ゴーヤチャンプルーは沖縄料理。チャンプルーとは「混ぜたもの」という意味で、様々な食材を炒めあわせる料理です。もともとはありあわせの野菜や豆腐、少量の肉でつくった家庭料理です。
はっきりとした定義はありませんが、豆腐が入っているのが特徴。沖縄のゴーヤチャンプルーに使われる島豆腐は水分含有量が少なく、濃厚な味わいで、炒めものに向いています。しかし、本場の島豆腐は簡単には手に入らないので、ここではスーパーで買えるもめん豆腐を十分に水切りして使います。
ゴーヤの苦味、豆腐の甘み、肉の旨味などが混ざりあった味わいは夏のご飯のおかずにぴったりです。ポイントは仕上げに鰹節を加えること。鰹節を加えることでゴーヤの苦味が抑えられ、旨味も倍増します。
ゴーヤチャンプルー
豚バラ肉…100g〜
もめん豆腐…1丁(水切りをする)→(Tips 1 豆腐の水切り)
ゴーヤ…1本(250g)
ごま油…大さじ1
鰹節…4g
卵…2個 (ボウルなどに割り入れ、溶いておく)
塩…1g×4
醤油…大さじ½
1.ゴーヤはへたを切り落としてから縦半分に切り、スプーンなどでわたをとりのぞき、5mm厚にスライスする。豚バラ肉は5cm幅に切る。
2.火にかけていない状態のフライパンに豚バラ肉を並べ、中火にかける。表面に肉汁が浮いてきたら、塩1gを振って混ぜ、バットなどにあける。
3.そのままのフライパンで豆腐を一口大(目安は3cm)に手でちぎり入れ、中火でじっくりと焦げ目がつくまで焼く。塩1gをパラパラと振り、さきほどの豚肉があるバットに移す。
4.フライパンにごま油大さじ1を入れ、中火にかけてゴーヤをじっくりと焼く。時々、かき混ぜ、全体がしんなりしてきたら鰹節4gを加え、ざっくりと和える(Tips 2 ゴーヤの苦味は鰹節で抑える)。
5.バットの豚肉と豆腐をフライパンに入れ、炒めあわせてから残りの塩と醤油大さじ1/2を加える。最後に卵を加えて、ざっくりと混ぜ、卵に火が通ったら出来上がり。
★レシピの解説
【Tips 1】豆腐の水切り
豆腐はほとんどが水分なので、ある程度水気を抜いてから料理に使うことは多々ありますが、ゴーヤチャンプルに使う場合はしっかりと水分を抜くことが重要です。短時間で水分を抜くには電子レンジが有効。豆腐をキッチンペーパーで包み、500Wで2分加熱してから500g程度の重しをして、30分ほど置くと重量比で15%〜20%ほど水分が抜けます。
電子レンジがない場合は3〜5分間ほど茹で、あとは同様の手順を踏めば豆腐の水分を効率的に抜くことができます。このあと、豆腐をじっくりと焼くことで最終的に豆腐の水分は30%近くまで抜け、島豆腐に負けないような濃厚な味わいになるのです。
【Tips 2】ゴーヤの苦味は鰹節で抑える
このゴーヤという野菜。ニガウリという別名の通り、強い苦味が特徴。調理の前に下処理をして、苦味を抑えるのがセオリー。
よく「ワタの部分に苦味があるのでよくとりのぞきましょう」と言いますが、それは迷信です。実際、味見をするとワタの部分はそれほど苦味が強くなく、むしろ外側にいくほどに苦味が強くなることがわかります。この外側の部分をピーラーなどで物理的に除去することでも苦味を抑えることができますが、それでは可食部が減ってしまいます。
ゴーヤの苦味を抑えるためによく用いられるのが、水にさらすという方法です。ゴーヤの苦味は水溶性のため、水に晒すことである程度は抜くことができ、ゴーヤを薄切りにしたり、塩で揉んで細胞を壊すとさらに効率よく苦味が抜けます。問題点はゴーヤの風味も一緒に抜けてしまうことです。
ゴーヤの風味を活かしつつ苦味を抑える秘密兵器が『鰹節』です。『かつお節によるゴーヤの苦味低減』(前橋健二他)という論文ではゴーヤの苦味成分を鰹節が吸着するので苦味が感じにくくなることが示唆されています。
また、このレシピではごま油を多めに使うことでも、苦味を抑えています。こちらも同様に油によって覆われることで舌に苦味物質が触れづらくなる効果を狙ったものです。
ちなみに苦いのが嫌いな方は「薄めに切ったゴーヤーを」「1%の塩で揉み」「水でさらす」という下処理をした上で、さらに鰹節をまぶせば苦味をかなり抑えることができるので、試してみるのもいいでしょう。とはいえゴーヤの良さは苦味にあるのも事実。苦味は慣れることではじめておいしく感じられる味覚なので、はじめのうちは苦手でも経験を積むうちにおいしく感じられるかもしれません。
また、別の研究では日々の生活のなかでストレスを強く感じている人ほど、苦味をおいしく感じやすいことが示唆されています。このあたりストレスを感じることで苦味を感じにくくなったのか、あるいはストレスによって嗜好が変わり、苦味をおいしく感じるようになったのかはわからないのですが、昔、ゴーヤを食べて苦手だな、と思った人も忘れた頃に挑戦してみると「あれ、意外とおいしいかも」と思うかもしれません。
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