魚と米と野菜と幸せを一緒に食べるマデイラ定食「めかじきのオレガノグリルとタイムごはん」

つい先日まで、ポルトガルのマデイラ島を訪れていた馬田草織さん。ポルトガルといっても、かなり沖合いの、どちらかと言うとアフリカ寄りにあるのがマデイラ島。数多くのポルトガル料理を紹介してきたこの連載ですが、今回はまた特徴的なレシピになりそうです。

cakes読者のみなさま、こんにちは。

秋も深まる今日この頃ですが、私はつい先日まで、まだ夏があちこちに残るポルトガルのマデイラ島を取材していました。ん、マデイラ島ってどこ? グーグルマップで検索すると、島の周りはしばらく海だらけ。何もない。ずーっと引いて見ると、ようやく隣に大きなアフリカ大陸が見えてきて、なんだここ、イベリア半島の管轄っていうよりはアフリカ大陸から飛び出たような位置じゃん、と思わせます。ポルトガルの首都リスボンからは約1000キロ離れ、ちょうどモロッコのカサブランカと北緯が同じぐらい。海辺の平地なら、天気がいいと11月でもまだまだ半袖で心地いいぐらい。そんな温かいところを訪ねていました。ちなみに、マデイラ島はクリスティアーノ・ロナウドの故郷。空港名も、いまやクリスティアーノ・ロナウド・マデイラ国際空港。びっくりするほど本人に似ていないことで有名な胸像もあります。

マデイラ島は次の書籍を書くために訪ねたのですが、食が飛び抜けて面白い土地でした。同じポルトガルなのに、食文化は完全に独立国家。日本でいうところの沖縄的なオリジナリティーがあります。かつて16世紀の大航海時代に、旅に出る前や帰って来た船が食料や水などを摘んだ寄港地だったこともあり、アフリカやアジアからもたらされたスパイスやハーブの使い方が土地の料理にもしっかりとその痕跡を残し、なんとも魅力的。島オリジナルのカレースパイスなんていうものもあって、大航海時代のヨーロッパとアフリカ、アジアを結ぶ味の地図が透けて見えてきます。

そんな中、日本人にもびしびし響く料理にもたくさん出会いました。海に囲まれた土地柄、マデイラ島では魚介類をたくさん食べるわけですが、どこの定食屋でもあるのが、まぐろや白身魚のグリル。肉に使う基本の調味料は塩、にんにく、オリーブオイル、そしてオレガノ。好みでレモンを絞って。付け合わせのお決まりは白米。島で定番のセグレーリャというタイムのような芳香のハーブとオリーブオイル、少々の玉ねぎを使って白く炊き上げた米です。あとは茹でたじゃがいもに、トマトやレタスなどのシンプルなサラダを添えて。これにワインやビールを引っ掛けるランチが締めて6ユーロほど。この上ない幸せを感じました。そんなマデイラの定番ランチを参考に、今回の「めかじきのオレガノグリルとタイムごはん」を考えてみました。魚のグリルと米、野菜を一緒にいただく、呑めるマデイラ定食といった感じです。

マデイラでは庶民に身近な存在のまぐろがグリルの定番ですが、日本で作ると悲しいかな高級ステーキになってしまう。そこで、食感も近くてグリルに向く、手頃なめかじきで作ります。

では、パパッと作っていきましょう。

Menu do dia 本日のメニュー

「めかじきのオレガノグリルとタイムごはん

材料 大盛り1皿分
米 1/2合+押し麦 1/2合
めかじき切り身 1枚
玉ねぎ 1/2個
トマト 1個分
にんにく 1片
白ワインビネガー 大さじ1
オリーブオイル 大さじ1+大さじ1
オレガノ 小さじ2
タイム 小さじ2
水 250㏄
塩、こしょう 各適量

つくり方

玉ねぎはみじん切りする。にんにくは半分を薄切り、半分はみじん切りする。めかじきは両面に塩をしっかり振ってにんにくをのせ、こしょう少々とオレガノをまぶし、オリーブオイル大さじ1をかけてしばらく置く(このまま冷蔵庫で数時間寝かせておいてもよい)。

