cakes読者のみなさま、こんにちは。
東京オリンピック・パラリンピック開催まで1年を切りました。いまだあちこちに難問山積ですが、スーパーアスリート達の4年に一度の活躍を間近で見られるのは純粋に楽しみ。しかも、個人的にはパラ陸上の決勝観戦チケットが当たったので、開催が待ち遠しくもあります。そんな感じで、完全に観る側100％の気持ちでいましたが、つい先日、ちょっとパラに関われる嬉しいことが。
ポルトガルのパラリンピック選手のホストタウンである神奈川県藤沢市から、料理の仕事の依頼をいただいたのです。藤沢市に滞在するポルトガルのパラ選手とスタッフのみなさんを、和食とポルトガル料理の双方向でもてなしたい、そのためのポルトガル料理レシピを考え、藤沢市の有志のみなさんに作り方をお伝えするという内容。なんというか、私で良ければ喜んで！ です。さあ、では何を作ったらいいのだろう。ポルトガルに住む友人にも意見を聞いたりしつつ、このところポルトガル料理のレシピ本などを改めて読み返したりしていました。
ポルトガルの人達がほっとできる家庭料理。それはやっぱり、干しだらを使った料理じゃないのか。ポルトガルでは干しだらは国民食ともいえる食材で、365日毎日食べても干しダラ料理のレシピは尽きない、という決まり文句もあるぐらい。実際に1000以上あるとも言われていて、この連載でもこれまでに「ピポグラタン」「たらのコロッケ」「たらとほうれん草のクリームグラタン」「甘塩たらとえびごはん」「たらとじゃがいも炒め、ゆで卵ソース」「たらのカリッとソテー＆玉ねぎソース」「たらとじゃがいものほっくりドリア」「たらとじゃがいも、かぶの葉のポルトガル風おかゆ」など、たらを使った料理をあれこれと紹介してきました。
ポルトガルの干しだらは、ノルウェー沖など北大西洋で釣り上げたまるまる太った大西洋真だらを開いて塩漬けにし、さらに板のようにがちがちなるまで何か月も干したもの。冷蔵技術などない大航海時代には、航海する人達の貴重なタンパク源になった保存食でもあり、今でもポルトガルでは、日常のお惣菜からクリスマスイブの特別料理まで、干しだらがばんばん出てきます。ただ、悩ましいのは日本ではこの干しだらが手に入りにくいということ。その辺じゃ売ってないし、手に入っても高い。とても身近な素材とは呼べません。
でも、私達も鱈は食べる。特にこれから冬になると、たらは身近な旬の魚です。軽く塩をした甘塩だらの切り身などは、売り場で見ない日がないぐらい。ということで、これからしばらくは冬のたら特集。干しだらの代わりに甘塩のたらを使って、ポルトガル流のたら料理をご紹介していきます。たらちり鍋や煮付け以外にも、たらって結構使えるじゃんという発見になれば。
まずは個人的に大好きな、メニューにあったら必ず頼んじゃう料理。Bacalhau a Brás（バカリャウ・ア・ブラシュ）です。ほぐしたたら、玉ねぎ、にんにくをたっぷりのオリーブオイルで炒め合わせ、カリカリの細切りフライドポテトを加えて卵でとじるというもの。ちょっとあなた、卵でとじるんですよ、フライドポテトとたらを！ なんて斬新。家庭で作る気軽なお惣菜なんだけど、大勢が集まるもてなしの場にもよく出てくるという垣根のなさが、この料理の人気の度合いを示していると思います。
個人的にポルトガル料理ベスト5に入るぐらい好きなんだけど、今までずっと紹介してきませんでした。なぜか。カリカリのフライドポテトを作るという手間が、どうしてもネックに感じていたんです。ちなみにポルトガルでは、この料理用にすでにカリカリに揚げてある専用フライドポテトの袋詰め（塩味すらついていないピュアなもの）がスーパーにずらりと並んでいて、みんなそれを使って料理します。やっぱり揚げるの大変だからさ。日本にもあればいいのになあ、と思っていたら、最近食材店でちょっと似た感じの細切りフライドポテトを見つけました。これを使えばあっという間にできます。ようやく紹介できる！ もちろん、揚げたてのフライドポテトで作るものは格別なので、そちらのレシピもご紹介。しかも少ない油で揚げるので、気軽にできます。
