みなさんこんにちは。
街路樹もすっかり色付いて、街にも雰囲気が出てきましたね。
冬の手前、いわゆる“食欲の秋”のど真ん中ですが、
今回はこのシーズンにピッタリの
超ボリューム系ポルトガルB級料理をご紹介します。
きっかけは、この連載を読んで下さっている方で
ポルトガル料理がお好きだという方からの
かなりマニアックなリクエスト。
ポルトガル第二の都市・ポルト名物のクレイジーサンドイッチ
「フランセジーニャ」です。
何がクレイジーかって、まずは見た目。
ほら!
パンの間にソーセージ、ハム、豚や鶏、牛などの肉をたっぷり挟んで
四方をスライスチーズでカバーしたら、
お好みで目玉焼きをオン。
そこにトマトベースの特製ソースをたっぷりかけ、
ナイフ&フォークで大きく切ったものをソースと一緒にほお張ります。
食欲の秋にドンピシャな、このB級感がたまりません。
「フランセジーニャ」は、 訳すと「フランス娘ちゃん」的ニュアンス。
昔フランスに出稼ぎに行ったポルトガル人が、
帰国後フランスのクロックムッシュを
ポルトガル風にアレンジしたものだそう。
フランスのクロックムッシュは、
牛乳やバター、小麦粉で作ったベシャメルソースとハムやチーズを
トーストに挟んで仕上げていますが(さらにクロックマダムは目玉焼きをオン)、
それがポルトガルでは、見事なまでに全くの別物に生まれ変わっています。
「ベシャメルなんていいからよー、
その辺の腸詰とかハムとか、
ありったけの肉を挟んじまった方がうめーぞ、おい!
ソースはよー、そこのトマトとビールと、
あとはそっちのポートワインかなんかでやってくれよ、マスター」
とかなんとか、
フランス帰りのポルトガルのおじさんが、
地元のレストランのシェフに伝えたりして生まれたんじゃないんでしょうか。
それにつけてもこれ、作ってみてあらためて感じますが、
洗練と真逆を行くポルトガル濃度の高い食べ物。
まずは味とボリューム、というポルトガル精神が貫かれていて私は好きです。
ちなみに「フランセジーニャ」の本場であるポルトの街には
フランセジーニャのおいしさを競う店も多く、
ポルトの人にちょっと聞けば、
あの店がうまい、この店のソースがいいとみんなお気に入りがある。
たとえばこれは、ポルトのある人気店の「フランセジーニャ」。
中にはハム2種と腸詰4種類とターキー数切れが入っていて、
とてもじゃないけど1人で1皿はムリ。
罰ゲーム並みのボリュームです
(と思いきや、となりの席の貫録系奥さまはペロッと食べちゃってました)。
この店はターキーを挟む以外にも、
厚切りベーコン、ビーフステーキ、ハンバーグ(!)エビ(!!)
