新型コロナウイルスの感染拡大を受け、十九日に開幕予定だった選抜高校野球大会が史上初めて中止となった。自粛の波がスポーツ界にも次々と襲う中、選手たちは無念の思いを乗り越えてほしい。
新型コロナウイルスの影響はスポーツ界にも大きく広がり、選抜高校野球も中止に追い込まれた。甲子園球場という全国の球児があこがれる舞台でプレーすることを夢に抱き、厳しい練習に耐えてきた選手たちの絶望感、無念さはどれほどのものかと胸が痛む。
他の高校全国大会が延期や中止を決断する中で、日本高野連は出場校やメディア関係者の人数制限、オゾン脱臭機の設置、選手の個室宿泊など対応策を練り、無観客試合を軸に検討を続けてきた。
しかし感染症の専門家から「万全」のお墨付きは得られず、「なぜ高校野球だけが開催できるのか」との声を覆すことはできなかった。また、政府の休校要請を受けてクラブ活動も制限され、対外試合などの実戦練習を行うこともままならない中で、硬球を使用する野球は大きなけがにつながりかねない危惧もあった。
感染症の脅威は今年に限ったことではない。厚生労働省によれば二〇一八年は国内でインフルエンザにより三千三百二十五人が亡くなり、一九年は一月だけで千六百八十五人が死亡している。また結核予防会によれば、一八年は一万六千七百八十九人が新たに結核患者として登録され、死亡者は二千三百三人だった。それでもスポーツなどの大規模イベントは政府からの自粛要請もなく、続けられてきた。
ただ、新型コロナウイルスはいまだに全容がつかみ切れていない。気温が上がれば終息するのか、感染した人には免疫ができて感染の連鎖が断ち切られるのかも、分かっていない。それらが解明され、不安が払拭(ふっしょく)されない限りは、スポーツ界も自粛を続けることになるだろう。
それでもスポーツが心身を健康にし、人にとって欠かせないコミュニケーション力を育み、人生の質を高めるという、社会的に意義がある活動であることに変わりはない。
選抜大会でプレーすることがかなわなかった選手たちは、ここまで努力してきた自分たちに誇りを持ってもらいたい。つらい気持ちを乗り越えて夏の甲子園を目指す姿には、今よりも多くの人が応援し、支えてくれるはずだ。
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