cakes読者のみなさま、こんにちは。
2週間のポルトガル取材から戻ってきました。今回は中部や東北部のディープな地域が中心。地方で祭りのパンを焼くところを手伝わせてもらったり、地元の懇親会にお邪魔して郷土料理を味わったり。ポルトガルで唯一、雪が残る山頂までいったり、自然公園の切り立った崖のそばで、羊飼いと羊の群れに遭遇したり、チーズ工房やワイナリーを直撃取材したり。濃密な14日間でした。ポルトガルの正月とも言えるパシュコア(イースター)では、友人家族のテーブルにお邪魔して賑やかな1日を過ごしました。たっぷりの肉料理と食べきれないお菓子がテーブルに並び、ポルトガルの食文化にどっぷり浸かり、ワインもたっぷり浴びました。お菓子も毎食後のデザートがあり得ないぐらいのボリュームなので、2週間で1年分ぐらいの甘みを蓄えた気がします。
そして、帰って食べる久しぶりの和食。やっぱりいいもんです。朝、ふわっと香るみそ汁をひと口飲んで、納豆にはしらすをたっぷり入れてこれでもかとかき混ぜて、白いご飯にオン。いつもの日常をしみじみと実感。唯一無二です。改めて客観的に考えると、和食の面白いところは、味の深みに油脂を必要としないこと。これだけさっぱりしたものなのに、うま味が濃いということはすごいこと。あらためて、和食最高!
この連載も、ポルトガル料理のエッセンスも入れつつ、ときにはポルトガルのワインにいかに和食を合わせるか、そんなこともご提案していきたいと思います。まずは旬の素材ありきで、あとは気ままに。
4月の最初はたけのこです。煮物や焼き物もいいんだけど、やっぱりまずはたけのこご飯が食べたい。茹でたたけのこの風味を生かすように、だしは昆布を入れるだけ。また、米にもち麦を加えると、ぷちぷちした食感が楽しめます。
では、パパッと作っていきましょう。
Menu do dia 本日のメニュー
材料 3~4人分
米 1+1/2カップ
もち麦 1/2カップ
茹でたけのこ 100g
昆布 10㎝×10㎝
水 2カップ
日本酒 大さじ1
しょうゆ 大さじ1/2
塩 適量
つくり方
米は洗って水気を切る。たけのこは食べやすい大きさに薄切りする。鍋に米ともち麦を入れ、水と調味料を合わせる。日本酒はうま味の要なので、普通に飲んでおいしいものを入れたい。
これらを米に加え、昆布を入れて30分浸水する。浸水時間がないときは水の代わりにお湯を加える。
その上に薄切りたけのこを散らし、
ふたをして、沸くまで4~5分強火にかけ、沸いたらごく弱火に落として12~13分炊く。ほぼ水分がなくなったら、最後の10秒はふたを取って強火にかけると、おこげがパリッとできる。
炊き上がったら布をかませて5分蒸らす。
軽く攪拌して出来上がり。
そのままでもいいけれど、木の目や大葉など、好みの和ハーブを加えると香りに幅が出ます。
さらに、ワインに合わせるひと工夫。焼きおにぎりにします。薬味を混ぜ込んだら、小さめに握って表面に軽くしょうゆを塗り、焼き網やグリル、あるいはフライパンでゆっくり表面を焼きつけます。ちなみにこの焼きおにぎり、一度にたくさん作って冷凍保存しておくと、小腹が空いた仕事帰りなど、神のような存在に思えます。
今回この料理に合わせたワインはこちら。 ポルトガル中部ダォン地方のビオディナミの畑から生まれる白ワイン「カーサ・デ・モウラス ブランコ」。
このワインはとてもユニーク。なんと混植混醸の9種類以上のぶどうで作る、ずばり土地の味わいを生かしたワインです。最近の単一品種ぶどうで造るものとは真逆の、すべてが出来る限り自然なままを味にしています。主なぶどう品種はラベルに書いてあるマルヴァジア・フィナやビカル、セルシアルなど。でも、このワインの場合、ブドウの品種よりも、昔ながらの混植、混醸で仕上がる土地まるごとを感じるような飲み方が楽しい。ふっくらでコクのあるボディ、ほろ苦さや酸味、さらに微かに香ばしさを感じるので、今回は焼きおにぎりと合わせてみました。しょうゆや酒といった和の発酵調味料のうま味とも、しっくりくると思います。大葉や木の芽などが少しでも入ると、さらに調和します。
それでは、和のうま味と香ばしさが優しいたけのこご飯の焼きおにぎりと、ダイナミックな土地の味わいを感じるポルトガルの白で、良い週末を!