今しか食べられない旬素材を詰め込んだ「ほたるいかと菜の花のパスタ」

この時期だけスーパーや八百屋の店頭に並ぶ菜の花を使って、「菜の花とソーセージご飯」「菜の花の昆布〆」などの名レシピを紹介してきた馬田草織さん。今回も菜の花を使ったレシピですが、主役は菜の花ではなくほたるいか。こちらも今の時期しか食べられない素材、このレシピで旬の味を堪能しましょう。

cakes読者のみなさま、こんにちは。

ポカポカと暖かかったり、ぐっと冷え込んだり。まだまだ冬の尻尾が見え隠れする3月は、春の兆を見つけるたびに気持ちがふっと上向いてきます。昨日は仕事帰り、デパートの魚売り場で新物のほたるいかを目にしました。蛍烏賊(ほたるいか)は、俳句では春を表す季語。思わず、おお、そうだね、もう3月だし、とパックに入ったほたるいかを手に、ひとり頷いていました。

旬を迎えるこれからの時季、富山湾には数百万匹のほたるいかが押し寄せ、産卵のために闇夜に浮上しては海岸に打ち上げられ、それらが青白くほたるのように輝くのだそう。現地で取材したという友人の編集者が、その様子をかなり興奮気味に教えてくれたっけ。私も一度見に行ってみたいなあ、けどまてよ、深夜から早朝の海は寒そうだなあ。いや、いっそ、寝ずに呑みながら過ごせばいいのか。闇夜に光り輝くほたるいかの景色を酒の肴に、富山の地酒を呑むツアーとか、あったらいいなあ。と、ほたるいかを買って乗った帰りの電車の中で揺られながら、ぼんやり考えていました。

ということで、今回はほたるいか。ワインに合わせるなら、旬の菜の花と一緒ににんにくと唐辛子をきかせた気軽なパスタに。野菜も取れてつまみと主食も兼ねる、便利な初春の一皿です。

では、パパッと作っていきましょう。

Menu do dia 本日のメニュー

「ほたるいかと菜の花のパスタ」

材料 1皿分
ボイルほたるいか 60g
菜の花 1/2束
ショートパスタ 60g
にんにく 1片
赤唐辛子 1本
オリーブオイル 大さじ1
塩 適量
アンチョビ(あれば) 2切れ

おすすめしたい調味料、アンチョビ。ほたるいかのような海のものに、アンチョビのうま味と塩気を重ねると、奥行きのある味になるのでぜひ使って欲しいです。

つくり方

ほたるいかは、時間があれば両目や中骨、くちばし部分を取る下処理をすると、口当たりが格段に良くなって食べやすい。軽く洗って両脇の目を黒い部分ごとつまみ取る。足の付け根に隠れているくちばしは、軽く押し出してつまみ取る。軟骨は、三角形の耳のようなえんぺらの間に走る縦のラインの下にあるので(写真左、ひものように出ている部分が引き出し中の中骨。右は取り出したパーツと、下処理済みのほたるいか)、引っ張って取り出す。

鍋に湯を沸かしてを加え(分量外)、ペンネを袋の表示通りに茹でる。引き上げる30秒ぐらい前に食べやすく切った菜の花を加え、ペンネと一緒に引き上げて汁気を切る。茹で汁はソースに加えるので取っておく。

ペンネをゆでる間にソースを作る。
にんにくはみじん切りし、唐辛子は種を取ってちぎる。オリーブオイルを入れたフライパンに加え、ごく弱火でゆっくり温める。シュワシュワと音がして香りがしてきたら火を止める。アンチョビ2切れを加えて木べらでつぶしながら余熱で溶かし混ぜる。火にかけたままだとにんにくが焦げてしまうので注意。

アンチョビがなじんだら、パスタのゆで汁大さじ3を加え混ぜ、弱火にかけてソース状にし、ほたるいかを入れて軽く煮る。アンチョビを入れない場合は、ここで一度味をみて塩を強めに加える。

ほたるいかがふっくらし、ソースが煮詰まってきたらペンネ菜の花を加え、火を止めてソースとペンネをよく絡ませる。最後に味をみて塩で調える。

器に盛って完成。ほたるいかのぷりっとした食感や独特の味わい、菜の花のほろ苦さが、酒を呼ぶつまみになります。私はいつも、つい具だけ先につまんじゃう。パスタなしでももちろんいけます。

今回この料理に合わせたワインはこちら。
ポルトガル南部のアレンテージョ、その中でもの南のヴィディゲイラ地区で、テロワールの魅力を存分に発揮したオーガニックなぶどう造り、人工的な介在をできるだけしないワイン造りにこだわる、若手醸造家ペドロ・リベイロが手掛ける「ロシン アンフォラ ヴィーニョブランコ」

このワインを飲むと、ぶどうっていろんな味がするものなんだということを、改めて感じさせられます。アンタオンヴァズという土着品種を軸に、同じく土着品種のベルム、ラボ・デ・オヴェーリャ、マンテウードなど、初めて聞くような、ちょっと呪文のような響きの珍しい品種のぶどうをブレンド。手摘み収穫はもちろん、古代ローマ時代からワイン造りに使われていたという素焼きの壺アンフォラに入れて醸し、野生酵母で発酵させる昔ながらの製法。現代的な温度管理も一切なし、ボトル詰め前にフィルターでろ過することもないので、絞った自然がそのままボトルに注がれます。味の芯は幾重にも重なるぶどうのうま味と、醸されて複雑になったいろんな味わい。酸味、ほろ苦さ、じんわりくる風味。時間とともに変化する様子。華やか過ぎず、でもしっかりと広がる白ぶどうの香り。気が付いたらボトルが空いてしまうような飲みやすさです。ほたるいかのような繊細な味わいや、菜の花のほろ苦さともいいコンビネーション。ワイン自体に奥行きがあるので、ワインだけでもしみじみ楽しめます。

それでは、旬のほたるいかと菜の花パスタと、複雑に味わいが広がるアンフォラ仕込みの白で、良い週末を!

ケイクス

この連載について

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ポルトガル食堂

馬田草織

ポルトガルや南蛮絡みのエピソードが大好きな編集者・ライターの馬田草織さんが、仕事現場や旅先、日常で気になった食のサムシングと、それにちなむおつまみ&ぴったりなお酒を月替わりでご紹介していく、家飲みも外飲みも楽しむ人へ捧げる至福のほろ酔...もっと読む

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    コメント

    gohstofcain @yhaitai ペンネいいですよね。グラタンとかにもリメイクしやすいし。 私は普通のスパゲティ使うことがも多いんですけど、今回はこのレシピだったもので〜 https://t.co/gvO1mPz9QF 2年弱前 replyretweetfavorite

    konpyu かーっ これまたうまそ〜 約2年前 replyretweetfavorite

    saoribada cakes(ケイクス)連載、更新しました。これからが旬のほたるいかと菜の花で呑めるパスタ。... https://t.co/tHu30qFk9f 約2年前 replyretweetfavorite