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【東京】

東京大空襲 「あの日」証言伝える 江東など新たな形の取り組み

空襲を知るための外国人向けツアーで、体験者の男性(右)と平和を祈り、折り紙を折るルーマニア人男性。中央は伊藤薫さん=江東区で

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 東京大空襲の被害が甚大だった江東区を中心に、高齢化する体験者の証言を聞き取り、発信する取り組みが続いている。「空襲を過去のことにせず、私たちの今の暮らしにもつながっていると知ってほしい」。紙芝居や町歩きなど新しい形で伝えるのが特徴だ。

 「髪の毛が燃える、服が燃える、すべての思い出が燃え上がる」

 6日、江東区の多目的スペース。紙芝居楽団「うちゅうばくはつがくだん」が東京大空襲をテーマにした「光のカーニバル」を上演していた。

 不登校の少女美幸が浅草で出会った奇術師に導かれ空襲の日の記憶をたどるストーリー。川に飛び込む人や、火だるまとなった人、炭のようになった遺体-。悲惨な光景を目にして、美幸は初めて自分の住む町でかつて起きた悲劇を知る。

 「戦争という『見たくないもの』に懐中電灯を当てながら拾い上げた」と、団長のシマカワコウヂさん(43)。体験者の話を聞いた上で制作しており「受け取った思いや熱量を、紙芝居を通して渡したい」と話す。

 江東区を中心とした町歩きツアーをしている「TreckTreck」代表の伊藤薫さん(38)=同区=は慰霊碑や防空壕(ごう)を巡る外国人向けの企画を昨年秋から提供。今月もルーマニア人男性(33)を案内し、空襲体験者の男性(81)の証言を聞いていた。伊藤さんは「関東大震災や東京大空襲から再生している町だと伝えると、興味を持つ人が多い」と話す。

 「当時を少しでも体感したい」と、75年前に空襲が始まった時間帯に合わせ、生き延びた被害者がたどった道を走るイベントも10日未明に仲間と実施した。参加した江東区の会社員高橋一也さん(57)は「火の海でどこに逃げればいいか分からず、周りで大勢の人が亡くなっていく。そんなことが75年前にあったんだと思いながら走った。戦争ってすごく悲しいことだな」と話した。

 

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