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富山新聞

「健康被害認めず」などと書かれた旗を掲げる原告弁護団=金沢地裁

国に19億円賠償命令 第5、6次小松基地騒音訴訟 健康被害は認めず 金沢地裁

2020/03/13 01:56

 航空自衛隊小松基地周辺の住民ら2166人が自衛隊機と米軍機の一部時間帯の飛行差し止めと騒音被害の損害賠償を求めた「第5、6次小松基地騒音訴訟」の判決が12日、金沢地裁であった。加島滋人裁判長は、過去の被害に対する賠償として計19億2600万円の支払いを国に命じた。飛行差し止めや将来分の賠償請求は退けた。住民側が強調した健康被害は「原告の共通被害として生じていると言えない」として従来通り認めなかった。

 

 加島裁判長は判決理由で「騒音によって原告は睡眠など日常生活を妨害され、精神的苦痛を受けており、受忍すべき限度を超えている」と指摘。騒音レベルの指標「うるささ指数(W値)」75以上の地域に住む原告2160人の損害賠償を認容した。

 

 民事訴訟における自衛隊機の飛行差し止めについては「運航は公権力の行使に当たる」とし、請求自体が不適法として却下した。将来分の賠償請求は「今後も騒音の継続が予測されるとしても、現在と同様に不法行為を構成するかや損害の範囲は明確に認定できず、請求できない」と退けた。

 

 米軍機の飛行差し止めは国の支配が及ばない行為と判断した。いずれも最高裁の判例を踏襲する格好となった。自衛隊の憲法判断は示さなかった。

 

 住民側は今回、これまで小松基地訴訟で認められていない健康被害を立証するため、新たに大規模な影響調査を実施し「騒音が不眠症や精神疾患を招いている」と訴えてきた。

 

 加島裁判長は、原告の共通被害として認定するには「周辺住民全員に健康被害が生じる相当程度の危険があると認められることが必要」との枠組みを初めて提示。その上で、主観的訴えを含む調査票による疾病の認定には限界があり、被害の裏付けがないなどとして、騒音との因果関係を否定した。

 

 また、2016年に宮崎県・空自新田原(にゅうたばる)基地から飛行教導群(アグレッサー部隊)が移転したことについては「賠償請求の内容を左右するような騒音状況の悪化を生じさせているとまでは認められない」とした。

 

 賠償基準額については前回から増額し、W値に応じて1人当たり月4千円~1万4千円とした。

 

 住民側は、飛行差し止めを認めなかったことなどを不服として、控訴する方針を表明した。