焼きそばは水分を飛ばして麺のコシを引き出せ!

今回のテーマは『焼きそば』。誰でもそれなりの味につくれる料理ですが、水分のコントロール法をおぼえると、もちもちしたコシのある焼きそばがつくれます。

夏の料理といえば焼きそば。縁日の屋台や鉄板BBQで活躍する料理です。焼きそばをおいしくつくるためのコツは一にも二にも水分量の調節にあります。水分が多いとベタッとした仕上がりになってしまいますし、逆に少ないと喉に詰まるような出来上がりに。

以前、noteに焼きそばを研究した記事をアップしましたが、そちらは通常のソース焼きそばのレシピ。今回はそれを簡略化した塩味+ソース味のさっぱり焼きそばをご紹介します。さっぱりの秘密は具材と麺をわけて加熱し、具材にはソース味を絡めないこと。

肉と野菜を炒めるところまでは、以前紹介した『肉野菜炒め』と同じ。今回は低温で湯通しする工程は省略していますが、その手順を踏むとよりおいしくできます。とてもあっさりした仕上がりにしたので、卓上にソースを置いて、好みでかけながら食べるというのもいいでしょうし、レモンなどの柑橘を絞って食べるのもおすすめです。


さっぱり塩+ソース焼きそば

材料(2人前)

豚バラ肉…100g
キャベツ…1/4個(150g目安)
玉ねぎ…1/2個(100g目安)
塩…小さじ½
胡椒…少々
焼きそば用の麺…2パック
中濃ソース…大さじ2
醤油…大さじ1
砂糖…小さじ1
酒…大さじ1


1.中濃ソース、大さじ2、醤油大さじ1、砂糖小さじ1を混ぜ合わせておく。豚バラ肉は5cm幅に切り、キャベツはざく切り、玉ねぎは5mm厚のくし切りか薄切りにする。テフロン加工のフライパンに豚バラ肉を並べ、中火にかける。分量の塩から一部を振り、片面に焦げ目がついてきたら裏返す。(Tips1 適量の塩の意味)


2.そこに野菜を加えて1分間炒め、残りの塩、胡椒で味をつける。ボウルに移してから、もう一度味見をして、これだけ食べてもおいしい状態にしておく。

野菜は長時間加熱すると水分が出てくるので、一度取りだします。好みで塩を足すなどして、落ち着いて味を整えましょう。


3.同じフライパンを中火にかけ、ごま油大さじ1と焼きそばの麺を入れて片面を焼く。(Tips2 水分を飛ばして麺のコシを引き出す)


4.焦げ目がついたら裏返して、酒大さじ1を加えて、麺をほぐす。1で混ぜ合わせておいたソース類を加え、さらにほぐしながら混ぜる。(TIps3 水ではなく酒を加えると効率よく水分が飛ぶ)


5.具材を戻して、ざっくりと和える。器に盛り付けて、紅生姜、青のりを添える。


★レシピの解説

【Tips 1】適量の塩の意味

このような場面でレシピなどに「適量の塩」という表記がよく出てきます。ここではまず肉だけに適量の塩で味付けし、残りの野菜を加えてからもう一度味を整えています。肉の加熱中に塩を加えることと、加熱後に塩を振りかけるのではどう違うのでしょうか?

塩は温度が高いほど早く浸透しますが、加熱が終わった状態になるとなかなか中まで浸透しません。そこで焼いている最中に塩を振り、肉に味をつけているのです。だったら、はじめから肉に塩を振ってから焼けばいいのではないか、と思うかもしれません。そのとおりです。しかし、このような薄切りの肉の場合、塩を揉み込むと出てきた水分で肉同士がくっついてしまうので、フライパンの上で広げるのがやや面倒なことも。そのため料理ではこのように片面を焼きながら塩を振り、味をつけるという場面がよく出てきます。


【Tips 2】水分を飛ばして麺のコシを引き出す

専門店で食べる焼きそばには、蒸してから扇風機などで急冷し、手でほぐした蒸し麺が使われています(西日本に行くとゆで麺を使っているお店もありますし、横手焼きそばなどにはゆで麺が使われています)。家庭用として市販されているものは蒸している工程で水分を含ませ、それを急冷し油をまぶしてから、パック詰めしたものです。

茹でた中華麺とは異なり、蒸し麺は加熱中、デンプンが吸い込む水分量が少ないので、特有のコシが生まれます。しかし、市販の焼きそばの麺は炒める際にほぐすために水分を加える必要があるので、コシが弱くなりがち。ここでは事前に麺を焼くことであらかじめ水分を取り除き、麺がやわらかくなるのを防いでいます。ふっくらとしたやわらかい焼きそばが好み、という方は麺をほぐすために加える酒を省略してもいいでしょう。


【TIps 3】水ではなく酒を加えると効率よく水分が飛ぶ

袋の裏側のレシピでは麺をほぐすために水を加えることになっていますが、ここでは酒を加えています。水よりも酒のほうが蒸発が早いので、水っぽくない仕上がりになるからです。また、酒にはアミノ酸等も含まれているので味もよくなります。ちなみに専門店の多くは鰹と昆布の合わせ出汁や鶏ガラスープなどを水の代わりに加えているところが多いようです。旨味を加える工夫なのですが、それは水分を効率よく蒸発できる大きな鉄板だからこそできる技。家庭のフライパンでは酒のほうが簡単なようです。

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樋口直哉

食の博識、樋口直哉さん(Travelingfoodlab.)が、味噌汁、ハンバーグ、チャーハンなどの定番メニューを、家庭でいちばんおいしく作る方法を紹介します。どういう理由でおいしくなるのか、なぜこの工程が必要なのかを徹底的に紹介し、...もっと読む

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    xzr_tw @max_touhu まともなやつも 焼きそば(豚の量も適量)。この人のレシピ大抵おいしいのでオススメ https://t.co/MxHn7rC875 8ヶ月前 replyretweetfavorite

    mori_kananan |樋口直哉 @naoya_foodlab |「おいしい」をつくる料理の新常識 水ではなく酒…! 言われてみたらわかるんだけど、やっぱり言われてみないとわからない…!!! https://t.co/HQh2RcMrdy 8ヶ月前 replyretweetfavorite