36、それが人なんだよ!的なやつ
ギリギリセーフ!!!だよね?
「イガちゃんさん! ごめんなさい!」
私を連れてイガラシさんの前に立ったソーラさんは開口一番そう言った。イガラシさんはなぜ謝られたのか分かってないようだ。
「実は、私たち掃除の途中にイガちゃんのコレクションの陶器を割っちゃったの! ごめんなさい! ミズキちゃんは悪くないの。私がいきなり声をかけちゃったから…だから…」
「そ、ソーラさん! 何言ってんの! 悪いのは私だよ! 私が触らなきゃ良かったんだし…ごめんなさい! なんでもします! だから、だからどうかここに置いて下さい!」
ソーラさんと私が頭を下げる。イガラシさんはここのNo.2だ。もし、機嫌を損ねたら私の未来は無いに等しい。だけどもソーラさんが私のやったことの責任を取る必要は無い。
「陶器を割った…かあ…。お前ら何してんだよ」
イガラシさんが口を開く。その声は無表情だ。
「ちなみにどんなやつを割ったんだ?」
イガラシさんが問いかける。私はどう答えたら良いか困る。
「えっと…意味不明な文字の隣に置いてあったやつだよ」
ソーラさんがイガラシさんの言葉に正直に答える。
「お前らあれを割ったのか…はあ…」
イガラシさんが大きく息を吐く。まさかお気に入りのコレクションとか本当に大事なものだったのかも。そんなのを割った私は本当にここから出て行かなきゃいけないかもしれない。私はイガラシさんの次の言葉に覚悟を決める。
「イガちゃん! もし、ここで変なこと言ったら私もここ抜けるからね! 」
ソーラさんがイガラシさんが口を開く前に言い放つ。イガラシさんの顔色が怒気を孕んだものに変わる。私は息を飲む。ソーラさんの唾を飲み込む音も聞こえる。
しかし、次の瞬間イガラシさんは顔を和らげる。
「ふははは! 安心しろ! 別に気にしては無いさ。あれもどうでもいいやつだったしな。それに物ってものはいつかは壊れるもんなんだよ。だから今がその物の寿命だったってわけだからな。気にすんなよな! 」
「えっ! じゃあ私たちを許してくれるの!」
ソーラさんがびっくりしたように問いかける。私も同じように疑いの目を向ける。
「だから、怒ってないって言ったろ! まあ、お前が出てくって言ったときはちょっときたけどな。まあただし、人のもん壊したことには違いねえしな、お前ら2人しばらくは掃除当番続けな! ガイム!お前も手伝ってやんな!」
いつの間にか後ろにいたガイムさんがその言葉に頷く。
「分かった! 」
そうやって喜ぶソーラさんは私の方を向く。その顔は笑顔だ。
「良かったね〜ミズキちゃん! まあこれからも少し掃除はしなきゃだけどね。頑張ろうね!」
「えっ…本当に私、ここ出てかなくていいの? イガラシさん!ありがとうございます! これからも頑張ります。」
「おうおう、頑張りな!」
そう言ったイガラシさんのもとを私とソーラさんは出て行く。
「…あの、ソーラさん」
「ミズキちゃん…いつも言ってるでしょ? ソーラお姉ちゃんですぅ!! で、どうしたの?」
ソーラさんが笑顔でこっちを見る。
「どうして、私のことを庇ってくれたのですか? もしかしたら罰を受けてたのかもしれないのに。だって、悪いのは私だし…。どうしてそこまで私を気にかけてくれるのですか?」
ソーラさんは少し考え込むように手を顎に置く。そして答える。
「そうだね〜。それは、お姉ちゃんだからだよ!」
「お姉ちゃん?」
「そう! 私はミズキちゃんのお姉ちゃんだからね。大好きな妹が罰を受ける…そんなの私は絶対に許さない! 大好きな妹を守ってあげる。それがお姉ちゃんの務めだし。困ってる人がいたら助ける。これも人にとって大切なことなんだよ! 私はね、ここに来て沢山の人達に出会ったの。沢山失敗したし、ここは暗殺稼業だから危険なことも多々あったの。だけど他のみんなは私のことを助けてくれた。私はね一回アカギさんに聞いたの。なんで助けてくれるの?って」
「なんて?」
私は聞き返す。それが私にとって大切なことに感じたから。
「そしたらね、『俺らは人とか獣を殺してる。まーそういう人の道外れた奴らだけどな、困ってるやつや仲間を助けるって当たり前のことを捨ててる訳じゃねえ! そういうのをするのは人でも獣でも無い、ただ畜生だよ。だから俺らはお前が失敗したら助けるし、危険なことにあっても助ける。だからな、もしお前が将来困ってる自分よりも弱い奴らがいたら助けてやれ! それが俺らへの最大級の恩返しだからな! 』って。だから私は決めたの。私は、ちっちゃいけど、もし私よりも弱くて困ってる人がいたら、その子のお姉ちゃんとして精一杯助けてあげようってね! それは、ミズキちゃん! 貴女も例外じゃないの! だからミズキちゃん、もし、今回のことを嬉しいって思ってるんなら、今度は他の人にそれを分けてあげてね!」
そう言って笑顔で抱きしめてくれる。
(そっか…人って、そういうもんなんだ…)
私の中で1つは穴が塞がった気がした。
いつの間にか私の両頬には涙が流れていた。
「ミズキちゃん…人って思ったよりも弱いんだよ、だから助け合うの、支え合うの。そういうものなんだよ!」
私はソーラさんの腕の中で涙を流し続けた。
お読みいただきありがとうございます!
ギリギリ投稿で有名な作者です。
今回のあとがきはギリギリなんでこのくらいで
次回もお読みいただけると嬉しいです。
では、
※少し内容を加筆しました。