cakes読者のみなさま、こんにちは。
秋になると楽しみな野菜のひとつがかぼちゃ。とくに最近気になるのが、瓢箪みたいな形をしたバターナッツかぼちゃ。店頭で見かけると、買ってきてポタージュにしたり、天ぷらにしたり、シンプルにフライパンで塩を振って焼いたりします。
バターナッツかぼちゃの特長は、加熱して潰したときのなめらかさや、ナッツを思わせる風味とコク。たとえば少量の玉ねぎと一緒に蒸し炒め煮にすれば、さっとほぐれるのでスープにうってつけ。あとは水(またはブイヨン)でのばすだけです。ハンドブレンダーやミキサーにかけずとも、口当たりよいスープに仕上がります。その場合、仕上げにバターを少々落とすのがおすすめ。
でも、今回ご紹介したいのはプリンです。なぜなら私、かぼちゃのプリンに目がないんです。バターナッツかぼちゃを使うと、いつものプリンにさらにコクと自然な甘味、ほど良いボリューム感が加わって、秋を頬張っている感じがします。
プリンの盛り上げ役は生クリームもいいけれど、結構クセになるのがマスカルポーネチーズ。泡立てる必要もないし、カラメルソースとの相性は抜群です。
プリン好きなので、夢のデカプリンも作ってみました。
ポルトガルで定番の、大きめのプリン型を使っています。もちろん、底の抜けない円筒形のケーキ型でも代用できます。イベントなどで、デザートになんとなくハロウィン的な空気を出したいときなど、かぼちゃのプリンは重宝。デカプリンはさらに重宝。スタンダードのレシピの後に、デカプリンの作り方も簡単にご紹介しますので、興味のある方はぜひ。ちなみにこのプリンは、小さく切り分けて20名近くで食べていただきました。
かぼちゃプリン好きになったのは、下北沢にあったカフェがきっかけです。その昔、もう20年以上も前のこと、下北沢に「バスケットクラブ」というカフェがありました。たしか駅から15分ぐらい歩いた、小さな古着屋をまっすぐ行った角っこあたり。当時大学生だった私は、下北沢界隈に詳しい友人に連れられて通うようになり、あっという間にその小さな、清潔感のある店の虜になりました。
ガラスケースに並んでいるケーキは、無口なマスターの手作り。なかでもはまったのが“パンプキンプリン”。大きな丸い型で焼き上げ、ケーキのようにカットしてありました。おお、プリンなのにカップ入りの円筒形じゃない! 今じゃ珍しくないけれど、当時はかなり新鮮。行く度に注文しては、ちょっとずつ、ちびちびと大事に食べていました。添えてある生クリームも、ちびちび。だって気が緩むと、瞬殺で食べ終えてしまうから。粘ってゆっくり食べてもまだ食べ足りなくて、なけなしのお金で思い切ってお代わりしたこともありました。無口なマスター、淡々とお代わりのプリンを持ってきてくれて。愛想はないけど、でも決して冷たいわけじゃない。あくまでクールな接客に、白が基調の洒落た内装。大学のうるさいカフェとは全然違うその店では、自然と小さめの声で会話するようになりました(でも店では一番うるさかったに違いない)。
それにしても、その頃はカフェに全く慣れていない大学生、あっという間に頼んだ紅茶をごくごくと飲み干してしまい、お水ばかりお代わりしてたなあ。あのマスター、どうしてるんだろう。今はあちこちのお店でとびきりおいしいプリンに出会えますが、今でも私の中ではバスケットクラブが断トツ。みっしりとかぼちゃ濃度の高い、カラメルの苦みがきりりときいたプリンは、私の記憶の中で、いまも不動のナンバーワンを守り続けています。
かぼちゃの季節はまさにこれからが本番。追熟する野菜だから、買って涼しいところに置いておけば2~3週間は大丈夫。でんぷんが糖に変わって甘みも増します。バターナッツかぼちゃはまあまあ重いので、元気のあるときにとりあえず買って、家で追熟させます。形がユーモラスだから、オブジェっぽくもあり。
唯一の難点は硬いこと。生の状態で皮むきするのって、格闘技並みに結構な力が要ります。ではどうするかというと、そのまま丸ごと電子レンジでチンがラク。バターナッツかぼちゃ1個なら、大きさにもよりますが600Wで4~5分ほど。かなり扱いやすい柔らかさになるので、皮むきも切るのも断然ラクになります。ただし、直後は熱くなっているので気を付けて。
では、バターナッツかぼちゃを使ってパパっと作っていきましょう。
Menu do dia 本日のメニュー
材料 80㏄型8個分
プリン
・卵2個
・牛乳 1カップ
・砂糖(あればきび砂糖) 大さじ5
・バターナッツかぼちゃ(正味)200g
カラメルソース
・砂糖 大さじ5
・水 大さじ1+大さじ3
プリン型がない場合は、耐熱のコップや茶碗、蕎麦猪口などでも。写真の後ろにある大きい型は、ポルトガルに昔からあるプリン型です。ポルトガルは修道院があった中世の時代から今日まで、無数のレシピがあるプリン王国。オーブンがない時代は、鍋にお湯を張ってこの容器を沈めて湯煎したので、ふたが付いています。今でも愛用者の多い型で、私もデカプリンを作るときに使います。
つくり方