など、うまけりゃなんでも挟んじゃうぜ的なノリで
いろんなバリエーションがありました。
さらに、人気店はもちろんですが、
特にこだわりを感じないごく普通のカフェにも、
軽食としてスタンバっているのがフランセジーニャ。
これはハムもソーセージもあきらかに市販のものを使っていて、
ソースもケチャップの味がかなり濃い。
もしや冷凍?と思うような力みのないフランセジーニャでした。
それでも、これはこれという感じである程度需要がある様子です。
商業都市でもあるポルトは、人と話してみてもなんとなく大阪っぽさを感じます。
だから 「フランセジーニャ」は
大阪のお好み焼きみたいな存在かな、とも思います。
素材をなんでも組み合わせちゃうあたりも、実にお好み焼き的。
このポルトガルの庶民的なお肉ムッチムチ娘は、
パーティなどで出せば、まずは見た目で場が盛り上がること必至です。
しかも作り方も簡単で、
料理が苦手な人でもきっとなんとかなってしまいます。
では早速作っていきましょう。
材料はサンドイッチが1食分、ソースは作りやすい2食分でご紹介します。
■サンドイッチ1食分
- 食パン 小さめ2枚
- ソーセージ 2本
- ハム 好みの量
- 豚もも薄切り 2枚
- 卵 1個(好みで)
- 溶けるチーズ(スライス)8枚
■ソース2食分
- 玉ねぎ 1/2個
- にんにく 1片
- バター 大さじ1
- ビール 100㏄
- トマトペースト 100㏄
- 顆粒コンソメ 1袋(4.5g)
- ブランデーまたはポートワイン(なければ赤ワイン) 大さじ4
- ローリエ 1枚
- 牛乳 大さじ4
- タバスコ、塩、粗挽き黒こしょう 各適宜
鍋またはフライパンにバター(大さじ1)を中弱火で熱し、
みじん切りにした玉ねぎ(1/2個)とにんにく(1片)をしんなりするまで炒めます。
そこにビール(100cc)を加えます。
ビールのほろ苦さはこのソースの隠し味。
この場合は発泡酒ではなく、純粋なビールを使うことをお勧めします。
あまった分はグビッと飲んでリフレッシュ!
さらにトマトペースト(100㏄)、顆粒コンソメ(1袋、4.5g)、ブランデーまたはポートワイン(大さじ4)、牛乳(大さじ4)、ローリエ(1枚)を加え、よく混ぜて中火で加熱します。
ブランデーやポートワインは、
ソースのコクを出すためのもうひとつの隠し味。
どちらもブドウが原料のお酒なので、ソースに深みや丸みが出ます。
でもどっちもないという人、きっと多いですよね。
そんなときは赤ワインでも構いません。
その場合、ケチャップ大さじ1も加えてまろやかさをプラスします。
さらに、スパイシーなソースにしたいときは、
タバスコを好きなだけ振りいれてください。
アルコール分をしっかり飛ばし、ソースの味がまとまったら火を弱め、
縦半分に切ったソーセージ(2本)と、
軽く塩コショウした豚もも薄切り(2枚)を入れ、
ソースにも肉の味を加えます。
肉類に火がとおったら、
ローリエと一緒に取り出します。
ソースはミキサーやフードプロセッサーなどにかけたり、
ザルでこしてなめらかにします。
これでソースが完成。
次にパン(2枚)を軽くトーストし、
パンの上に好きなだけハムを並べ、
好みのソーセージを並べ、
薄切りモモ肉を並べ、
パンで挟み、
スライスチーズ(4枚)で四方をカバーします。
こんなふうに、半分ずつひっかける感じで重ねます。
チーズでカバーしたら
トースターやオーブンで軽く温めてチーズをやわらかくし、
その間に目玉焼きを作ります。
黄身はとろっとさせたいので、火を完全に通さないように注意。
目玉焼きは好みなので、いらない人は飛ばして仕上げになります。
オーブンでチーズがやわらかくなったら皿に移し、
目玉焼きをオン。
その上から温めたソース(2食分)の半量をたっぷりかけてできあがり。
「フランセジーニャ」にはフライドポテトを添えるのがお決まりです。
ますます盛り上がるB級感!
冷えたビールも欠かせません。
ナイフを入れてざっくりと切ってみると、
こんな感じ。
目玉焼きの黄身がトロッとこぼれて、
ソースともよく合います。
そうそう、この全く洒落っ気のないB級料理を、
ポルトガルの人達はナイフとフォークで
意外なまでにキレイにスマートに食べるんです。
切り方にもいろんなこだわりがあって、
まわりから切ってまん中を最後に残す人もいるし、
まん中からばっさり切る人もいる。
ヨーロピアンのB級スタイルも、奥が深いですなあ。
それからこのサンドイッチは
ソーセージやハムが味の大きな要素でもあるので、
専門店でこだわり系のおいしいものを調達すれば
より本格的なものができます。
ポルトガルのクレイジーサンドイッチで、
食欲の秋をさらに楽しく!