夏野菜のイメージのあるトマトの旬は6〜7月のちょうど今頃。このところは特に夏場の気温が高くなったこともあり、8月になるともう美味しいトマトがつくれなくなってきました。スーパーに行くと高品質なトマトが安価で売られているので、今のうちに楽しんでおきましょう。
今日はちょっと方向性を変えて、トマトをコンポートにします。コンポートとは蜜煮のこと。控えめな甘さが上品なデザートです。普通のトマトがフルーツトマトのような高級な味になります。
ポイントは「時間をかけて甘味を染み込ませること」さっぱりとしているので、朝食にもどうぞ。
トマトのコンポート
トマト…(小)4個(500g〜600g)
グラニュー糖…60g(なければ上白糖でも可)
水…500cc
レモン…半分
作り方
1.トマトは包丁でヘタをとり、熱湯に15秒〜20秒くぐらせてから、冷水にとり、皮を剥く。(=湯剥き)
湯剥きについてはこちらの記事でくわしく説明しています
2.鍋に水500cc、グラニュー糖60g、レモン半分を絞り入れ、沸騰させる。(Tips1 グラニュー糖を使うことでさらりとした甘さに)
3.保存容器に1のトマトを並べ、2のシロップを注ぎ入れる。キッチンペーパーを落とし、蓋をしてそのまま1時間ほど放置し、粗熱をとる。冷蔵庫に入れ、一晩(8時間以上)冷やす。(Tips 2 熱い液体を注いで予熱で調理する)
4.器に盛り付け、スプーンで食べるか、切ってから器に盛り付ける。
★レシピの解説
【Tips1】 グラニュー糖を使うことでさらりとした甘さに
スーパーに行くと様々な種類の砂糖が売られていますが、消費量が最も多いのは『上白糖』です。普段の料理にはこちらを使っている方も多いでしょう。上白糖はショ糖に転化糖(ブドウ糖+果糖)を1%程度加えてしっとりとさせたもの。ほんのわずかに入っている転化糖の影響でコクのある甘味が特徴です。
少し茶色がかった『三温糖』は何回か加熱をしている関係上、うっすらと色がついているのが特徴。味は『上白糖』とほとんど同じですが、煮物などに使われます。
このレシピで使用しているのは『グラニュー糖』。『グラニュー糖』は転化糖をほとんど含まない純粋に近い結晶で、さらりとした甘味が特徴。もちろん上白糖でもグラニュー糖でも砂糖は砂糖なのでどちらも同じように使えますが、デザートにはぜひグラニュー糖を使いたいところ。ちなみに日本以外の国では砂糖=グラニュー糖を指し、さっぱりとした甘味は料理にも便利です。砂糖は腐らないので、思い切って購入することをおすすめします。
【Tips 2】熱い液体を注いで予熱で調理する
トマトが煮崩れるのを防ぐために熱いシロップに浸して、予熱で調理しています。グツグツ煮込まないと味が染み込まない、というイメージがあるかもしれませんが、時間をかけることで味は少しずつトマトの内側に染み込んでいきます。トマトの細胞液よりも糖液の方が濃度が高いため、糖分がトマトに入り、逆にトマトの細胞液はシロップに出てきます。調味料が素材の内部に仕込みこんでいく現象を〈拡散〉と呼びます。拡散には時間がかかるので、ここでは冷蔵庫に一晩トマトを冷やし、味を馴染ませています。
さて、よく「煮物は冷めるときに味がしみこむ」という説がありますが、調味料は温度が高いほど早く浸透するので実際には誤りです。ただ、この料理のように冷ましながら味を含ませることで煮崩れを防いだり、調味液が煮詰まるのを防ぐなど、冷ましながら味を含ませる技法には様々なメリットがあります。
余談ですがトマトのおでんっておいしいんですよね。その場合も同様にトマトの皮を湯剥きし密閉容器に並べ、塩や醤油で味付けた熱いだし汁を注ぎ、冷ましながら火を入れると上手につくることができます。甘味と塩味の違いはあれ、原理は一緒です。
【アレンジ】トマトのコンポートゼリー
トマトのコンポート
コンポートの煮汁…300cc
ゼラチン…5g
1.コンポートの煮汁をわけ、鍋に入れて沸かす。火を止め、ゼラチンを加えて、混ぜて溶かす。ボウルに移して、氷水にあてるなどして粗熱をとり、冷蔵庫で冷やし固める。(参考:ゼリーの記事)
2.トマトを角切りにして、器に盛り、上に崩した1のゼリーをのせる。
一工夫して煮汁をゼラチンで寄せてみました。ゼリー状にすることで口のなかでの滞留時間が長くなり、トマトの香りをより強く感じるはずです。
今回の煮汁は水と砂糖だけを使ったシンプルな配合ですが、水の一部を白ワインやオレンジジュースに変えるとよりおいしくなるか、と思います。色々と試してみてください。
<次回は6月22日(土)に更新予定です>