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HPVワクチンと名古屋スタディ/下

3万人調査の結果は「子宮頸がんワクチンと接種後の症状に関連はなかった」

鈴木貞夫 名古屋市立大学大学院医学研究科教授(公衆衛生学分野)

同じデータから異なる結果の論文

 2019年1月、名古屋の公開データを使用して異なる結果を出した八重ゆかり・聖路加国際大学准教授と椿広計・情報・システム研究機構 統計数理研究所長の共著による論文「日本におけるHPVワクチンの安全性に関する懸念:名古屋市による有害事象調査データの解析と評価(以下、八重論文)」が、日本看護科学学会誌(JJNS)から出版された。

拡大ヒトパピローマウイルス(HPV)の3Dイラスト shutterstock.com

 オリジナルは英文(注5)であるが、本人による日本語訳(注6)がネット上で公開されているので、利便目的でそちらを参照する。オリジナルが16ページという長大な論文であるためか焦点が定まっていない。「要約」部分にも、論文の中核であるはずのオッズ比の記載がなく、非常に読みにくい。全体を読んでみると、分析疫学的な意味での「名古屋スタディ」との違いは「HPVワクチンと認知機能障害、運動機能障害などの特徴的な症状との関連の可能性が示唆された」という部分に集約できると考える。

 八重論文の問題点は以下に示す通り6つあると考えている。

(1) 交絡と変数調整に関する問題
・年齢調整をしないことが正当化されていること
・接種群と非接種群で系統的に異なる変数を導入して調整していること
(2) 比較に関する問題
・非接種対照群で偏った集団を使用していること
・多重比較が行われていないこと
(3) 交互作用を用いた分析上の問題
・交互作用存在下でのワクチンの効果を恣意的に論じていること
(4) 利益相反(COI)の問題
・潜在的・実質的なCOIと資金源の記載がないこと(主著者本人が反HPVワクチンを唱える「薬害オンブズパースン会議」のメンバーであることを記載していない)

 どれもが致命的な欠陥であると考えるが、ここでは(1)と(3)について論じる。

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筆者

鈴木貞夫

鈴木貞夫(すずき・さだお) 名古屋市立大学大学院医学研究科教授(公衆衛生学分野)

1960年岐阜県生まれ。名古屋大学医学部卒業、名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了(予防医学専攻)、Harvard School of Public Health修士課程修了(疫学方法論専攻)。愛知医科大学講師、Harvard School of Public Health 客員研究員などを経て現職。2006年、日本疫学会奨励賞受賞