梅雨のジメジメを吹っ飛ばす「チキンピリピリ」[第19回]

バダさんの人気レシピ連載は、前回に続いて肉料理! その名も「チキンピリピリ」。「ピリピリ」なんてかわいい名前だなあなんて思うかもしれませんが、なんとこれはポルトガル語。このじめっとした梅雨の空気を忘れさせてくれる、ピリッと辛い鶏肉料理です。これからの季節、バーベキューなんかにもぴったりなこのレシピ。ぜひ参考にしてくださいね!

みなさんこんにちは!
初夏ですねー。
あちこちで咲く紫陽花が、色鮮やかですねー。
仕事終わりのビールが、のどに心地いいですねー。
ああ、今日も早く仕事を終わらせて、
プシュッ、プハーッってしたい!

私が住む東京下町では、先週末地元の神社で恒例のお祭りがありました。
お神輿や山車が路地を賑やかに練り歩いて、
見物客も盛り上がっていました。
毎年のことなんですが、
祭りの日に人が大勢集まっているのを見ると、
地域にはこんなに人が住んでいるのね、とびっくりします。
この数年で近隣にはマンションも増えたし、
さらに住む人が増えているんだろうなあ。
祭りって、町の活力のバロメーターみたいなものですね。
もちろん賑わっている方が、見ている方も楽しい!

太鼓のドンドントッカラカンという音が聞こえてくると
妙にソワソワ落ち着かなくなり、
ピッピッと響く笛の音や担ぎ手の揃った掛け声を聞くだびに、
えっ、どこどこ、お神輿どこ、とキョロキョロ。
きりっと半纏姿の旦那衆がお神輿を担ぐ様子や、
神社の露店で買ったかき氷や焼きそばを
うれしそうに食べている子どもたちを眺めながら、
夏はもう始まっているんだなあとしみじみ。

と、私の周辺の夏の始まり報告でしたが、
肝心の暑さはまだまだ序の口。
いまはそれよりも、ジメジメが先行中です。
こんな梅雨時は、
ピリッと刺激のある辛いものが食べたくなりません?
私はピリピリフードを泡でサーッと胃袋に流し込みたい!

ひとくちに辛いものと言っても、いろんな辛さがありますよね。
たとえば和の辛さなら、
すっきり清々しいわさびに、風味豊かな練りがらし、
生のネギのしゃきっとした辛さ、大根おろしののどがかーっと熱くなる辛さ。
まっすぐ辛い一味唐辛子に、7種の風味と刺激が香る七味唐辛子。

海外に目を向けると、辛さのバリエはさらに多様。
豊富な香辛料を組み合わせて複雑なうまみを引き出すインド中東のカレー系、
発酵キムチの辛みや酸味、唐辛子使いが特徴的な韓国・中国四川系、
ハーブや柑橘系を巧みにミックスする、清涼感たっぷりの東南アジア系と、
イメージするだけでも
その辛さの豊かさに料理好きの心は躍ります。

じゃあ、私の好きなポルトガルはどうなのかと言いますと……
辛い料理、あります!
名付けて「チキンピリピリ」

ポルトガルでは
「Frango Assado com Piri-Piri(フランゴ アッサード コン ピリピリ)」
という名で親しまれているもので、
炭火などで焼いた鶏に辛いソースをかけたもの。

これ、食堂やレストランというよりは、
祭りの出店やテイクアウト店で見かけることの多い
ファストフード的なメニューです。
たとえば祭りでは、こんな感じで。

おじさん(や、お兄さん?)が、鶏も豚も黙々と炭火で焼いています。

同じイベント会場では、
巨大なグリルマシーンでドーンと鶏を焼く店もあり。

見よ!この豪快なグリルっぷりを!
周囲にはものすごくジューシーな香りが漂っていて、
みんなふらふらと、香りのする肉の方へと店に引き寄せられていました。

ちなみにポルトガルでは、
鶏は丸ごと1羽を料理するのがほとんど。
スーパーでも、内臓を処理した(レバーや砂肝は洗って小袋に詰め、鶏に戻し入れる)
まるごと1羽がずらりと並んでいます。

そして肝心のピリピリがこちら。

ピリピリは、作る人の数だけレシピがあります。
必ず入っているのは唐辛子と塩。
あとはオイルにニンニク、ワインビネガー、パプリカ、ワインやウイスキー、
レモン、こしょうなどバリエは無限です。
見つけてレシピを聞くたびに、「うちのピリピリはほかと違うよ」と
みんなマイピリピリに誇りを持っていました。

そういえば、辛いソースをピリピリというのは、
日本語の表現と似ていて面白いですよね。
ポルトガル語でピリピリと言えば、唐辛子を使った香辛料のこと。
オイル系も粉末も、唐辛子そのものも全部まとめてピリピリです。

私の勝手な推測ですが、
ワインやパンやてんぷらを日本に伝えた470年前のポルトガル人が
唐辛子を紹介したときに、

ポル人:(唐辛子を指さして)「ピリピリ!」
日本人:(唐辛子をかじって)「こりゃ辛い!ピリピリ辛い!」

こんな会話を繰り返して、
やがていつの間にか「ピリピリする」「ピリッと辛い」の表現が
日本に定着したんじゃあないかなあ。
ちなみにポルトガル語で「辛い」は「picante(ピカンテ)」です。

さ、話がちょっと長くなりましたが、
ポルトガルのファストフード
「チキンピリピリ」、作っていきましょう!
今回もレシピはすごく簡単です。
料理に慣れていなくても心配ご無用、
前回おすすめしたワインビネガーも、ちゃんと使います
(でも、今回は代用品でもなんとかなっちゃう)。

ちなみに、この「チキンピリピリ」はバーベキューなどにもぴったり。
前日に仕込んで持っていけば当日は焼くだけでOKです。
きっとみんなに喜ばれますよ!!