では、鱈とじゃがいもを使って、パパっと作っていきましょう。
Menu do dia 本日のメニュー
材料 2人分
甘塩鱈 1切れ（100ｇ以上）
じゃがいも 大１個
玉ねぎ 1/2個
にんにく 1～2片
卵 1個
白ワイン（または酒）大さじ１
オリーブオイル 大さじ5（フライドポテト用）＋大さじ2（炒め用）
塩、こしょう 各適量
塩漬け黒オリーブ（あれば） 8粒
つくり方
まずはフライドポテトから。揚げる時間がない人、揚げたくない人は、こういう細切りポテトがおすすめ。私は近所のカルディで購入しました。ただしこれは塩味が付いているので、仕上げの塩加減に気を付けて。
これだけ細いと炒めやすいし、卵とじにしたときの食感がいい感じです（ちなみに、市販のポテトチップスでも作ったことがありますが、表面積が大きいのであっという間にしなしなになっちゃうのが悲しいところ。もしも普通のポテトチップスで作るのなら、手で砕いてから使うのがいいかも知れません）。
では、カリカリフライドポテト、揚げようじゃないのという方。じゃがいもは千切りにする（あれば野菜スライサーやチーズおろしで細切りすると断然ラク。私はチーズおろしを推奨）。水にさらして表面のでんぷんを洗い流し、キッチンペーパで包んで絞り、しっかり水気を切る。
フライパンに半量を薄く広げ、オリーブオイル大さじ3をまんべんなくかけて、冷たい状態から中火で熱する。ガレットを焼くイメージで10分ほどゆっくり加熱し、黄金色になったら全体を（多分くっついて1枚になるので）ひっくり返し、箸でくっついているところをザクザクと割ってばらしていく。こんな感じ。
塊があっても、それはそれでおいしいから大丈夫。返したらさらに5～10分ぐらい火にかけ、カリッと揚がったらペーパーに上げて油を切る。油の残ったフライパンに残りの半量も同じように広げ、オリーブオイル大さじ２を加えて再び揚げる。完成はこんな感じ。
これに塩を振っただけでも十分においしいんだけど、食べちゃうと永遠に料理が完成しないのでここはつまみぐいで我慢。
ここからは簡単。甘塩たらを耐熱皿におき（生のたらを使う場合は、表面全体に塩をふってできれば冷蔵庫で半日置き、余分な水分を拭く）、白ワインをふってラップでふんわり包み、電子レンジ（600Ｗ）で1分半ほど加熱。火が通ったらそのまま置いて粗熱をとり、皮と骨を取り除いて身をほぐす。
玉ねぎは薄切り、にんにくとイタリアンパセリはみじん切りする。卵は溶きほぐす。先ほどのフライパンに、残ったオイルはそのままでさらにオリーブオイル大さじ2を加え、玉ねぎとにんにくを入れて透きとおるまで中火で炒める。さらにほぐした鱈を加え、全体がしっとり馴染むように炒め、塩、こしょうで味を調える。この時点で、全体がオイルでしっとりしていることが大切。
ここからは一気に仕上げます。フライドポテトを加えて全体を軽く混ぜ、溶き卵を回しかけて火を止め、余熱で卵が全体に馴染むように大きく混ぜ、絡めます。器に盛り、イタリアンパセリを散らしてオリーブを添える。
そして、盛ったらすぐ食べる！ ワインやビール、ちゃんと冷えてますか？
柔らかいたらの身が玉ねぎやにんにくのうま味と絡み、そこにカリカリフライドポテトが加わって卵でとじるとさあ大変。カリカリとしっとりが次々やってきて、食感の未体験ゾーンに入ると思います。
それでは、しっとりたらとカリカリじゃがいもで、良い週末を！
「ポルトガル食堂」
実際にポルトガル料理とポルトガルワインが楽しめる食事会を、都内で毎月開催中です。ご質問等は以下へどうぞ。
申し込み・お問い合わせ
pufu@lilac.plala.or.jp
詳細
http://badasaori.blogspot.jp/
12月21日（土）12:10〜14:30 着席スタイル
前菜、メイン、デザート、コーヒーでゆっくり食事を楽しんでいただきます。今月は、鴨の出汁がたっぷりしみ込んだ鴨ご飯（アローシュ・デ・パト）をお出しする予定です。
