スープの旨味とプリッとした自家製鶏団子の「柚子胡椒鶏団子鍋」

前回に引き続き、このさむ~い季節にピッタリの鍋料理をご紹介します! ポン酢や醬油がなくてもしっかりした味の付いたスープと、隠し味に柚子胡椒の聞いた鶏団子がプリッとおいしい「柚子胡椒鶏団子鍋」。簡単でとってもうまみたっぷりの鍋料理、ぜひおためしください!

cakes読者のみなさま、こんにちは。

まだまだ寒い2月。今日は鍋にしよっかな、と考えるとき、ときどき思い出すのはかつて仕事をした、某女性誌の30代男子編集者A君。冬の号で一緒に鍋特集を担当することになり打ち合わせを始めると、「僕、鍋って好きじゃないんですよね」と、極めてテンション低めな様子。よくよく話を聞くと、どうやらA君の実家では、鍋と言えば問答無用でポン酢が登場していたそう。豚肉も鶏肉も白身魚も、白菜も大根もねぎも豆腐も、締めのうどんや雑炊まで、何もかも全部ポン酢。だから、彼にとって鍋=ポン酢味。ポン酢味の鍋しか知らないから、鍋が嫌いというわけ。

確かに、昔は水炊き+ポン酢の方程式ってあったよね、それってもしや、A君の家だけじゃないんじゃないのではとリサーチしてみたら、出てくる出てくる、ポン酢の悲しめ思い出エピソード。具を入れているとだんだんポン酢が薄まってくるあの味がいやだったとか、味に飽きて、子供ながらに勝手にしょうゆ味にして抵抗してたとか。そんな話を聞いた結果、その鍋特集は、味噌や豆乳、カレー風味やトマトスープ仕立てなど、ポン酢を一切必要としない鍋で構成し、ポン酢の呪いにかかっていたA君も、晴れてポン酢に依存しない鍋とたくさん出会うことができたのでした。ポン酢は決して悪くないんだけど、やっぱりそれだけじゃ飽きるってことですよね。

わが家の鍋はというと、前回の納豆鍋のように、主役は具よりむしろスープ。スープをごくごく飲みながら具を食べる感じです。だからポン酢の出番はありません。とくに鶏のだしが好きなので、ぶつ切りの骨付き鶏や手羽先と昆布で、うま味たっぷりのだしを作ります。もちろん煮た鶏はおいしい具でもあります。時間がなければ、鶏がらスープの素を使ったっていい。

そして、鶏鍋に欠かせないのが自家製鶏団子。鶏もものひき肉と刻んだねぎ、しいたけをたっぷり混ぜた、プリッとした食感の団子です。隠し味には柚子胡椒と黒こしょうを入れ、それだけでスパイシーな団子にします。そう、たれじゃなくて、具やスープにばっちり味をつけておくんです。鶏団子は一度にたくさん作って冷凍しておけば、家に帰ってすぐに鍋が食べられる。疲れて帰った時なんて、自分で作っておいた冷凍鶏団子にマジ感謝です。この冬も何度作ったことか。一緒に煮る具はシンプルに、たとえばレタスと絹ごし豆腐ぐらいの潔さがいい。あれもこれもと具をごちゃごちゃ入れると、結局寄せ鍋っぽくなるのでやめましょう。

締めはうどんや雑炊はもちろん、ラーメンもいけます。鶏団子に加えるしいたけを干ししいたけにすると、味に深みが出ます。さらに、きくらげを細かく刻んで入れると、団子の食感が面白くなりますよ。時間があるときはぜひ試してみてください。

では、パパッと作っていきましょう。

Menu do dia 本日のメニュー

「柚子胡椒鶏団子鍋」

材料
鶏団子約20個分
鶏ももひき肉 300g
ねぎ(白と青い部分)1本
しいたけ 4~5枚
しょうが 1片
しょうゆ 大さじ1
柚子胡椒 小さじ1
日本酒 大さじ1/2
ごま油 適量
塩 適量
黒胡椒 適量

鍋のだし(3~4人分)
 鶏骨付きもも肉や鶏手羽先 500g(なければ無添加鶏がらスープの素 大さじ4)
 水1~1.5L(鍋の大きさによる)
 昆布(10×10㎝) 1枚
 塩 適量
 鍋の具
 レタス、絹ごし豆腐、麺、ご飯など 各適宜

