今日は基本の酢飯の作り方とちょっとした裏技をご紹介します。いくつかのコツを知っておくだけで、失敗するリスクはぐっと減ります。酢飯が上手につくれると料理のレパートリーが広がりますよ。
酢飯にあわせたのは鰹。4〜5月の初鰹もいいですが、脂がのりはじめるのは8月から9月にかけて。今回は寿司の基本である煮切りをつくり、血の多い魚である鰹にあわせてすりおろした玉ねぎで風味をつけました。冬になればブリなどを使ってもおいしくつくれます。ネトっとした鰹の身とさっぱりした強めの塩味の酢飯をあわせた小丼です。
鰹の小丼
酢飯(作りやすい分量)
米…2合(300g)
水…360cc
すし酢
米酢…60cc
砂糖…24g(グラニュー糖なら大さじ2 上白糖なら大さじ3弱)
塩…9g (小さじ1+1/2)
鰹の玉ねぎ醤油(2人前)
鰹(刺身用)…300g(皮がついていれば外す。皮は塩を振って焼くとよい)
青じそ(大葉)…適量(千切りにする)
煮切り
酒…60ccを30秒沸騰させ40cc程度まで煮切る(アルコール分を飛ばす)
醤油…30cc(大さじ2)
玉ねぎのすりおろし…小さじ1〜2
1.米はよく研ぎ、分量の水(普通に炊飯するときよりも水を1割減らす)とともに炊飯する。炊飯器に酢飯モード、もしくは硬めがあればそれで炊く。
2.すし酢をつくる。米酢60cc、砂糖24g、塩9gを泡立て器で混ぜ合わせて溶かす。溶けづらくてもしばらく混ぜていれば溶けるので、鍋で温めたりレンジにかける必要はなし。
3.炊きあがった米の鍋、もしくは炊飯器の内釜にすし酢をまわしかけ、全体を混ぜる(Tips 1 酢飯の裏技)。30秒蓋をして、馴染ませてから、大きいバット(飯台)かボウルにうつして、米をなるべく広げる。
うちわで扇いで、蒸気を飛ばす。バットやボウルが小さい場合はしゃもじで切るように混ぜて、さらにうちわで20秒から30秒ほど扇いで蒸気を飛ばす。(酢飯の温度の目安は50度くらい)
4.酒60ccを火にかけ、アルコール分を飛ばしたところに(沸騰してから10秒〜20秒が目安)醤油30ccを加え、玉ねぎのすりおろしを混ぜて冷ます(Tips2 煮切りのひと手間)。
5.鰹は1cmの幅に包丁の刃全体を使うようにして刺身状に切る。
6.5の刺身を4の煮きりに3分間漬ける。丼に酢飯を敷き、そこに刺身を並べ、さらに酢飯、刺身を並べる。最後に青じそ(大葉)の千切りを載せる。
★レシピの解説
【Tips 1】酢飯の裏技
酢飯用のご飯はぱらりとした食感が信条。工程としてはあとから加えるすし酢の分量分の水をあらかじめ少なくして炊き、最後にすし酢を米粒に吸収させます。まずは硬めに炊きあげることが最重要課題です。
すし酢の配合は様々で、作り手の個性が出ます。ここでは一般的な酢飯の配合をご紹介していますが、塩分が気になるという方は減らしても結構です。しかし、酢飯のおいしさは塩で決まる、ということもまた事実。ここでは米酢を使っていますが、お寿司屋さんのなかには酒粕からつくる赤酢を使う店も多くあります。赤酢には甘みがあるのでこれほど砂糖は入れなくても大丈夫。もしも赤酢が手に入ったら使ってみてください。
炊きあがったばかりのご飯はデンプンがα化(糊化)したばかりの膨らんだ状態。この状態ですし酢をふりかけると、米は最も水分を吸い込みます。しかし、冷めてしまうとデンプンがβ化(老化)し、縮んだ状態になるので、すし酢(水分)が入るこむ余地がなくなってしまいます。
家庭で酢飯をつくる場合、米の量が少ないために温度がすぐに下がってしまいがち。そこで裏技として、炊飯器の内釜の状態でまず、すし酢を混ぜ合わせてしまいます。一呼吸おいて酢が染み込んだら、別の容器にうつしてうちわで扇ぎ、蒸気を抜きます。すし酢を混ぜる工程と、うちわで扇ぐ工程をわけているわけです。この裏技を使えば失敗する確率はかなり減ります。
子供の頃、酢飯を作る時にうちわであおぐ作業を手伝った経験はありませんか? 実際にはうちわで扇ぐ作業は酢飯の温度を下げ、酢がそれ以上吸収されないようにしつつ、蒸気を飛ばし、味が落ちるのを防ぐ作業なので、実はここはたいして重要な工程ではありません。大事なことはなによりもご飯が熱いうちに酢を混ぜ、吸収させることです。むしろ、温度を下げすぎるとやはりデンプンが硬くなり、味が落ちてしまうので、扇ぎ過ぎには注意してください。目安は人肌と言われていますが、それよりもやや高めの50度(マグロや戻り鰹など脂の多い魚種はもう少し高い温度でも)くらいがおいしい温度帯です。
また、最後にうちわで扇ぎながら混ぜる工程では、木製のすし桶をつかえば木が水分を吸い取るので、ぱらりと仕上がります。なければボウルやバットを使いますが、大きめのものがいいでしょう。
【Tips2】煮切りのひと手間
酒と醤油などをあわせて加熱したものを煮切りと呼びます。お寿司屋さんのなかには酒を使わずみりんを使って甘みを出したり、昆布や鰹節を加えて旨味を足しているところもあります。握ったあとの種の表面に刷毛で醤油を塗っている光景を見たことがある人も多いと思いますが、あれが煮切りです。生醤油を使うよりも香りもおとなしく、まろやかな味になります。
ここでは煮切りに玉ねぎのすりおろしを加えました。鰹特有の血っぽい匂いをカバーするためです。好みでにんにくのすりおろしを少量加えても、この匂いはかなり軽減されます。お寿司屋さんでは匂いの強いにんにくは普通、使いませんから、家庭ならではの味になるかもしれません。
酢飯とあわせなくとも、鰹の漬けは立派なおつまみになります。酢飯を食べるとお腹がいっぱいになってしまうという方はこちらもいいでしょう。