冬のお手軽あったかスープ! ポルトガル風水炊き「カンジャ」[第35回]

いがけない大雪の時のように、外に出るのも億劫……そんな時にオススメするのが、食材も調理法もとてもシンプルな鳥スープ「カンジャ」です。ほろっとほぐれるまで煮込んだ手羽先のうまみがたっぷり! 家族や友人と食べるのにぴったりなあったかスープに、体が芯から温まりますよ。

みなさんこんにちは。

毎日とんでもなく寒いですね。
さすがは2月。

先週の土曜日は、
東京も思わぬ大雪に見舞われましたが
あの日はみなさん、どう過ごしましたか?
雪のせいで一日中家にこもっていたという人も、きっと多いはず。

私はと言いますと、
家にお客さまを呼んでポルトガル料理をふるまっておりました。
雪降ってるし、みんな「雪の中出るの、面倒だなあ」と思ってるだろうし、
中止にするのが大人の賢い選択かなあと迷ったのですが、
前日からの仕込み素材もあったので、
半ば強制的に会を決行(強引ですみません)。
雪の中集まって下さった方々(ほんとうにすみません)は、
当然みんな雪まみれ(ほんとうに申し訳ない)で到着。
でも、あったかいメニュー中心で徐々に体も温まり(そのはず)、
用意したワインも思わぬ雪見酒で一層おいしくなり(なったはず)、
結果的にはめでたしめでたし! でした(だったはず!)。

雪が降っても降らなくても、
つい家にこもりがちになるこの時期、
やっぱり食べたくなるのは温かいものですよね。
家にこもっている時間を有効に使って、
驚くほどシンプルかつ簡単にできる
寒い2月におすすめのメニューがあります。

それは、私の好きなポルトガルの「鶏スープ」
「Canja(カンジャ)」です。

まるっと鶏1羽を煮込むだけという、
これ以上ないぐらい簡素なスープ。
調味料は塩だけで、香味野菜すら入れません。
あんまり簡単なので、
ポルトガルには「エ・カンジャ(カンジャぐらい簡単だ=朝飯前だ)」
という表現があるほどです。

でも、同じように鶏1羽を日本で買うとなるとこれまた高い。
ちっとも経済的なスープじゃなくなります。
日本で作るなら、
値段も手頃でコラーゲンもたっぷりの手羽先がおすすめです。

それから、ポルトガルではこの鶏スープには
必ず茹でた粒パスタを入れるのですが、
日本で作るならパスタよりも、やっぱりごはんでしょう!
それもねばりの少ない冷ごはんがいい。
麦などを入れて炊いたものだと、
パラパラ感がよりこのスープに合います。

「カンジャ」は材料も作り方も今までご紹介してきた中で最もシンプル。
そして、誰が作っても“朝飯前”級の簡単さです。

では、注目の材料はこちら。

材料は1人分です(メイン料理のサイドスープとして楽しむなら2人分)。

・鶏手羽先 5本
・水600㏄
・冷ごはん(冷凍ごはん) 1膳分
・塩 小さじ1
・こしょう 適宜

このスープは手羽先の下ごしらえが肝心です。
ざるなどに手羽先(5本)を並べ、
上からたっぷりのお湯をざっと回しかけ、冷たい水でよく洗います。
裏側もお忘れなく。

こうして熱湯で表面の汚れや余分な脂などを落とせば
煮込んだときのあくの量が減りますし、
香味野菜なしでもくさみが出ません。

この手羽先を鍋に入れ、水(600cc)を加えます。

最初はふたをして強火にかけ、

5分ほどしてお湯が煮立ったらごく弱火に落としてあくを取り、
塩(小さじ1)を加えてフタを少しずらして(吹きこぼれ予防のため)煮ます。

煮る時間は約1時間。
タイマーをセットしておけば、
あとはほったらかしで大丈夫。
ときどきあくを取って、鶏肉が顔を出したら水少々を加えてあげましょう。

煮る時間が20~30分しかない場合は、
スープの味が少しあっさりなので、
顆粒の鶏ガラスープ小さじ1~2ほど加えて濃度を調整します。

1時間煮たらスープは完成。
でも、だしを取った手羽先をふっくらおいしく食べるなら、
火を消してふたをし、さらに30分ほどほったらかします。

こうして手羽先をスープに浸しておくと、
スープに溶けだしたコラーゲンが肉に戻り
ふっくらやわらかい食感になります
(NHKの「ためしてガッテン」で学びました)。

その間に冷ごはんを準備。
冷凍ごはんなら解凍しておきます。

手羽先を取りだし、スープの味を見て塩で調え、
ごはんを加えてひと煮立ちさせます。

ごはんをほぐして温めたら器に盛り、
好みで黒胡椒をかけていただきます。
ふっくら茹でた手羽先も忘れずに添えましょう。

手羽はほろっと崩れるやわらかさ。
肉をほぐしてスープに入れて、一緒に食べてもいいですね。

レモンや刻んだ香菜もアクセントに合います。
もちろん、かぼすやすだちなどの和系柑橘類や
香菜の代わりに万能ネギなどもいいですね。

それにしてもこのスープ、和の素材を加えると
限りなく水炊きの締めの雑炊にそっくり。
こうなってくるとやはり、
博多の郷土料理・鶏の水炊きは、
南蛮の宣教師が伝えた
ポルトガルの鶏の「コジード(Frango cozido)」の名残だという説が、
揺るぎない事実に思えて仕方ありません。
おもしろすぎます、南蛮料理!

ちなみに茹でた手羽先は、
塩こしょうを軽く振って油で表面をカリッと焼くのも
香ばしくておすすめです。

手羽先のだしがたっぷりの「カンジャ」で、
ぜひ温かい週末をお過ごしください!

ケイクス

この連載について

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ポルトガル食堂

馬田草織

ポルトガルや南蛮絡みのエピソードが大好きな編集者・ライターの馬田草織さんが、仕事現場や旅先、日常で気になった食のサムシングと、それにちなむおつまみ&ぴったりなお酒を月替わりでご紹介していく、家飲みも外飲みも楽しむ人へ捧げる至福のほろ酔...もっと読む

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    コメント

    nappyon 朝から鳥手羽を煮て部屋をあたためる。我が家で定番化した馬田さんレシピ。 https://t.co/zgSqkUBI4y 18日前 replyretweetfavorite

    kaorun6 鶏スープだ、美味しそう。中にご飯入ってるのかな。 お手軽なスープでで寒い冬もほっこり http://t.co/gf8EnIYwlu http://t.co/VUN8Dtc0QS 約5年前 replyretweetfavorite

    oyatun なぎあす見ながら作る事に決定した。https://t.co/jwoAk1sof6 約6年前 replyretweetfavorite

    STMK 手羽先買って帰ろう、今日→ 約6年前 replyretweetfavorite