世界的に市場環境が慌ただしくて対応に追われるなどクソ忙しい最中ではありますが、先般、カドカワ元代表取締役(現・KADOKAWA社取締役)の川上量生さんから東京地裁に提起された名誉毀損のSLAPP気味の訴訟で、無事に勝訴しました。

 私が川上量生さんに対して書いた文言については「川上量生さんの社会的評価は低下しない」「意見論評としての域を超えるものではない」「社会通念上許される限度を超える侮辱行為ではない」と認定されました。

 世の中大変なところで、本件のようなほのぼのニュースをお届けできることを誇りに思います。

 なお、一連の訴訟は三部構成になっており、最初に「カドカワ代表取締役 川上量生」の名義で私の所属する情報法制研究所に抗議文が送られてきたことに対する債務不存在確認の第一訴訟(その後損害賠償請求を追加)、これを踏まえて川上量生さんが私に名誉毀損と訴えてきた第二訴訟(本件地裁勝訴の裁判)、さらに私が川上量生さんに対して名誉毀損で訴えた第三訴訟が並行して進んでいます。

 関係する有志の皆さんからのご支援もいただきつつ、まずは地裁で望む結果が得られたというのはありがたく存じます。改めまして、ご支援くださった皆様方には深く感謝申し上げます。

山本一郎氏、川上量生氏に勝訴 「侮辱的な表現に誘発された」「限度を超えていない」|弁護士ドットコムニュース https://www.bengo4.com/c_23/n_10924/

 経緯に関しては、火鍋チャンネルの公式Twitterが記してくれています。


 川上量生さんが問題だと言って訴えてきた私のTwitterの書き込みはこれです。

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 1と2は、いずれも川上量生さんが海賊版対策において、憲法で違憲の疑いがあり、通信事業法でも緊急避難とはとても言えないサイト遮断(ブロッキング)に賛成する発言を政府委員として繰り返し行っていたことに対して書いたものですね。

 川上量生さんの主張するサイトブロッキングは否定され、業績不振の責任を取ってカドカワ社の代表取締役は辞任に追い込まれ、経営の調子が良かった頃に適当に広げた人工知能将棋やニコニコドキュメンタリーやテクテクテクテクや東京東京フェスティバルやバーチャルさんは見てるやけものフレンズ2やジブリ関係などなど川上量生さんが手がけるものは見事に全部失敗して壊滅的な状態になっていますね。
 これ。川上量生さんに経営能力が無いから失敗したんですよ。
 夢を持って仕事に取り組んできたドワンゴ社の方が、リストラや賃下げに遭い擦り切れるように退職ブログを綴っているのを拝読すると涙が止まりません。

 で、その川上量生さんが1円を求める名誉棄損裁判を起こしてこられました。しかも、降りることなく判決まできてしまうという。
 彼は、何のために訴えてきたんでしょうか。ムカついたから? 
 完全に逆ギレじゃないですかね。

[引用]

8日投稿は,その文脈を総合的に考察すれば、ブロッキングの法制化に賛成する原告の意見が不当である旨主張することに主眼があるものと容易に理解し得るのであって、その中に「支離滅裂」、「狂ってる」という侮辱的な表現が含まれているとしても,被告が、原告から、従前「日本のネットのガン」、「総論として屑」、「下劣な品性の持ち主」、「ごろつき」などと、ブロッキングの法制化の是非を巡っての直近のやり取りで 「山本一郎が発狂しているな。」などと、いずれも侮辱的な表現を用いて批判されていたことに照らせば、かかる原告の侮辱的な表現に誘発され、これに対抗する趣旨で記載されたものとも考えられるから、8日投稿中の上記表現が社会通念上許される限度を超える侮辱行為であるとは認められない。

--ここまで--

 要するに、私は川上量生さんのブロッキング賛成論を否定しているのであって、裁判所もそのとおり認定してくださり、ついでに先に侮辱的な表現を用いて批判してきたのは川上量生さんじゃねーかというおまゆう判決(お前が言うな判決)になっています。

 3の「貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ」は、みんな大好き『Civilization 4』の宣戦布告を行うときのセリフなんですが、まさかの唐澤貴洋弁護士さんを代理人に据えた川上量生さんが「刑罰として死刑に値する行為をしたとの事実を摘示し、一般の読者をして原告(川上量生さん)が殺人罪、強盗殺人罪などの重罪にあたる犯罪行為をしたと誤信させ、原告の社会的評価を低下」とか主張してきたんですよ。んなあほな。

[引用]

14日投稿は、原告による被告の所属法人への抗議文の送付やインターネット上での公開がされたことを契機に、その対抗措置として先行訴訟を提起したことをブログ上に発表し、自らの心境を比喩的に語った被告において、これまではインターネット上での相互批判の域を出なかった原告とのやり取りが訴訟の提起という法的措置に進展したことを原告との戦争ないし戦いに例え、原告が被告とのゲームの趣味の類似性を自認し、被告の執筆に係るゲーム記事を好意的に評価している旨公表していたこともあって、「貴公」などという被告の従前の投稿とは全く異なる文体で、開戦を意味する著名ゲームの言葉をそのまま引用することにより、被告自らの高揚した心境をツイッター上でも表現しようとしたものと理解することができるのであり、これを14日投稿前後の被告の一連の投稿と切り離して原告が刑罰として死刑に値する犯罪行為をしたことを意味するなどと解する余地はないから、そもそも原告の名誉感情を侵害するものとはいえないし,仮にそうでないとしても、これが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であるとは認められない。

--ここまで--

 当たり前のことですが、川上量生さんの主張は、一刀両断されています。真っ二つです。著名ゲームの宣戦布告選択肢のフレーズを書いて、それが死刑に値する犯罪行為を行った事実の摘示なわけがないじゃないですか。自意識強すぎwww

 いま読み返していても思わず「川上量生さんwww フフッwwww」ってなるぐらいに「この人は何を言ってるんや?」という心境になるわけでして、シヴィライゼーションやってきて良かったなって思うのであります。

 で、訴訟をふりかえると、これ、嫌がらせだと思うんですよね。これが仮に、相手に何の財力もない匿名アカウントが相手だったら、本件のように1円訴訟だとしても代理人雇わないといけない話になりますし、費用だけでなく、とても手間はかかります。この第二裁判だけでも提訴から一年あまりが経過していますからね。

 そりゃあこんな訴訟の起こし方では川上量生さんに1円の名誉も認められないのかもしれませんが(控訴するでしょうが)、普通の人が訴訟を受けたときは大変です。間違いなく、楠正憲さんのような見解になるでしょう。


[引用]

損害賠償1円を求めて提訴って、裁判で争う手間を考えると嫌がらせもいいところだな。自分はここまで関わり合いになれないんで気をつけなきゃね

--ここまで--

 これが、多くの方から多大なご支援を戴けた私であり、かつ裁判にある程度慣れたうえに、情報法制研究所(JILIS)という文字通り法律の専門家の集まりの団体に私が所属し、さらに代理人である壇俊光先生、神田知宏先生、第一訴訟補助参加人であるJILISの代理人である清水陽平先生、板倉陽一郎先生といったこの方面のエキスパートが揃っていたからこそどうにかなったわけですよ。

 その結果、川上量生さんを「認識不足」又は「注意不足の程度が著しい」と論じても、あるいは川上量生さん派「合理的・論理的な判断が出来ない」と論じても、社会的評価の低下はないと裁判所に認定いただけたというのはありがたく、議論の前後関係も踏まえてきちんとご判断賜ったと思っております。

 まだ一連の裁判はいろいろありますが、引き続きご愛顧、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。



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