自動車システム開発になくてはならない「HILS」とは??
皆さんはHILSという言葉をご存知でしょうか。
HILSとは、自動車のシステム開発シミュレーションができるモデルベース開発で活用するシミュレータですが、実は自動車産業において大きな役割を担っています。
HILSとはどういったシステムで、どのようにシミュレーションしていくのでしょうか。
そして、HILSを使うメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。
HILSが歩んできた歴史を踏まえて見ていきましょう。
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実機をシミュレーションするHILS
HILSとは、Hardware-In-the-Loop-Simulation(ハードウェアインザループシステム)の略称で、車のエンジン機能や車両挙動を数値化し、実機を模したシミュレーションが可能な開発用シミュレータです。
自動車はECUと呼ばれる電子制御ユニットで管理されており、ECUは制御プログラムをサイクルタイムごとに実行します。
ECUと制御機構をつなぐサイクルは制御ループと呼ばれていますが、実システムと同様に制御ループを実現するのがHILSです。
HILSは、ECUが必要となる環境を作り出すテスト装置といっても過言ではありません。
自動車開発と共に歩んできたHILSの歴史
HILSが誕生する前はどのようにシミュレーションしていたのでしょうか。
事故防止、安全性の確保のために自動車のリアルタイムシミュレーションが行われたのは1970年代が最初と言われています。
そして、1980年代に入り、パソコンの進歩とともにECUを使ってシミュレーションすることが増えてきました。
1990年代にHILSが誕生し、2000年代に入って、自動テストシステムツールの登場により現在のHILSとなったのです。
HILSはどのようにしてシミュレーションするのか
実際にどのようにシミュレーションしていくのか見ていきましょう。
HILSは、実世界の電気装置・機械装置の代わりとなるバーチャルな制御対象のプログラム、プラントモデルを使って計算します。
最初に行うことは、テスト仕様の構築、シミュレーション環境の構築(HILS構築)です。
実際のECUとHILSプラントモデルをつなげることにより、変化するエンジン回転数を計算して回転センサー信号をインタフェース回路に発生させます。
このように、ECU出力からプラントモデル、回転センサー信号、ECUという段階を経て制御ループを作るのです。
HILSを使うことによってメリットは
HILSを使うことによって、さまざまなメリットが生まれます。
たとえば、ECUのソフトウェアの検証ができるので、開発期間の短縮を図ることができます。
もしHILSがなければ、実機の検証のみになるので、万が一不具合となれば、前段階からのやり直しで相当な時間とコストのロスになります。
HILSは実機を必要としない開発環境でありながら、24時間自動運転でテストが可能という点もメリットのひとつです。
動作に不具合が発生したの場合でも、その条件を把握して再現テストを行うこともできます。
自動車の進化とともに歩むHILS
最近では制御システム(モータ制御技術)の向上やEV車の登場など、自動車の技術も進んでいます。
HILSはインターフェースを設定することで、新たなシミュレーションも可能となります。
自動車製品の設計・開発において欠かせない存在でありながら、自動車の進化とともにHILSシステムも高速処理を可能にするなど進化を続けるので、ますますその活躍が期待できます。
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