cakes読者のみなさま、こんにちは。
春と言えば卵。朗らかなあの黄色は明るい陽射しにも似ているし、海外では、4月前後の移動祝祭日イースター(キリスト教の復活祭)に、復活の生命の象徴として欠かせないものでもあります。
ポルトガルの家庭料理を教えてもらいながらホームステイしていたとき、コインブラのマリアから教わったのが、スパニッシュオムレツ。ポルトガルなのになぜスペイン料理?と思いましたが「みんなよく作るし、私も大好きだから」と言われ、納得手前の微妙な気持ちでレシピをメモしました。
しかし、しかし。出来上がったそのオムレツの、しみじみしたうまさと言ったら、大袈裟だけど目を見張るほど。あれ、スパニッシュオムレツってこんなにおいしかったっけ、と驚きました。スペインでは、バルのタパス(つまみ)としても人気だし、家庭でもみんな作る大定番。なにしろ隣の国のポルトガル人も真似するぐらいです。卵とじゃがいも、玉ねぎさえあればすぐできるというシンプルさも、愛されている理由。日曜の昼下がり、冷蔵庫のあり合わせで作るチャーハン的な気軽さ。オリーブオイルでしっかり揚げて甘みがぐっと増したじゃがいもをたっぷり入れるのが最大のコツです。ワインに合わせるなら、ベーコンやハムを刻んで加えてもいいですね。でも、まずはシンプルな王道から試してみて下さい。
では、パパッと作っていきましょう。
Menu do dia 本日のメニュー
材料 直径18㎝1枚分
卵 4個
じゃがいも 中3個
玉ねぎ 1/4個
オリーブオイル 大さじ3
塩 適量
つくり方
じゃがいも、玉ねぎは薄切りする。
オリーブオイルを入れたフライパンを熱し、じゃがいもを入れてじっくり揚げ焼きする。ときどき上下を返したりして、じゃがいもに透明感が出てきたら玉ねぎも加え、さらに揚げ焼きする。じゃがいもがつぶれるぐらい火がとおって、そのまま食べてもおいしそうな感じが目安。軽く塩をふって全体を混ぜる。
ボウルに卵を溶きほぐし、オリーブオイルを切った具を入れ、
よく混ぜて卵液としっかりなじませる。ここで具と卵液をしっかりなじませるのもポイント。
油の残っているフライパンを中火で温め、卵液を流し込む。中火弱で2~3分表面を焼き固める。
固まってきたら、フライパンの上にひと回り大きな皿をかぶせ、フライパンを皿ごとひっくり返し、オムレツを皿に取り出す。
この時点では、まだ半熟で大丈夫。焼いた底の方を上にしたまま、今度は皿からフライパンに滑らせて戻し、反対側も3~4分ぐらいしっかり焼く。表面を指で押して、弾力が出たら中まで火がとおった合図。皿にのせ、少し落ち着かせてからいただきます。
断面はぎっしりじゃがいも、ときどき玉ねぎ。揚げ焼したじゃがいものおいしさといったら……。
間違ってもケチャップなどかけぬよう。せいぜい胡椒ぐらい。これは、じゃがいもそのものの味がごちそうです。
今回この料理に合わせたワインはこちら。
ポルトガル北部のミーニョ地方、リマ川を見下ろすビオディナミ畑のパラダイスで、オーガニックなワイン造りに魂を込めている醸造家ヴァスコ・クロフトの「ファウヌス パリェーテ」。
アンフォラ(ポルトガル語ではターリャ)という、紀元前からワイン造りに使われている、素焼きの壺で醸した、赤と白を合わせたロゼです。
このワインは、ロウレイロという白ぶどう80%、ヴィニャオンという黒ぶどう20%をアンフォラの中で同時に発酵させる、昔ながらの作り方でできたロゼ。これを飲んでいると、ワインって昔は赤も白もロゼもなく、混植、混醸だったんだろうなあと想像します。今よりもっと自然に委ねた状態で、毎年違う味をあれこれ話しながら飲んでいたのかな。しみじみ、じんわり味わえるうま味や、ほんのり梅のようなニュアンスなども感じられ、余韻も長い。でも、主張が強すぎないので、食中にぴったりのワインだと思います。あと、面白いのがラベルに描かれているイラストの端の言葉。made without electrisity、電気は一切使わすに作った、昔ながらの手作業で生まれたワインという意味。ここにも、醸造家のこだわりが見えます。
いろんな料理と合わせられると思いますが、今回のようなじゃがいもたっぷりの素朴なオムレツの素朴な味や、あるいは、梅肉を忍ばせたドライトマトのパスタなども、梅の風味、ドライトマトの凝縮したうま味や酸味などとよく合うと思います。
それでは、じゃがいもたっぷりの滋味系オムレツと、うま味多重層のアンフォラ仕込みのロゼで良い週末を!
私は久しぶりに、ポルトガルに行ってきます。