人工授精師協会には厳格な人工授精を指導した。今国会には、家畜人工授精所で扱う精液や受精卵の管理強化を盛り込んだ家畜改良増殖法改正案を提出しており、適正な流通に向けて環境整備を急ぐ考えだ。
江藤拓農相は同日の閣議後会見で、沖縄県久米島町で11頭の繁殖雌牛に血統矛盾が見つかったと報告。……
2020年03月14日
家伝法審議が本格化 衛生管理徹底へ 設備投資に助成も 衆院農水委
衆院農林水産委員会で11日、豚熱、アフリカ豚熱対策が柱の家畜伝染病予防法改正案の質疑が本格的に始まった。野党は政府に対し、養豚農家が飼養衛生管理基準を順守するため、どう支援していくかを追及。政府は、法改正を通じ、農家だけでなく国、自治体の責務を明確化することに加え、設備投資への財政支援などにも力を入れる考えを示した。
立憲民主党の佐々木隆博副代表は、飼養豚へのワクチン接種に伴い、国際獣疫事務局(OIE)の「清浄国」への復帰にどう取り組むかを課題に挙げ、「対策を取らなければいけない」と政府の方針をただした。……
2020年03月12日
[新型コロナ] 農産物 需要喚起を 経済対策取りまとめへ 自民
自民党は11日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、農業分野を含む新たな経済対策の検討に入った。岸田文雄政調会長が、野村哲郎農林部会長らに月内の取りまとめを指示。2020年度予算成立後、大型補正予算の編成を視野に入れる。農業分野では、農産物の価格下落を受けた農家の経営支援や需要喚起策などが焦点になる。検討に先立ちJA全中などから影響を聴取した。
岸田氏は各部会長らを集めた会議で「新年度に入ったら、さらなる思い切った経済対策を用意しなければならない」と強調。……
2020年03月12日
農水省が基本計画原案 「国民的合意」を重視
農水省は10日、新たな食料・農業・農村基本計画の原案を示した。新たに「国民的合意の形成」を打ち出し、農業・農村への国民の理解を醸成し、食料自給率の向上と食料安全保障の確立を図るとした。人材確保と生産基盤の強化に向け、経営規模の大小や中山間地域などの条件にかかわらず「農業経営の底上げを図る」と改めて明記した。……
2020年03月11日
原発事故、出荷停止、除染作業 やっと9年 「農業継いだこと、後悔してないよ」 福島県須賀川市の樽川和也さん
自死した父に伝えたい
おやじにもう一度会えるなら、農業継いだこと、これっぽちも後悔してねぇよ、って伝えたいな──。
福島県須賀川市の水稲・野菜農家、樽川和也さん(44)は地域で一番の若手ながら、直売所では名指しで注文が入るほど、信頼を得る農家になった。だが、その姿を一番近くで見てほしい父はもういない。東京電力福島第1原子力発電所事故を受け、自ら命を絶った。あれから9年。除染作業、賠償請求……。父の死を受け入れ、農業を続ける道のりは決して容易ではなかった。
和也さんは稲作4・5ヘクタールを営む他、10アールのハウス(6棟)をフル回転させる。キュウリ、ブロッコリー、トウモロコシなど年に10品目を超す野菜を栽培し、地元のJA夢みなみの直売所に出荷する。
父が求め続けた有機質肥料を引き継ぎ、野菜は甘さにこだわる。
「おやじは農業に人生を懸けていた。堆肥作りに取り組むおやじの背中が忘れられない」
父の久志さん(享年64)が亡くなったのは、震災発生から2週間後の2011年3月23日、自宅に届いた1通のファクスが原因だった。原発事故による県産野菜の出荷停止の知らせだった。父はファクスに目を走らせると、額に手を当て、目を閉じた。和也さんが風呂から上がっても、同じ姿勢で背中を丸めたままだった。「農家を継いでくれって、余計なこと言ったな」。おもむろに立ち上がると、普段一度もしたことがない夕飯の食器洗いを始めた。最後の姿だった。
翌日、帰らぬ人となって見つかった。「目の前が真っ暗になった。原発がおやじを殺した。憎くて憎くて……。おやじを返せって、何度も思った」
