cakes読者のみなさま、こんにちは。夏、終わっちゃいましたね。
今年はかねてから訪ねたかった熊本県の天草を旅したのですが、とてもカラフルな場所でした。夏の青空には白い雲がくっきりと映え、透き通る海は空の青をごく薄く溶かし込んだようなブルーグリーン。車で走れば、あちこちに広がる田んぼや畑はぐんぐん育つ緑が鮮やかなグラデーションを作り、そして夏の名物、天草のたこは、茹でたての真っ赤が鮮やかでした。
天草は海産物の宝庫で有名な有明海に面していて、夏はとくにたこの味が格別なのですが、今回は縁あって1日だけ、現地でたこを使った料理の仕事もしました(内容は9月8日TV朝日『食彩の王国』で放送予定)。今年の6月30日に、天草にある崎津教会と崎津の集落が世界文化遺産に登録されたこともあり、南蛮文化にゆかりの深い天草で、ポルトガル料理の要素を取り入れた料理を考えてみませんか、というお誘い。ポルトガルや南蛮と聞いただけでそわそわせずにはいられない私にとって、非常に嬉しい機会でした。
天草では、干しだこを使ったたこご飯やたこの刺身、たこステーキと、たこ尽くしの地元料理が人気の老舗旅館「あさひ荘」のご夫婦と一緒に、旅館の厨房をお借りして料理をしました。南蛮文化が根付く土地の歴史を背景に、ポルトガルのエッセンスを加えたたこ料理を何品か考えたのですが、特に気に入ってくださったのが、たこを使った小さなコロッケ。ということで、今年の夏を振り返りながら、ご紹介します。
で、どうしてコロッケなのか。この連載でも「たらのコロッケ」で紹介していますが、ポルトガルには前菜の大定番に、干しだらの小さなコロッケというものがあります。モデルはこれ。また、「たことじゃがいものオリーブオイル焼き」などでも紹介していたように、たことじゃがいもの組み合わせはポルトガルでは鉄板コンビ。ということで、それなら天草のたことじゃがいもを使って小さなコロッケに仕立てよう、ということになったのです。
じゃがいもを茹で、刻んだ生の玉ねぎと熱いうちに合わせ、細かく切った茹でたこと、みじん切りのイタリアンパセリをたっぷり加えます。味付けはたこが主役なので極力シンプルに、塩とこしょうだけ。小さく丸め、バッター液を絡め、目の細かいパン粉をまぶし、からりと揚げて完成。主役のたこの濃い味や食感が主役の、ソースの要らないコロッケです。作るときのコツは、じゃがいもの水分をしっかり飛ばしてから具と混ぜることと、バッター液を絡め、カリッと香ばしい衣を作る2点。ポルトガルの干しだらコロッケは本来は衣をつけないのですが、日本のじゃがいもはほくほくするタイプが多くて衣なしでは崩れやすいため、失敗が少ないこの方法にしました。
では、ぱぱっと作っていきましょう。
Menu do dia 本日のメニュー
材料 小さなコロッケ21個分
茹でたこ 200g以上好きなだけ
じゃがいも 大2個
玉ねぎ 1/2個
イタリアンパセリ 5~6本
バッター液
卵 1個
小麦粉 大さじ3
水 大さじ1~2(卵の大きさによる)
塩、粗挽き黒こしょう、パン粉、揚げ油 各適量
つくり方
たまねぎとイタリアンパセリはみじん切り、茹でたこは小さめの1㎝角ぐらいに切る。たこが大きすぎると食べづらいので注意。じゃがいもは皮をむき、かぶるくらいの水で茹で、じゃがいもが柔らかくなったら汁気を捨てて鍋の中でへらなどで軽くつぶしながら、水分をしっかり飛ばす。このあと加える具から水分が出るので、じゃがいの水分はできるだけ飛ばしておくこと。
ボウルに刻んだ玉ねぎを入れ、ゆでたてのじゃがいもを熱いうちに加えて混ぜる。
熱々じゃがいもの余熱のおかげで、生の玉ねぎは炒めなくても火が適度にとおり、程よい食感になる。玉ねぎは炒めないので甘くなり過ぎず、コロッケもあっさりした味に仕上がる。
さらに刻んだたこを混ぜて塩、黒こしょう、イタリアンパセリを加え、味を調える。特に黒こしょうは躊躇せずに強めにきかせた方が、お酒がすすむコロッケになる。この思い切りも大事。
味を調えたらしっかり冷まし、ピンポン玉よりやや大きいサイズに丸める。
次に衣の下地、バッター液を作る。
ボウルに卵と粉、水を加えて泡だて器でしっかり混ぜ、ややとろみのある液体になったら完成。ここにも黒こしょうを加える。
コロッケだねをバッター液にまんべんなくくぐらせ、余計な液を落としたらパン粉をしっかりつける。パン粉は目の細かいものがおすすめ。あればとうもろこし粉を細かく挽いたコーングリッツなどを加えると、さらにカリッとした衣になる。
あとは180℃の油でこんがり揚げたら完成。揚げるときは、最初はコロッケの表面が固まるまでいじらず、色付いてきたらまんべんなく全体を泳がせて、こんがり揚げる。また、揚げ油に一気にいくつも入れると、油の温度が急に下がってカリッと揚がりにくいので、数個ずつ揚げていく。