酸味がうまみを引き立てる「ポークソテー&ポテト」![第18回]

ポルトガル料理をベースに、簡単なレシピで、ビックリするくらいのおいしさが詰まっているバダさんのレシピ連載。今回のポイントは、ワインビネガー。料理好きじゃないと、ちょっと敬遠しがちな調味料ですが、実はものすごく料理のおいしさを際立たせてくれる便利なアイテムなんです。騙されたと思って、このワインビネガーを使ったレシピ一度試してみてください!

みなさんこんにちは!

初夏の風が気持ちいい、
過ごしやすい毎日ですね。
もうすっかりTシャツライフでしょうか。

女性の立場では、
日々のサンダル率が高まったら、
もう初夏とみなせるような気がします。
私もこの頃はほぼサンダル+デニムか
サンダル+ワンピース。
初夏の解放感を足元から感じて、
気分はすっかり夏で心もアクティブモード。
となると食欲も沸いてきて、
あー、肉食べたい! って思うこと、増えません?
やたらと焼き肉を食べに行きたくなったりしませんか?

仕事終わりなら、
冷たい生ビール&焼き肉、もしくは焼き鳥、
休日なら、公園やキャンプ場で缶ビール&BBQが
私の肉ライフの理想ですが、
平日夜の家ごはんでも肉はちゃんと楽しめます。
しかも家ごはんなら、安い!

自分で作るなら豚か鶏料理が多い私ですが、
より“肉食べた感”が強いのは豚かなあ。
ということで、今日はビールやワインにも合う
「ポルトガル風ポークソテー&ポテト」をご紹介します。
はい、こちらです。

一見、とくに変わった様子のないポークソテー。
だから、
どこがポルトガル風なのか気になりますよね。
それはずばり、ワインビネガー使いです。

ワインビネガーは名のごとくワインからできた酢。
フランス語でワインビネガーはVinaigreですが、
分解すると「酸っぱい(aigre)ワイン(Vin)」です。

おや、いまどこからかつぶやきが聞こえてきました。
「ワインビネガーって何? 普通の米酢しかないけど、ダメ?」
そうですよね、
料理好きでもない限りなかなか買わないですよね、ワインビネガー。
ちょっと気取った酢、みたいなイメージ?

結論から言うとですね、
ワインビネガーと米酢は風味が全く違います。
たとえば、お米からつくられる日本酒とぶどうからつくられるワインは、
同じお酒でも味わいや香りがかなり違いますよね。
酢も同じなんです。

今回は、ポークソテーとカリッと焼いたポテトに
ワインに含まれるぶどう独特の“うま味”を
これでもかとプラスしたい。
ですからお手持ちの酢ではなく、
できればぜひワインビネガーの小瓶を1本買っていただきたい!

私の場合、近所の「オオゼキ」というスーパーで売っている
ペルシュロンというフランス産の白ワインビネガーをよく使います。
なんでこれかというととくにこだわりではなく、
「オオゼキ」さんのワインビネガーの定番銘柄だから。
250mlで300円台。
そんなに高くないでしょう?

余談ですが、新潟の「カーブドッチ」
というワイナリーで作るワインビネガー、
これはすごく印象に残っています。
濃くてワインの風味も豊かで、サラダはもちろん、煮たり焼いたりと
料理にもじゃんじゃん使っていました。
もしもこのワイナリーを訪ねることがあったら
(通販していればいいのですが、Amazonでは現在扱っていないみたい)
ぜひ試して欲しいです。

ちなみにワインビネガーの種類は、赤、白、シャンパンなどがあります。
ほかにもシェリー酒のビネガーや、
ビールやウイスキーの原料でもある麦芽で作られるモルトビネガー、
りんごやラズベリーなどの果実のビネガーもあります。
キリがないのでビネガー話はこの辺にしておきますが、
今回は白ワインビネガーを使います。

さて、ワインのおいしい国に行くと、
当然ワインビネガーもおいしいし種類も豊富。
土地ごとに風味の違うワインビネガーがあり、
もちろん料理にもたくさん使われています。
日本でも米酢は和食に欠かせないのと一緒ですね。

