東京2020 祝祭の風景
アスリートや市井の人々の思いに耳を傾けながら、この国の風景を見直す
トップ > 社会 > 紙面から > 3月の記事一覧 > 記事
【社会】準強制性交 「抗拒不能」と認定 父親の一審無罪破棄 被害女性のコメント全文1 私は、実の父親からこのような被害を受けてとても悔しい気持ちでいっぱいです。「逃げようと思えば逃げられたんじゃないか。もっと早くに助けを求めたらこんな思いを長い間しなくて良かったんじゃないか」。そう周りに言われもしたし、そのように思われていたのは分かっています。 でも、どうしてもそれができなかった一番の理由は幼少期に暴力を振るわれたからです。 「誰かに相談したい」「やめてもらいたい」と考えるようになった時もありました。そのことを友達に相談して友達から嫌われるのも嫌だったし、警察に行くことで弟たちがこの先苦労するのではないかと思うと、とても怖くてじっと耐え続けるしかありませんでした。 次第に私の感情もなくなって、まるで人形のようでした。被害を受けるたび、私は決まって泣きました。「私にはまだ泣ける感情が残っている」ということ、それだけが唯一の救いでした。 私が一人っ子だったら何も迷わずにもっと早くに訴えられていたかもしれません。やっぱり大切な弟たちのことが心配だったのです。 そんな弟たちと離れなくてはいけなくなること、生活が大変になるかもしれないこと、ただそれだけを考えると、嫌でも仕方なくてじっと我慢するしかできませんでした。 今も弟たちに会いたい。話したい。その気持ちでいっぱいです。今も会えないのは苦しいです。 2 二度と会いたくないのは父親です。あの人が私の人生をぶち壊したんです。返してください。私のこの無意味に空費した時間を! 気に病んだ時間を! 全部返してください。やってみたかったこと、本当はいっぱいありました。でも全部諦めました。 今、すべてのことを振り返ってみると、ひたすら悔しい気持ちです。父との毎日は非常識であり、ただただ気持ち悪かったです。どうしたらあんなことができるのか、分かりません。 私たちはただ普通に暮らしたいのです。暴力も暴行も、無慈悲な言動のない普通の生活がしたいんです。もう二度とこんな思いはしたくありません。 これから私は無駄にしてしまった時間を精いっぱい埋めていきたいので、邪魔しないでもらいたいです。私は父を許すことは絶対にできません。 不安といら立ちに押しつぶされそうな苦しい毎日でした。そして今も同じです。私や弟たちの前に二度と姿を現さないでほしいです。 3 無罪判決が出た時には取り乱しました。荒れまくりました。仕事にも行けなくなりました。今日の判決が出て、やっと少しほっとできるような気持ちです。 昨年、性犯罪についての無罪判決が全国で相次ぎ、#MeToo(ミートゥー)運動やフラワーデモが広がりました。それらの活動を見聞きすると、今回の私の訴えは意味があったと思えています。なかなか性被害は言い出しにくいけど、言葉にできた人、それに続けて「私も」「私も」と言い出せる人が出てきました。私の訴え出た苦しみも意味のある行動となったと思えています。 4 私が訴え出て、行動に移すまでにいろいろな支援者につながりました。しかし「本当にこんなことがあるの?」と信じてくれる人は少なかったです。失望しました。疑わずに信じてほしかったです。 支援者の皆さん、どうか子どもの言うことをまず100パーセント信じて聞いてほしいのです。今日、ここにつながるまでに私は多くの傷つき体験を味わいました。信じてもらえないつらさです。子どもの訴えに静かに、真剣に耳を傾けてください。そうでないと、頑張って一歩踏み出しても、意味がなくなってしまいます。子どもの無力感をどうか救ってください。私の経験した、信じてもらえないつらさを、これから救いを求めてくる子どもたちにはどうか味わってほしくありません。 5 私は、幸いにも、やっと守ってくれる、寄り添ってくれる大人に出会えました。同じような経験をした多くの人は、道を踏み外してもおかしくないと思います。苦難を生きる子どもにどうか並走してくれる大人がいてほしいです。 最後に、あの時の自分と今なお被害で苦しんでいる子どもに声をかけるとしたら、「勇気を持って一歩踏み出してほしい」と伝えたいです。一人でもいいから、本当に信用できる友達を持つことも大切だと思います。 PR情報
|
|