ウフマヨはゆで卵にマヨネーズソースをかけたフランスの家庭料理。ビストロなどでも定番の前菜。この料理を通じて学べるのは『ゆで卵の作り方』と『マヨネーズの原理』です。
上手に茹でたゆで卵はそうでないゆで卵よりずっと濃厚。そこに厚みのある味のマヨネーズが加わると、いつものゆで卵がずっと洗練された味に変わります。今回はシンプルに仕上げていますが、マヨネーズソースに刻んだアンチョビや黒オリーブなどを混ぜるとさらにおいしくなります。ちなみにフランスでは仕上げにパプリカを振るのも定番です。
ウフマヨ
卵…2個(冷蔵庫から出したてのものを使う)
マヨネーズ…40g
牛乳…小さじ1〜
黒胡椒…適量
1.卵は冷蔵庫から出したてのものを使い、ピンや針の先などで卵の尖っていない方に穴を開ける。ピンや針がない場合は尖っていない方を平らな台などに打ちつけ、ヒビを入れる(割らないよう注意)。(Tips1 ゆで卵は穴を開けてから茹でることでなめらかな食感に)
2.鍋にたっぷりの湯を沸かし、弱火に落とす。ザルやレードル(おたま)、スプーンなどを使って卵を静かに入れる(乱暴に入れると卵が割れるので注意)。はじめの2分間はときどきゆで卵を転がし、そのままの火加減で6分30秒〜7分茹でる。
さきほど空けた穴から空気が抜けているのがわかります。
3.マヨネーズソースをつくる。マヨネーズ40gを牛乳で伸ばし、濃度をゆるめる。
4.時間になったら卵を鍋から取り出して、氷水で急冷する。(Tips 2 急冷することで卵の殻を剥きやすく)
5.スプーンの背で叩き、全体にヒビを入れる。
6.蛇口の下で殻と白身のあいだに水を入れながら殻を剥いていく。
7.皿に盛り、マヨネーズソースをかける。卵が転がってしまう場合は底になる部分を少し切り落とすと安定する。仕上げに黒胡椒を振りかける。
★レシピの解説
【Tips 1】ゆで卵は穴を開けてから茹でることでなめらかな食感に
ゆで卵は意外と難しいもの。それでもいくつかのポイントを理解しておくと、失敗を回避することができます。おいしいゆで卵とそうでないゆで卵の違いはほんのちょっとした部分で生まれます。ちょっとだけ注意をして、いつもの工程を見直してください。
まず卵は冷蔵庫から出したてのものを使います。冷蔵庫は2℃〜6℃のあいだの一定の温度に保たれているので、加熱条件を揃えることができるからです。もしも、常温に置いておいた卵を使用する場合は加熱時間を1分ほど短くします。
次に卵のお尻に穴を開けておきましょう。卵を茹でていると殻が割れて、中身が飛び出してしまった……という経験はありませんか? 穴を開けておくとそこから空気が抜けるので、殻が割れるのを防ぐことができますし、さらに白身に含まれる二酸化炭素が加熱中にゆっくりと抜けていくので、なめらかに茹で上がるというメリットも。
卵の凝固温度は100℃よりも下なので、強火で茹でる必要はありません。卵を入れる前に弱火に落とし、蓋はしないで茹でましょう。沸点より下の温度で茹でることでも殻が割れるリスクを下げることができます。
今回は6分30秒茹でていますが、使用する卵の大きさによっては「もう少し火を通したいな」ということもあるかもしれません。その場合は少しずつ茹で時間を伸ばしてみてください。そんな試行錯誤はしたくないという場合は茹で時間を計算するための式もあります。→完璧なゆで卵の作り方
【Tips 2】急冷することで卵の殻を剥きやすく
ゆで卵を冷水につけることで、中身の卵が縮みます。それによって殻の内側の卵殻膜と白身のあいだに隙間ができるので、殻が向きやすくなります。そこに水を入れることで、さらに簡単になるので、蛇口の水をかけながら丁寧に剥いていきましょう。
また、殻の剥きやすさは一般に鮮度によっても影響を受けるとされ、古い卵のほうが剥きやすいとされています。しかし、以前、産みたての卵で簡単な実験を行ったところ、鮮度による差はほとんど見られませんでした。実験の諸条件が変われば結果もまた違うかもしれませんが、実際の料理としては鮮度よりも茹でたあときちんと氷水につけることのほうが有効のようです。
市販のマヨネーズでも問題ないのですが、手作りするとひと味もふた味も違います。夏休みの実験をする感覚で、お子さんと一緒に挑戦してみるのはいかがでしょうか。マヨネーズにはこんなに油が入っているのか、という食育的な見地もありますが、なにより乳化の原理が学べるからです。今回はマスタードを入れずに甘口に仕上げました。大人が食べるのであればディジョンマスタードを小さじ1加えたほうがおいしいと思います。
手作りマヨネーズ(甘口)
卵黄…1個(常温に戻すか、卵ごとぬるま湯につけて温度を上げておく)
はちみつ…7g
米酢…大さじ1
サラダ油…150cc
塩…小さじ1/2(3g)
1 .ボウルに卵黄1個、塩小さじ1/2、はちみつ7gを準備する。(マスタードを入れるならここで!)
2.泡立て器で混ぜながらサラダ油を数滴ずつ入れて、混ぜ合わせていく。油が混ざり見えなくなったことを確認してから次のサラダ油を注ぐようにする。
3.硬くなり混ぜにくくなったら米酢を少し加えて緩める。
4.さらに残りのサラダ油を糸をたらすように加えながら混ぜていく。
5.すべてのサラダ油が入ったら、残りの米酢を加えて伸ばしてでき上がり。
油と酢を混ぜると一瞬は混ざったような気がしますが、時間を置くと分離してしまいます。〈水と油〉という慣用句の通り、この2つの物質は溶け合わないからです。しかし、そこに卵黄などのタンパク質を加えることで混ぜあわせることができます。これがいわゆる乳化という状態です。
乳化は様々な食材や料理に関わってくるため、マヨネーズづくりを通して乳化を学ぶと料理が上達します。油と酢を乳化させるための1つ目のコツは材料をすべて室温に戻しておくことです。なかでも重要なのは卵黄の温度。水と油はそのままでは反発してしまいますが、卵黄を加えることで油滴をタンパク質が覆い、この二つが結びつきます。しかし、冷蔵庫から出したての卵黄は分子の動きが鈍く、油滴全体を覆えない場合があるのです。そうなってしまえば分離の原因になるので、卵黄と同様に油も冷蔵庫に入れずに(入れないとは思いますが)常温のものを使いましょう。
撹拌していくときは油を細かくして、卵黄のなかに混ぜ込んでいくイメージです。マヨネーズのような乳化した液体(油と水が混ざった液体)のことを乳濁液といいますが、乳濁液の油の粒子の大きさは撹拌するエネルギーによって変わります。力強く、そして素早く混ぜれば混ぜるほど、油の粒子が細かくなり、コシが生まれ、安定性も増します。
そのため、100円ショップで売っているような頼りない泡立て器を使うとエネルギーが伝わらず、失敗の原因になります。おすすめは不均一なワイヤーを数多く備えた泡立て器です。マヨネーズはすべての乳化ソースの基本。毎回、手作りする必要はないかもしれませんが、自分でつくってみる価値は充分にあります。