父が亡くなるまで、指示された通りに作業をしてきた。初めは自分だけではうまくいかず、栽培したキャベツは捨てることになった。その数2000株。父の日誌を必死に読み、勉強した。「つらかったけど、おやじが大事にしたこの地が荒れるのは、もっとつらかった」。使命感、ただそれだけだった。
同時に、朝から晩まで地域の除染作業に明け暮れた。やっと経営に集中できたのは16年だった。
あれから9年。あんなに必死でめくっていた父の日誌は、しばらく開いていない。「自分のやり方も分かってきたし、いつまでもおやじにしがみついてちゃ駄目だと思って」
いまだに原発再稼働の報道を見ると憤りを感じる。過去は忘れられない。だが、自分の野菜を待っている人がいる。
これからも農業を続ける。父がいたこの地で、生きていく。
営農再開まだ30%
原発・津波被害で福島県の営農休止農地は1万7000ヘクタールに上った。19年4月時点で30%の5000ヘクタールしか再開していない。政府が指示する「帰還困難区域」は、双葉町や大熊町など7市町村がいまだに原則立ち入り禁止になっている。(高内杏奈)
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2020年03月09日
原発事故由来の農林系廃棄物 稲わら、ほだ木 被災地に1万トン超
栃木 宮城 行き先なく作業滞る
東日本大震災から11日で9年。東京電力福島第1原子力発電所事故の影響で放射性物質が付着し、高濃度で汚染された稲わらやほだ木など農林業系の指定廃棄物の福島県での処理が進んできた。ただ、最終処分場が決まらず、宮城、栃木など福島県以外では事故発生当時から処理はほとんど進んでいない。1万トンを超す農林業系の指定廃棄物が今も被災地に残されている。
原発事故によって大気中に放出された放射性物質は土、下水汚泥の他、稲わらや堆肥、ほだ木などに付着し、汚染された廃棄物が発生。農林業に深刻な影響をもたらした。そのほとんどは放射能濃度が低く、一般の廃棄物と同様の方法で安全に処理できる。ただ、国が責任を持ち対応することが決まっている1キロ当たり8000ベクレルを超えた指定廃棄物は、最終処分場が決まらず処理が進んでいなかった。
環境省によると、2019年12月時点で、稲わらなど農林業系の指定廃棄物は、主に宮城、福島、栃木で合計1万2990・7トンが残ったままだ。
福島県では指定廃棄物の処理を16年から始める。稲わらなど農林業系の指定廃棄物は残り2578・9トン。同省によると、順調に処理が進んでいるという。農林業系の指定廃棄物は主に焼却し、出た灰は埋め立てに使い処分している。
一方で、農林業系の指定廃棄物が風向きなどの影響で最も多い栃木県では、8077・1トンが残る。県によると農家などがシートにくるんで保管しているという。同省や県などは、農家が保管する稲わらなど指定廃棄物について、市町単位で暫定保管場所を確保して集約することを検討してきたが、まだ具体的に動いていない。
この他、宮城県では2274・4トンの農林業系の指定廃棄物が残ったままだ。
農林業以外にも下水汚泥や浄水発生土などでも指定廃棄物が10都県であり、合計28万8185トン残っている。
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2020年03月09日
新たな基本計画10日に原案提示 基盤維持へ減少抑制 就農策を強化 農水省
30年目標 農家33%減の140万人 農地6%減の414万ヘクタール
政府が今月中に閣議決定する新たな食料・農業・農村基本計画の原案が7日、判明した。2030年の農業就業者数を15年比33%減の140万人、30年の農地面積を19年比6%減の414万ヘクタールとする見通しを提示。新規就農の促進や荒廃農地の発生防止策を講じ、減少幅を見通しで示した数値に抑え、生産基盤を維持したい方針だ。10日の食料・農業・農村政策審議会企画部会に示す。……
2020年03月08日
農漁村の暮らし向上 5年間で4・6兆円投資 韓国
韓国政府は今後5年間、総額で51兆ウォン(4兆6000億円)を投じて農漁村の暮らしの質の向上を目指す。保育施設の拡充など地域の福祉や教育、住居、経済活動を後押しし、都市部から人を呼び込む計画だ。……
2020年03月08日