濃厚でクリーミーな究極の卵サンド

44回目のテーマは、お花見など行楽シーズンにうってつけのサンドイッチ。「卵サンド」と「ピーナッツバターとバナナのサンドイッチ」をご紹介します。卵サンドは、ゆで卵でなくスクランブルエッグを使うことで卵の風味がいきた味わいになります。スクランブルエッグは、ゆっくりと火を通すことが最大のコツ。

春の行楽シーズンにぴったりのサンドイッチ。サンドイッチさえ準備できればあとはハムやチーズなどを購入し、バッグにスパークリングワインとプラスチックコップを詰め込めば気分のいいピクニックが楽しめます。

完璧なサンドイッチをつくるために必要なのは「パンと具材のバランス」と「水分のコントロール」です。

具材はサンドイッチ用の10枚切りのパンの厚みを超えないように注意し、二枚のパンの割合が2に対して、具材の割合が1を守ります。また、持ち歩いているあいだにパンが具材の水分を吸ってぐちゃぐちゃにならないように、パンにはバターかマヨネーズを塗っておきましょう。油脂で表面をコーティングすることで、パンが水分を吸い込むのを遅らせることができるからです。

もしくはハムやローストビーフ、卵といった水分の少ない材料を挟むのも一つの方法です。今回、ご紹介するのは究極の卵サンド。コンビニエンスストアなどで購入できる通常の卵サンドは、ゆで卵を包丁で粗く刻み、マヨネーズで和えたもの。このスタイルは手軽ですが、弱点はマヨネーズの味が強く、卵の持ち味が生きないこと。究極の卵サンドはゆで卵ベースではなく、スクランブルエッグをはさみます。


究極の卵サンド

材料(2人前)
卵…4個
砂糖…小さじ1
マヨネーズ…大さじ1
10枚切りの食パン…4枚
バター…15g(有塩 無塩を使うなら塩を少量加える)
練り辛子…3g(チューブ)

作り方

1.卵をボウルに割り入れ、砂糖を加えて、泡立て器かフォークでよく溶く。室温に戻してやわらかくしておいたバターと辛子を混ぜ合わせて、からしバターをつくっておく*。
*からしバターがうまく作れないという方はこちら


2.弱火にかけたフライパンに卵液を注ぎ、常にかき混ぜながら、ゆっくりと火を通す。(Tip1 卵はゆっくりと火を通すことで濃厚に)


3.固まってきたらボウルに移して、冷水で温度を下げる。マヨネーズを加えて、塊を細かくするようにさらに混ぜる。


4.それぞれのパンにからしバターを薄く塗り、片方に3のスクランブルエッグを載せる。


5.パンでスクランブルエッグを挟み、ラップをして冷蔵庫で30分以上冷やして落ち着かせる。(落ち着かせることで切りやすくなります)


6.耳を切り落とし、4つに切り分ける。


★レシピの解説

【Tips1】卵はゆっくりと火を通すことで濃厚に

スクランブルエッグづくりは、ゆっくりと火を通すことが最大のコツです。調理科学に詳しいハロルド・マギーさんは「低温と忍耐」と書いていますが、たえずヘラで混ぜながら加熱をすることで下側だけ固まったりせず、クリーミーな仕上がりになります。

スクランブルエッグの理想的な状態は凝固した濃厚卵白の塊が細かく分散し、クリーミーな卵黄と水様卵白に混じった状態*。そのためには卵がかたまり始めたら鍋を火から外すなどして温度を調整し、たえず混ぜ続ける必要があります。IHコンロの場合は鍋の底全体が熱くなるのでより注意が必要です。余熱でさらに火が通るので、今回は冷水に浮かべたボウルに鍋の中身をうつし、加熱を止めています。
*濃厚卵白と水様卵白については、こちらの記事を参照。

砂糖が入ったスクランブルエッグはやや甘めの仕上がりですが、これはマヨネーズの酸味とのバランスをとるため。最終的にはからしバターで味のバランスをとっているので、単体で味見をして「失敗した……」とがっかりしないでください。


おまけ

切り落とした耳は丸く成形すると食べやすいです。

こんな風にラップに耳を並べて……

キャンディ状にくるくるとまとめます。

切るとこんな感じ。切り落とした部分にも卵が残っていますし、耳の部分まできちんとバターを塗っておくことでおいしいサンドイッチになります。


【アレンジ】ピーナッツバターとバナナのサンドイッチ

お子さんには甘めのサンドイッチが喜ばれるかもしれません。ピーナッツバターとバナナのサンドイッチはアメリカでは定番の組み合わせ。

材料(2人前)
サンドイッチ用のパン…4枚
バナナ…2本
ベーコン…1枚〜2枚
ピーナッツバター…適量

作り方

1.ベーコンは油をしかないテフロン加工のフライパンに並べ、フライ返しなどで抑えながら弱火でじっくりと加熱する。


2.ピーナッツバターを塗ったパンにスライスしたバナナを並べる。


3.さらに焼いたベーコンを並べる。好みで黒胡椒を振ってもよい。


4.パンで挟み、ラップで包む。ラップごと切ると切りやすい。

サンドイッチの起源について、こんな話を聞いたことはありませんか? カードゲームに熱中したサンドイッチ伯爵(ジョン・モンタギュー)が、食べながら食事ができるように命じてつくらせた、というものです。

ビー・ウィルソンの著作『サンドイッチの歴史』によると、伯爵は実際には遊んでいたわけではなく、仕事に追われて時間がなく、あらかじめ肉を挟んだパンを準備させていたようです。もちろん、それ以前にもパンでなにかを挟んで食べる料理は当たり前のように存在していましたが、サンドイッチの新しい点は食卓から食事を開放した点にあった、というのがウィルソンの考察です。ここには発明やイノベーションの本質が隠れている気がします。

<次回は3月23日(土)に更新予定です>


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樋口直哉さんが記事でいくつかを講評します


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樋口直哉

食の博識、樋口直哉さん(Travelingfoodlab.)が、味噌汁、ハンバーグ、チャーハンなどの定番メニューを、家庭でいちばんおいしく作る方法を紹介します。どういう理由でおいしくなるのか、なぜこの工程が必要なのかを徹底的に紹介し、...もっと読む

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    コメント

    mougyu_dasen こ・・・これは!!!作りたい! https://t.co/RjZDtBte8P 12ヶ月前 replyretweetfavorite

    c___v スクランブルエッグのサンドイッチは今まであんまり好きじゃなかったけどこれはすごく美味しそうだ…明日食べよ😋 12ヶ月前 replyretweetfavorite

    Tokyo_Cafemania 樋口直哉さんの卵サンド。これまでに試してきたレシピの中でベストの出来栄えで、2日続けて作ってしまった。 10枚切りパン、忍耐の弱火、氷水。すべてレシピ通りにすると、マヨネーズ味ではない最高の卵サンドになる。 https://t.co/ejIFI0vv2t 12ヶ月前 replyretweetfavorite

    musejp これ作ってみたい。 12ヶ月前 replyretweetfavorite