そしてポルトガル料理もワインビネガー使いが巧み。
サラダなどで直接ふりかけるほか、
煮ものや焼きもの、揚げものにスープの隠し味など、
いろんな使い方がされています。

ワインビネガーは加熱すると
酸味が穏やかになりワインのうまみが凝縮して
おいしいソースに早変わりするから、
一度使うとやめられません。

そうそう、
私はポルトガルを取材中に、
ワインビネガーに衝撃を受けたことがありました。

ホームステイ先のマリアおばさんに習ったじゃがいものビネガー炒め
「batatas aquecidas(バタータシュ・アケシーダシュ)」を食べたとき。

じゃがいもがたくさん取れるマリアさんの田舎の料理で、
オリーブ油で素揚げしたじゃがいもに、
むせかえるほどたっぷりの白ワインビネガーを加えてさっとからめ、
別に作った目玉焼きの黄身をソース代わりにして
じゃがいもに絡めながら食べるというもの。

うま味に変わったビネガーで
じゃがいもがいくつでも食べられるし、ワインも進む。
目玉焼きの黄身のソースのまろやかさもピッタリでした。

今回の「ポルトガル風ポークソテー&ポテト」は、
このマリアおばさんのじゃがいものワインビネガー炒めをベースに、
作りやすいレシピを考えました。

では早速作っていきましょう、
材料はこちら。

材料は2人分です。

  • 豚ロース肉(とんかつ用) 2枚
  • じゃがいも 2個
  • にんにく 2片
  • オリーブオイル 大さじ1
  • 白ワインビネガー 大さじ4~6(好みで加減)
  • 塩、こしょう 各適宜


白ワインビネガーの方が仕上がりがさっぱりした印象ですが、
赤ワインビネガーでも構いません。

じゃがいもは皮をむき、
2㎝角ぐらいの小さめのひと口大に切っておきます。
ひと口でパクッと食べられるぐらいがいいですね。

にんにくは薄い輪切りにします。
中の芽の部分は飛び出して焦げやすいので、
箸の先などで押して取り除きます。

ワインビネガーは、あらかじめ使う分を小皿などに入れて用意します。
瓶のままスタンバっていると、
いざ加えるときに分量がわからなかったりしてもたついて、
その間に肉やじゃがいもを焦がすことがあるからです。
段取りができていれば、
失敗の確率もグンと減ります。

豚肉は、焼いたときに丸く反り返って縮まないように
白い脂の部分と赤身の間の境の筋に切れ目を入れ(写真参照)、
さらに脂にも切れ目を入れて、
脂が溶けやすく塩も入りやすいようにします。

塩が足りないと味がぼやけておいしくないので、
全体にしっかりまぶします。
とくに脂部分はたっぷりめに。
このまま5分ほどおきます。

フライパンにオリーブ油とにんにくを入れ、
弱火でじっくり熱してにんにくチップを作ります。

にんにくがこんがり揚がったら、
ペーパーの上においてカリッと乾かします。

次にフライパンに残った油で豚肉とじゃがいもを焼きます。
焼く直前に豚肉にこしょうを挽き、
まず脇の脂の部分を下にして立て、強火で焼きます。

こんな感じ。
あ、この写真は私ひとりで撮影しているので
手を離して肉が立った瞬間に撮りましたが、
実際は菜箸や小さいトングなどで肉をしっかり持ちながら焼きます。
わざわざ肉を自立させる必要はありません。

最初に脂部分をカリッと焼けば食べるときに香ばしくておいしいし、
溶けだした豚の脂がオリーブ油に混ざって
後から加えるじゃがいもにもコクが出ます。

1分以上焼いて脂が好みの焼き加減になったら、
寝かせて中弱火にし、じゃがいもを加えます。

1~2分ほど(肉の厚みによる。焼き過ぎると硬くなるので注意)焼き、
いい焼き色がついたら肉を返します。

返したらさらに中弱火で1分ほど焼き、
豚肉だけを皿に取り出して
残りのじゃがいもを中火で2~3分ほどこんがり焼きます。
じゃがいもはこまめに焼けた面を返しながら、
全面を香ばしく焼きます。