「チキンピリピリ」の材料はこちら。

材料は2人分です。

  • 鶏手羽先 4~5本


ピリピリソース

  • にんにく 1片
  • オリーブオイル 大さじ2
  • 唐辛子1本
  • 一味唐辛子(粉唐辛子)大さじ1/2
  • 白ワインビネガー 大さじ1(なければ酢)
  • パプリカパウダー 小さじ1
  • 塩、粗挽き黒こしょう 各適宜


すみません!うっかりイタリアンパセリを添えて撮ってしまいましたが、
今回は必要ナシでした。梅雨ぼけです(言い訳です)。

鶏の手羽先はさっと洗ってしっかり水気を拭き、
身の方の骨に添った部分に縦に包丁を入れます。
こうすると、肉に味が入りやすく火のとおりも早くなります。

皮目の部分はフォークで刺してところどころ穴をあけ、
味のしみ込みをよくします。

下処理したら、
鶏を並べられる長さに切ったラップを2枚用意。
1枚を敷いて鶏手羽先を並べ、両面に塩、粗挽き黒こしょうを
まんべんなくふって下味をつけ、5分ほど置きます。

その間にピリピリを作ります。

ボウルにすりおろしたにんにく、刻んだ唐辛子、一味唐辛子(粉唐辛子)、
白ワインビネガー(なければ酢)、パプリカパウダーを加えてよく混ぜ、
オリーブオイルを少しずつ加えて全体をよく混ぜます。

しっかり混ざったら、
鶏にピリピリを塗っていきます。
小さめのスプーンですくって、
鶏の表面にペタペタしてください。
皮にたっぷり塗るとおいしそうなイメージですが、
むしろ身の方に多めに塗ると、
肉全体に味がよくしみておすすめ。
切り込みを入れた部分や、手羽の先の細いところも塗り忘れなきよう。

全部塗ったらラップを上から1枚重ね、
端を折り込んで全体をぴっちり包みます。
このまま冷蔵庫で最低30分はおいて味をしみこませましょう。
ひと晩おいて翌日焼いてもいいぐらいです。

鶏に味が入ったら、焼きます。
今回は皮をカリッと焼くのに便利な魚焼きグリルで焼きますが、
もちろんフライパンでも大丈夫。
その場合、フライパンに薄く油をひいて熱してから、
皮目を下に並べて焼いてくださいね。

魚焼きグリルに網をのせ、鶏手羽先の皮目を上に並べて
中火と強火の間位の火力で皮目を7~8分
(フライパンの場合、焦げやすいので途中で皮の焼き加減をチェック)、
こんがり焼けたら返して反対側を3~4分焼きます。
グリルで焼いていると下の受け皿に鶏の余分な脂が落ちるので、
アルミ箔などをしいておくと後でグリルの掃除がラクです。

さ、鶏がこんがり焼けました。
皿に盛って、ほんのり甘いにんじんサラダのキャロットラペや葉野菜などを添えて、
はいできあがり。

この「チキンピリピリ」は、断然手づかみをお勧めします。
パリッパリの皮にかぶりついて、
ムシャムシャ豪快に食べちゃって下さい。
なんだか、ひとりで5本ぐらいいけちゃいそうだなあ、
これってもしかして1人前かも?

鶏に味をじっくりしみこませている“時間”がおいしくしてくれるから、
誰が作ってもおいしくできます。
このピリピリソースが気に入ったなら、
鶏以外にも豚肉や海老などにも合いますので、
ぜひアレンジを楽しんでください。


「チキンピリピリ」に添えているワインは、
ポルトガル北部産のヴィーニョヴェルデの白
「ヴィア ラティーナ」
です。

ショワショワと微発泡のやわらかい泡が
辛いピリピリをサッと流し、お口をリフレッシュしてくれます。
味わいは、きりっと辛口で爽やか。
ポルトガルの土着品種である
ロウレイロ、トラジャドゥーラ、ペデルナンのブレンドです。

しっかり冷やして味わえば、
梅雨のジメジメをしばし忘れさせてくれますよ。

このワインの扱いは
「メルカード・ポルトガル」
です。

近くバーベキューなどをご予定の方は、
前日に仕込んだ「チキンピリピリ」とこのワインを持って行って、
ぜひ人気者になっちゃってください!
いやー、それっていい週末だなー。

来週は、野菜がうまいおつまみ系にしようかなー。
今回つけ合わせにした、
ほんのり甘いキャロットラペや、
ほかにもなじみの野菜を使った簡単つまみをご紹介予定です。

前回ワインビネガーを買われた方、
次回もまだまだビネガーが活躍しますよー。
お楽しみに!

ケイクス

この連載について

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ポルトガル食堂

馬田草織

ポルトガルや南蛮絡みのエピソードが大好きな編集者・ライターの馬田草織さんが、仕事現場や旅先、日常で気になった食のサムシングと、それにちなむおつまみ&ぴったりなお酒を月替わりでご紹介していく、家飲みも外飲みも楽しむ人へ捧げる至福のほろ酔...もっと読む

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    droit_francais 作った。見栄えは我ながら完璧にできたけど下準備で塩を振り過ぎて、味がくどくなってしまった。次回リベンジ待ちの一品。 https://t.co/FOoDxlcxzQ http://t.co/O4X957DY8k 5年弱前 replyretweetfavorite

    ota_pot 【第19回】 6年以上前 replyretweetfavorite

    sadaaki ううう。こんな時間にこれを読んだらビールを飲む以外なくなります。絶賛オフィスなうですが。/【第19回】 6年以上前 replyretweetfavorite

    STMK 簡単で美味しそう。今度作る。→ 【第19回】 6年以上前 replyretweetfavorite