ごはんを炊く鍋にオリーブオイルを熱し、玉ねぎを入れてをふたをし、弱火で蒸し炒める。玉ねぎが透き通ったら米と押し麦、塩、タイムを加えて混ぜる。

水を加え、塩で味を調え、ふたをして強火で沸騰するまで2~3分煮て、沸いたらごく弱火にして10~12分ほど煮る。

その間にトマトのサラダをつくる。トマトはひと口大より小さめに乱切りし、塩少々、白ワインビネガー大さじ1とオリーブオイル小さじ1を加え、軽く混ぜる。好みでにんにくのみじん切り少々を加え、冷やしておく。

米に火が通ったら、火を止めて一度全体を軽く混ぜ、蒸気が米に落ちないように布をかませ、ふたをしてそのまま5分蒸らす。

蒸らし終わったら軽く混ぜてご飯は完成。

最後にめかじきを焼く。中火で温めたフライパンにマリネしたオイルやにんにくごと入れ、片面ずつおいしい焼き色が付くまで触らずに焼き付ける。返すのは1回だけ。返したら、にんにくのみじん切りの残りをふって焼く。切り身の大きさにも寄るが、両面で3分以内が目安。

器にタイムごはんを盛り、めかじきグリルをのせ、トマトサラダを箸休め代わりにたっぷりと。

食べるときは、めかじきをひと口大にカットして、トマトと混ぜていただくのがおすすめです。口の中で、魚のグリルのうま味とご飯の香り、トマトのさっぱりが合わさって、一気に食べ進められます。スパイシーな味が好きな人は、ここで一味唐辛子やチリパウダー、ホットソースなどを加えても。フライパンひとつで作りたい人は、先にメカジキを焼いてから取り出してさっとふき、同じフライパンで米を炊くという方法もありです。

今回この料理に合わせたワインはこちら。

ポルトガルのダオン地方の醸造家アントニオ・マデイラが造る、ダオンの20種類以上の混植された土着品種ぶどうから生まれる、フレッシュなのに噛みしめたくなるうま味たっぷりの白。

「ダオン ブランコ 2015 」5076円(税込)

このワインは、フランス生まれのフランス育ち、フランスのワインに詳しい醸造家のアントニオ・マデイラが、幼いころ遊んだ祖父や両親の故郷であるダオン地方でのワイン造りを決心し、開いたワイナリーで生まれた白。樹齢50年から120年という古木の畑を中心に、土地の味わいをくっきりと生かした、ミネラルたっぷりのフレッシュで複雑な味わいのワインです。ワインの中に溶け込む果実味やハーブのニュアンスと、魚のグリルの控えめながらしっかりした味わいが好相性。マデイラさんが作っているけど、今回のマデイラ島とは関係なし。美味しいマデイラワインの紹介は今度にして、今回は名前だけマデイラのワイン。

それでは、清涼感たっぷりの白身魚グリルにさっぱりトマトのご飯と、フレッシュで噛みしめるうま味いっぱいの奥行きある白で、楽しい週末を!

ケイクス

この連載について

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ポルトガル食堂

馬田草織

ポルトガルや南蛮絡みのエピソードが大好きな編集者・ライターの馬田草織さんが、仕事現場や旅先、日常で気になった食のサムシングと、それにちなむおつまみ&ぴったりなお酒を月替わりでご紹介していく、家飲みも外飲みも楽しむ人へ捧げる至福のほろ酔...もっと読む

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    コメント

    kumakuma12pooh2 読んでるだけで生唾が(о´∀`о) 1年以上前 replyretweetfavorite

    tomshirai 青魚好きな私にとって、めかじきはあまり好みじゃないけど、これは美味しそう! 1年以上前 replyretweetfavorite

    elba_isola |馬田草織 @saoribada |ポルトガル食堂 こんなステキな料理をぱぱっ作れる人になりたい。 https://t.co/3hUwXPEvtt 1年以上前 replyretweetfavorite

    abgk これまた旨そう。今度作ってみよ。 1年以上前 replyretweetfavorite