市販のカレールーを使ったカレーのつくり方をご紹介します。一度、このレシピでつくるとカレーという食べ物の勘所が理解できるはずです。ポイントは余分なものを加えないこと。ブイヨンやスパイス、溶けやすい状態に加工した油脂と小麦粉があわさったカレールーはすでに完成された調味料。つい隠し味などを入れたくなりますが、余計な工夫はしないほうがその味は素直に出ます。市販のカレールーは旨味が十分すぎるほど含まれているので、このレシピでは肉も入れていません。
野菜を蒸し炒めにし、水で煮てから火を止めて、カレールーを加えていきますが、それぞれの工程にちょっとしたコツがあります。大きなポイントは「野菜の切り方」と「カレールーの扱い」の二つです。
野菜カレー
玉ねぎ…2個(300〜350g)
ニンジン…1本(100g)
オリーブ油…大さじ1
じゃがいも…1個(120g程度)
ナス…2本(160g程度)
水…700cc
カレールー…半パック(ジャワカレー中辛を使用)
作り方
1.野菜を切る。玉ねぎは一個分は薄切りに、もう一個はくし切りにする。ニンジンは小さければそのまま2mm厚の輪切りに、大きければ半分に切ってから2mm厚の半月切りにする。じゃがいもは皮を剥き、縦に四等分に切ってから7~8mm厚のいちょう切りにする。ナスはへたを落とし、1cm厚にスライスする。(Tips1 野菜の繊維方向を意識して切ることで食感が良くなる)
2.煮込み用の鍋にオリーブオイル大さじ1を敷き、薄切りにした1個分の玉ねぎとニンジンを入れて中火にかける。蓋をして蒸気が出てきたら弱火に落とし、時々かき混ぜながら5分間加熱する。しんなりしたら残りの野菜を加えて、さらに5分間加熱する。
3.分量の水を加えて強火にし、沸騰したら火を弱火に落とし、野菜がしっかりとやわらかくなるまで15分間煮る。
4.火を止め水面が落ち着いたら、砕いたカレールーを加えてゴムベラで混ぜて溶かす。(Tips2 火を止めてからカレールーを加える理由)
5.カレールーが溶けたことを確認してから再び弱火にかけて時々底をかき混ぜながら10分間煮る。
★レシピの解説
【Tips1】野菜の繊維方向を意識して切ることで食感が良くなる
子供の頃、キャンプでつくったカレーに入っていた野菜は乱切りという切り方だったと思います。乱切りにすると野菜の味は楽しめますが、カレーとしての一体感は欠けるので、このカレーでは野菜は小さめに切っています。
玉ねぎは薄切りとくし形の二種類を用意します。薄切りは溶けてカレーの甘味となり、くし形は具材とするためです。ニンジンは硬いのでやや薄めに切るのがコツ。スプーンに乗る程度の大きさが目安。じゃがいもの切り方は肉じゃがを作ったときと同じ切り方です。
このカレーで肉の代わりの働きをするのがナス。精進料理でも活躍するナスはそれ自体に味はとくにありませんが、入ると全体に厚みを与えてくれる名脇役です。肉の代わりですからやや大きめです。
野菜は煮崩れさせたくないくし形の玉ねぎ以外、繊維を断ち切るように切ります。これだけで口に入れた時の食感が良くなります。
【Tips2】火を止めてからカレールーを加える理由
カレールーは小麦粉と油脂をあわせたもの。溶けやすい状態に加工されていますが、それでも沸騰したところに入れると滑らかさが失われてしまいます。沸騰したところにルーを入れると溶ける前に外側の小麦粉に火が通ってしまい、ダマになってしまうからです。ダマになってしまうと、内側の小麦粉が水分を吸収することができないので、舌触りが悪くなります。だから、カレールーは火を止めたところに加えて、溶かしてから加熱する必要があるのです。
カレールーを入れる前までは焦げる心配はありませんが、とろみがつきはじめると鍋底が焦げるおそれがあります。そこで時々、鍋底をかき混ぜながら10分間加熱します。小麦粉はしっかりと火を通した方がおいしいので、ルーを加えた後にもじっくりと煮込みましょう。
10分煮て、とろみがついたら出来上がりです。可能であれば火を止めてさらに5分ほど予熱で加熱すると全体が馴染むと思います。
この作り方であれば各メーカーが出しているルーの味の違いがよくわかります。違うメーカーが出している同じ辛さのルーを混ぜることで、複雑味が出せるので工夫してみるのもいいでしょう。ルーを混ぜる場合は甘口なら甘口、中辛なら中辛という具合にカレーの辛さを揃えるのがコツです。
豚肉や鶏肉、牛肉を加える場合もまず、それぞれのルーの味を憶えて味の基準をつくってからがいいでしょう。市販のカレールーはやや「旨すぎる」味なので、意外と肉がなくても平気かもしれません。
<次回は6月15日(土)に更新予定です>