新型コロナウイルスの拡大に伴い、経済危機が深刻化している。家計、企業双方で底の見えない不安が広がり、資金循環が急激に勢いを失った。政府は減税を含む大胆かつ迅速な対策を打つべきだ。
新型コロナの影響は観光、運輸、流通だけでなくほぼ全産業に広がったとみていいだろう。すでに資金繰りに窮している中小企業や店舗は多い。正規、非正規を問わず、従業員の解雇という苛酷な道を選ばざるを得ない経営者も激増しているはずだ。
海外を中心とした旅行者激減による影響に加え、スポーツやコンサートなど、さまざまなイベントの自粛も国内経済への強烈な重しとなって顕在化し始めている。
急落を繰り返す株価など金融市場の激しい動揺も企業経営者の心理を一気に冷やしている。今後、経営者が賃上げや設備投資の抑制に走る姿は想像に難くない。
この間、政府は中小企業や仕事を休む保護者への賃金補填(ほてん)などを行ってきた。第三弾の対策も来月に実施する方針だ。
だがこれまでの対策は、各省がさみだれ式に行った上に規模も小さく打撃を止め切れていない。力強い情報発信という意味からも、首相がより前面に出て対策の全体像を国民に訴えかけるべきだ。
一方、日銀は潤沢な資金を市場に流すことで対応している。ただ一国の中央銀行だけでは効果は限定的だ。欧米や中国など主要国の金融当局者と深く連携した協調行動を起こしてほしい。
与野党内では消費税を視野に入れた減税論も浮上している。安倍政権は昨年秋に消費税増税を実施した際、「リーマン・ショック級の危機に見舞われた場合は延期もあり得る」との姿勢だった。
現在の危機はリーマン級といって差し支えない。もちろん将来の社会保障という課題はある。だが足元の経済が崩れれば元も子もない。消費税減税なども選択肢に含めた、柔軟で思い切った対策の検討を求めたい。
さらに中小企業支援については一刻の猶予もない。連鎖倒産が広がってからでは遅い。税金納付や借入金返済の期限猶予など、即効性の高い緊急施策を各省庁や各自治体、金融機関に要請したい。
いずれの経済危機でも、厳しい影響を受けるのは生活弱者や中小零細企業だ。内部留保を持つ大企業の多くは持ちこたえられるはずだ。照準を庶民目線に合わせた暮らし防衛策を強く期待したい。
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