つくり方

ねぎとしいたけはみじん切りにする。しょうがはすりおろす。

ボウルにひき肉、しょうが、しいたけ、ねぎ、塩、粗びき黒こしょう、しょうゆを加え、よく混ぜる。

全体がよく混ざり、なめらかになってきたら

柚子胡椒を日本酒でよく溶かし

鶏団子のタネに加えてさらによく混ぜる。

全体が混ざったら、スプーン2本ですくって成形し、つみれを作る。その日食べない分は保存容器に並べてラップをかぶせ、冷凍する。

鶏手羽先や鶏の骨付きぶつ切りでだしを取る。骨からだしがでるので、骨付きを使うこと。あらかじめ肉の表面に熱湯を回しかけ、冷たい水で洗っておくと、表面の汚れやくさみ、余分な脂などが落ち、あくの量も減っていいスープが取れる。

鍋に洗った鶏肉と昆布を入れて水から火にかけ、沸騰したら火を弱めて10分以上煮てだしを取る。時間がなければ鶏がらスープの素を使っても。

スープができたら鶏団子を食べる分だけ入れ、5分ほどしっかり煮る(今回は小鍋で紹介しているので、骨付き鶏肉や手羽先はいったん取り出していますが、大鍋で作るときは、鶏肉も入れたまま一緒に煮てください)。

鶏団子が煮えたら、スープの味をみて塩で調え、レタス、豆腐などの具材を加えて再度温め、仕上げにごま油をまわしかけて香りづけし、完成。

鶏団子からもいいだしがでるので、終わりの方は結構濃いめの味になっています。鶏団子はすでにスパイシーですが、麺や雑炊で〆るときに、追い柚子胡椒や追い黒胡椒で風味を加えてもいいと思います。スープはさっぱりしてるけれど鶏の味がしっかりだから、ポン酢は要りません。ポン酢がクセになっている人も、一度ポン酢から離れてみることをお勧めします。

今回この料理に合わせたワインはこちら。ポルトガル北部のミーニョ地方、リマ川を見下ろすビオディナミ畑のパラダイスで、オーガニックなワイン造りに魂を込めている醸造家ヴァスコ・クロフトの「ファウヌス ロウレイロ」。アンフォラ(ポルトガル語ではターリャ)という、紀元前からワイン造りに使われている、素焼きの壺で醸した白です。

https://www.eurovin.co.jp/details/kip306.html

このワインはとにかくユニーク。味を人に例えるのはヘンかもしれませんが、色々な要素を含んだ、一筋縄ではいかない洒落てて面白い人、というイメージ。ややスモーキーな風味、複雑なうま味の重なり方は、日本人ならだしっぽさをも連想させられます。余韻や味わいがとても深く、軽い渋み、うま味に近い酸味もあり、鶏団子に入れた柚子胡椒のフレーバーとよく合います。ポルトガル土着品種のロウレイロというぶどうが持つ柑橘っぽい華やかな香りもあり、しかも抜栓して1日目、2日目、3日目でぐんぐん味わいが変化します。ワインって、瓶詰め後も生きてるんだということを強く感じることができます。ちなみにこれ、赤(厳密にはロゼ)もありますので、後々ご紹介したいと思います。

ラベルのイラストもワイン造りの工程がイラストで描かれてキュート。右端にアンフォラが描かれていますが、そこにmade without electricity,つまり、電力を使わずに生まれたワイン、というこだわりが記されています。ここまでくると、もはや哲学ですね。

それでは、あったかい柚子胡椒鶏団子鍋と、複雑な余韻が楽しめるポルトガルの冷えた白で、良い週末を!

ケイクス

この連載について

初回を読む
ポルトガル食堂

馬田草織

ポルトガルや南蛮絡みのエピソードが大好きな編集者・ライターの馬田草織さんが、仕事現場や旅先、日常で気になった食のサムシングと、それにちなむおつまみ&ぴったりなお酒を月替わりでご紹介していく、家飲みも外飲みも楽しむ人へ捧げる至福のほろ酔...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

    コメント

    saoribada cakes(ケイクス)連載、更新しました。... https://t.co/uLz93LuuWq 約2年前 replyretweetfavorite