ハフッ! ゴクッ! とお酒にぴったりのピポグラタン[第6回]

明日から三連休! お休みの日にあれしようこれしよう考える前に、まずは今夜のお酒をどうしましょう。もちろん今回も、お酒にぴったりの最高のおつまみをご紹介します。ポルトガルでは定番の「ピポグラタン」とはどんな料理でしょうか? くれぐれも深酒にはご注意を。

みなさんこんにちは!
めっきり寒くなってきましたね。
グツグツの鍋とか、
フーフーの麺とか、
そんなあったかフードが嬉しい冬が、そろそろはじまりますね。

さて、今日はそんな寒い季節に食べたい
あったかい簡単つまみをご紹介。
材料の主役はこの季節に安くておいしい鱈、そう、たらです。
切り身は1枚から売っていて買いやすいし、
骨も大きめだから魚初心者でも扱いが簡単。

たらといえば、日本人なら真っ先に浮かぶのは「たらちり」でしょうか。
長ねぎや豆腐、春菊なんかと昆布だしでコトコト煮たら、
ポン酢とゆずこしょうでハフッと食べたい。
冷えた日本酒とか、いいですね。
締めはご飯? 麺? 
細くてこしのある稲庭うどんを入れてツルツルっと。
ああ、いいなあ。

でもでも、今日は鍋のレシピではありません。
今日のおつまみは何かといいますと、
はいこちら。
あつあつをハフッと食べたい!
「たらとじゃがいものピポグラタン」です。

ピポグラタン?
なにそれ?
ねえ、ちょっとへんてこな名前ですよね。
でもですね、ポルトガルにあるんですよ。
しかも、つまみにばっちりです。
たらのうま味が効いているんですから!

これはもともと干しだら(バカリャウ)を使って作るポルトガルの定番料理で
「Bacalhau a Ze do Pipo(バカリャウ・ア・ゼ・ド・ピポ)」というのが正式名称。
ゼ・ド・ピポというのは、
この料理を考えた有名レストランのオーナーのニックネーム。
料理名の訳は、ゼ・ド・ピポ風バカリャウ、といった感じです。
それにしても、ゼ・ド・ピポってどんな顔してたんだろう……気になります。

ところで、ポルトガルでは干しだらを非常によく食べます。
大きなたらを開きにした三角形のまま、
たっぷりの塩で漬けこんで、がちがちになるまで干しています。
日本の棒だらより脂分もあって何倍も厚みがあり、大きい。
実際売られている干しだらは、こんな形状です。

大量に扱う専門店などでは、
吊るさずにノートみたいに棚に重ねて売っています。
魚なのにノート扱い!? とびっくりしますが、
凶器になるぐらいがちがちに硬いので
重ねたってどうってことないんですね。

カチカチに硬い干しだらは、数日かけて水に浸し、ゆっくり戻します。
戻し過ぎると塩気もうま味も抜けてばさばさした鱈になってしまうから、
結構繊細な作業なんですよね。
私が以前ホームステイしたマリアの家でも、
こんな風に戻した身を細かくほぐして使っていました。

この干し鱈を使った料理のバリエーションは
焼く、揚げる、煮る、炒めると数えきれません。
グラタン、サラダ、コロッケ、かき揚げと何にでもなる。
ポルトガルでは365日毎日食べてもレシピがつきないと言われていて、
実際1000以上のレシピがあると言われています。

そのなかでもこのピポグラタンは定番料理で
レストランや家庭にはそれぞれのレシピがありますが、
絶対に欠かせないのは
たら(本当は干しだらですが、甘塩のたらでも大丈夫)、
牛乳、
じゃがいも、
マヨネーズの4つ。

今回はこの基本素材をいかして、簡単なレシピにしました。
たらのだしが効いたじゃがいもは、
うまみの掛け算でぐぐっと味が濃くなるから、
適当につくってもなかなかの味に仕上がります。
しかも、香ばしく焼けたチーズと隠し味のマヨネーズの酸味がいい仕事をするので、
お酒によく合うんですよ~。

合わせたいのは、少しふくよかで酸味もある白ワインかな。
軽めの赤ワインでもいいですね。
ビール? もちろん合いますとも!
できたてのアツアツを、
ゴクっとビールで流しこんじゃってください。

では早速、
「たらとじゃがいものピポグラタン」をつくりましょう!