じゃがいもがほぼ焼けたら塩をふり、
じゃがいもを寄せて先程の豚肉を隣に並べ、
中火にしてワインビネガーを一気に回しかけます。

酸っぱい煙がムワッと立って咳き込むかもしれませんが、
ちょっとガマン。
フライパンをゆすりながら、
肉とじゃがいも全体にまんべんなくビネガーを絡ませ、
スプーンですくって肉に直接かけましょう。
15秒ほどでまず豚肉を皿に取り、
さらにフライパンをゆすりながら、
じゃがいもを1~2分ほど炒めてビネガーをしっかり絡めます。

じゃがいもの表面に照りが出て、
つやっとしてきたらできあがり。
豚肉の横に盛りましょう。
まだビネガーソースがフライパンに残っていたら、
スプーンですくって肉にかけ、
にんにくチップをのせたら
はい、できあがり!

ワインビネガーのほのかな酸味と
たっぷりのうま味が肉とじゃがいもに加わって、
イメージよりずっと穏やかな仕上がり。
シンプルですが、いつものポークソテーに味の膨らみが出るはずです。
ビールにもワインにもぴったりですよ。

シンプルにビネガーだけを楽しんだら、
次はローズマリーなどのフレッシュハーブと一緒に焼いても、
香りが深まっておすすめです。


ちなみに、今回「ポルトガル風ポークソテー&ポテト」に合わせたワインはこれ。
「ポンテ・デ・リマ」
「ヴィーニョヴェルデ ティント」

ティントとはポルトガル語で赤の意。
赤の微発泡ワインは、
フランスのペティアンやイタリアのランブルスコあたりが有名ですが
ヨーロッパ全体で見てもとても珍しい存在です。
味わいはそれぞれですが、
私はいずれの赤の微発泡も、
日本人が好きなジャンルだと思うのです。

ぐぐっとグラスに寄ると、
ほら、微発泡のショワショワしたやさしい泡立ちがわかりますよね。

赤ブドウのコクや味わいがありながら、
微発泡の泡がタンニンをやわらかく感じさせてくれますし、
とくにこのヴィーニョヴェルデはアルコール度数が10.5%だから
ワインにしては軽めで飲みやすい。

実はヴィーニョヴェルデの赤という存在は
ポルトガル国内でもまだあまり知られていないそうで、
つい最近になってから流通に乗って、
地元生産者だけでなく
他の地域や他国の人も飲めるようになったのだそうです。

このワインは
ヴィニャオン、ボラッサル、エシュパデイロといった
ポルトガルの土着品種ぶどうが使われていて、
決して軽い味わいではありません。
ベリー系の香りとぶどうのうま味も感じられつつ、酸味もあります。
だから、ワインビネガーを味のポイントにしたポークソテーとも相性良し。

お値段はカジュアルな1200円。
ね、試してみたくなりませんか?
こちらで購入できます。

「ポルトガルワインの崖の上」

さーて、次回は何にしようかな。
せっかくだから、ワインビネガーを買った人のために、
もうひとつビネガー料理をご紹介してもいいですね。

ショワショワのヴィーニョヴェルデを飲みながら、
じっくり考えようっと!

ケイクス

この連載について

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ポルトガル食堂

馬田草織

ポルトガルや南蛮絡みのエピソードが大好きな編集者・ライターの馬田草織さんが、仕事現場や旅先、日常で気になった食のサムシングと、それにちなむおつまみ&ぴったりなお酒を月替わりでご紹介していく、家飲みも外飲みも楽しむ人へ捧げる至福のほろ酔...もっと読む

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    droit_francais 作った。むちゃくちゃ時間かかったしジャガイモもほんの少し「ガリッ」とした食感が残ってしまったけど、それでもおいしくできた。 https://t.co/eXZu4vUqir 5年弱前 replyretweetfavorite

    ohta_tomoaki ビールに鉄板→“@beer_can_jp: ” 5年以上前 replyretweetfavorite

    yotaropg 2回目の挑戦。・・・ちょうおいしい。豚の甘みとワインビネガーの 6年以上前 replyretweetfavorite

    fukayatsu これ作るかな > 【第18回】 6年以上前 replyretweetfavorite