小鍋に牛乳を温め、砂糖を入れて完全に溶かす。砂糖が溶ければいいので、牛乳はふつふつする程度で。シナモンやカルダモンなど、スパイスで香りづけしたいときはこのタイミングで加える。そのまま冷ます。
その間に、カラメルソースを作る。
小鍋に砂糖と水を入れ、強火で温める。砂糖が溶けてシロップ状になるまでは、かき混ぜたりせず、火をかけたまま放置。ここでいじると砂糖が白く固まって失敗の原因になります。シロップの周囲が茶色く色づき始めたら触ってよし。鍋を回しながら全体に焦がし、煮詰める。
全体が焦げ茶色になり香ばしさが漂ってきたら火を弱め、焦がし加減を見てぎりぎりのところで火を止め、水を加える。カラメルソースの苦みは好みだが、強い方が甘いプリンとコントラストが出る。
水を加えるときはジュッとはねるので、くれぐれもやけどに注意。
カラメルソースができたら、熱いうちにバター(分量外)を薄く塗った器に入れ、冷ます(写真は6個ですが、レシピは8個分です)。
次にプリン液を作る。
バターナッツかぼちゃはまるごと電子レンジに入れる。600Wなら4~5分、500wなら5~6分加熱。皮むきや切るのをラクにするためだから、中まで完全に加熱されなくてもいい。
半分に割って中の種やワタをきれいに取り除き、皮をむいて適当に切り、ボウルに入れる。ラップをかけてレンジでさらに加熱し、完全に柔らかくする。大きさにも寄るが、目安は3~5分ぐらい。
柔らかくなったらマッシャーなどでしっかり潰す。あっという間に気持ちよく崩れます。この状態でいったん取り出し、使う分(200g)と残りに分ける。残りは小分けにして冷凍保存すると便利。菓子以外にも、たとえば牛乳に溶かしてブイヨンを少量加えれば、簡単スープにもなります。
ボウルに卵を割ってよくほぐし、バターナッツかぼちゃのペーストと冷ました牛乳を加えて混ぜる(バーミックスやミキサーを使うとラク。さらに滑らかな口当たりになる)。茶こしなどで液を濾しながら、容器に入れる。
蒸し方は、蒸し器と湯煎、オーブンの3種類。まず、蒸し器の場合。蒸気のしっかり上がった蒸し器に並べ、
弱火でふたを少しずらして10分、さらに火を止めてふたをして、予熱で5分以上蒸す。ふたをずらすと蒸気が逃げるので、プリンが硬くなりすぎるのを防げます。最後に竹串で刺して中まで固まっているか確認し、自然に冷ます。
次に湯煎の場合。鍋にお湯をはって蒸す方法。
注意点が1つ。ある程度重さのある器を使うこと。軽すぎる器だと、火にかけている最中にぐらぐら揺れて中身がこぼれます。鍋に器を入れ、器の半分ぐらいの高さまでお湯を張り、ふたをして弱火で10分、火を止めて5分以上蒸す。
このときふたを布で包んでおくと、蒸気が水滴になってプリンに落ちるのを防げる。
3つ目はオーブンの場合。湯を張った天板に並べ、160℃で20~30分が目安。どの場合も、器の容量や材質によって火の通りに差がでるので、竹串などで刺して蒸し上がりを確認しましょう。
冷蔵庫に入れて冷やしてもいいけれど、ほんのりあたたかいプリンもなかなかです。また、食べるときは、以前ポルトガルプリンの回でもお伝えした、リスボンの食堂式を再度ご紹介します。
まず、皿にプリンカップごとのせて食べる人に出します。冷蔵庫で冷やしていたものはカラメルが固まっているので、底を手で温め、カラメルソースを溶かします。食べる人は、プリンの上面をスプーンでまんべんなく優しく押して、カップの肌からプリンが離れるようにします。
プリン本体がカップの中で動くようになったら下の皿を上にかぶせて
皿ごとひっくり返し
両手で皿とカップを持って、そのまま逆さに振ります。1回ではなかなか落ちないので、数回振ります。ポン、と感じたら落ちた合図。ゆっくりカップを持ち上げて完成です。
マスカルポーネチーズを添えることを、強くおすすめしたい!
そして、こちらはおまけのデカプリン。
材料はスタンダードのほぼ2倍。かぼちゃは倍量よりやや多めにし、牛乳を少し減らしました。プリン液の量が多いので、バーミックスやミキサーを使うことをおすすめします。
材料 18×14㎝のプリン型・穴あきタイプ
・卵4個
・牛乳 1.5カップ
・砂糖(あればきび砂糖) 大さじ5
・バターナッツかぼちゃ(正味)500g
カラメルソース
・砂糖 カップ2/3
・水 大さじ2+大さじ4
プリン液を型に入れるまでは同じ。160℃のオーブンで1時間、天板に湯を張って型を入れ、蒸し焼きにする。さらに自然に冷まし、冷蔵庫で1時間以上落ち着かせる。食べる直前にみんなの前で器から出すと、大きな塊がぽこんと落ちて、きっと大喜びされますよ。
それでは、むっちり濃厚なバターナッツかぼちゃのプリンで、良い週末を!
「あなたと旅するポルトガル 2019 Outono」
ポルトガル食堂×カステラ・ノート https://castella-note.com/
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日時 10/26(土)と27(日) 12時~19時(予定)
場所 西荻窪364 http://www.sanrokuyon.com/
予約 不要です。散歩がてら、ふらりと遊びに来てください。