材料はこちらです。
(直径16㎝の浅いグラタン皿1枚分。2人でならつまみ、1人ならおかずのサイズ)

  • たら 切り身1枚
  • じゃがいも 2個
  • 牛乳 150㏄ぐらい
  • チーズ(溶けるタイプ)大さじ3
  • マヨネーズ、塩、こしょう 適宜

じゃがいもは皮つきのまま洗って、ひたひたの水から鍋でゆでます。
竹ぐしや、なければ先の細い箸などで刺して、中まですっと通ればゆで上がり。
電子レンジなら1個ずつラップでくるみ、
600Wで3分~4分加熱し、1~2分蒸らして様子をみてください。

ゆで上がったら熱いうちに皮をむき、
ボウルに入れて粗めにつぶします。

たらは、買ってきたらさっと洗って水気を拭き、
フライパンに入れて牛乳を加え、ふたをして中火で加熱。
時間があるときは、たらを5分ぐらい浸してから火にかけてください。
それから、牛乳はすぐ沸いて吹きこぼれるのでくれぐれも注意してくださいね。

フライパンの場合は、牛乳がフツフツと沸くまでふたをして中火で2~3分、
沸いてきたら、ふたをずらして弱火で2~3分加熱し、
火を止めそのまま粗熱を取ります。
たらのうま味が移った牛乳は、じゃがいもに加えるのでそのままに。
捨てちゃダメですよ!
そして、こちらも電子レンジでもできます。
耐熱皿にたらを入れて牛乳を加え、ラップをふんわりかぶせて600Wなら1分半ぐらい、
様子をみてひっくり返し、熱のとおりが足りなかったら時間をプラスしてください。
また、レンジだと牛乳はさらにブワーッと沸きやすいです。
注意しましょう。

たらに火が通ったら、皮と骨を取り除き身をほぐします。
身がやわらかいので、気持ち良いほど簡単にほぐれますよ。

ほぐしたら、つぶしたじゃがいもに加えて混ぜます。

このとき、さきほどのたらのうま味入り牛乳も少しずつ加えます。
混ぜたら味をみて、塩、コショウを加えてととのえましょう。

コショウをばっちり効かせると、
かなりつまみっぽい仕上がりになります。
でも、私はあえてコショウを入れないでつくるのが好き。
たらのやさしいうま味がストレートに味わえます。

全体をよく混ぜたら、器に移しましょう。
なるべく浅めの器に、薄く敷くことをお勧めします。
その方が中まであたたまるのも早いし、
上にのるチーズのカリカリと具の割合も、
薄い方がよりつまみっぽく楽しめます。

平らにならしたら、ここで隠し味にマヨネーズをかけます。

こんな感じ。
マヨネーズは、ベースのじゃがいもに混ぜてしまうと
食べたときに酸味がたちませんから、
こうして上からかけましょう。

ピポさんのレシピが広まった理由のひとつは、
きっとこのマヨネーズの酸味にあったんだと思います。

そして、上からチーズを散らします。
好きなだけたっぷりどうぞ!

あとはオーブンかトースターで、
おいしそうな焦げ目がつくまで焼きます。
私は220℃のオーブンで15分焼きました。
トースターだと、きっともっと早く出来上がると思います。

ささ、焼いている間に台所をかたずけて、テーブルには飲み物を用意しましょう。
私はポルトガルの白ワインを開けようかな。

チーン!
焼けました。
チーズがフツフツして、いい眺めです。

白をグラスに注いで、と。
ちなみにこの白はポルトガル・テージョ地方の「カポエイラ」。
ソーヴィニョン・ブランと土着種フェルナン・ピレスを合わせていて、
魚料理によく合いますよ。

このワインは、こちらのお店で買えます。
「ポルトガルワイン崖の上」

では、いただきます!

ハフッ!
ゴクッ!
幸せっ!

あなたも週末にぜひ!

ケイクス

この連載について

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ポルトガル食堂

馬田草織

ポルトガルや南蛮絡みのエピソードが大好きな編集者・ライターの馬田草織さんが、仕事現場や旅先、日常で気になった食のサムシングと、それにちなむおつまみ&ぴったりなお酒を月替わりでご紹介していく、家飲みも外飲みも楽しむ人へ捧げる至福のほろ酔...もっと読む

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