家庭のフレンチトーストは、薄めのパンでうまくいく!

42回目のテーマは『フレンチトースト』。「卵液がしっかり染み込まない」「焦げてしまう」などの失敗もありますが、加熱の仕方や油の使い方で、家庭でもおいしいフレンチトーストがつくれます。アレンジメニューとして「クロワッサンのパンペルデュ」もご紹介しています。

昭和の時代から根強い人気のあるフレンチトーストは週末のブランチにぴったりのメニュー。近年は看板メニューにするカフェも登場するなど、再ブレイクの感があります。

人気の火付け役になったのは『世界一のフレンチトースト』と称されるホテルオークラ東京のフレンチトーストでしょう。レシピ自体は五十年以上前から変わっていないそうですが、ふっくらとしたスフレのようなフレンチトーストはたしかに至高の味。

しかし、オークラスタイルのフレンチトーストは家庭で真似するのは少しむずかしいかもしれません。というのもオークラスタイルは分厚いパンを卵液に丸一日浸し、それをフライパンで焼いた後、オーブンで仕上げるからです。
フレンチトーストの失敗パターンは『パンが卵液を吸わずに白い部分が残ってしまった』や『焦げてしまった』というもの。これらの問題を解決するための方法は一つ。オークラスタイルの分厚いフレンチトーストではなく、はじめから薄めのパンを選ぶことです。これだけでこれらの失敗はほぼ回避できます。今回は他に卵液を早く吸わせる技なども紹介します。それではレシピです。


フレンチトースト


食パン…2枚(8枚切り)
卵…1個
グラニュー糖…20g(もしくは上白糖20g)
牛乳…100cc
サラダ油…小さじ1
バター…10g
メープルシロップ

作り方

1.ボウルに卵を割り入れ、砂糖を加えて泡立て器ですぐに混ぜる。砂糖が溶けたら、牛乳を加えてさらに混ぜる。全体が均一になったら混ぜ終わり。


はじめに砂糖と卵をよく混ぜておくと、白身と黄身が均一に混ざります。砂糖を入れてから時間を置くと、卵黄から水分が抜けダマになってしまうので、砂糖を入れたらすぐに混ぜましょう。


2.食パンに1の卵液を注ぎ、電子レンジ(600w)に10秒〜20秒かける。(Tips1 卵液を早く染み込ませる技)


3.フライパンにサラダ油小さじ1と2のパンを並べ、蓋をしてから弱火にかける。3分を目安に片面に焦げ目がつくまで焼く。(Tips2 フレンチトーストを上手に焼き上げる技)


4.片面に焦げ目がついたら裏返し、蓋をして2分焼く。ここでさらに火を弱くするのもポイント。


5.両面に焼き色がついたら火を止め、仕上げのバターを入れ、からめる。器に盛り、メープルシロップをかけて食べる。この時、粒の大きい塩があればパラパラとふりかけるとよりおいしい。


★レシピの解説

【Tips1】卵液を早く染み込ませる技

今回はパンを半分に切っただけで耳はのこしていますが、好みによっては切り落としてもいいでしょう。その場合、耳は素揚げにしてから砂糖をまぶすとおいしく食べることができます。また、卵、砂糖、牛乳を混ぜ合わせた卵液はお店ではザルなどでこしてから使いますが、はじめの段階で黄身と白身をきちんと混ぜておけばこの手間は省略できます。

さて、卵液にパンを浸しますが、この時の裏技が電子レンジを使うこと。温度が高いほど、食材が水分を吸うスピードが早くなるので、レンジにかければ一気に卵液を吸い込むのです。したがって牛乳を温めてから卵と混ぜ合わせてつくった温かい卵液を使っても、早くパンに卵液を浸透させることができます。ただし、卵が固まってしまうので、加熱のしすぎには注意。


【Tips2】フレンチトーストを上手に焼き上げる技

フレンチトーストは砂糖と卵が入っているので、焦げやすい料理です。焦げるのを防ぐには温度を上げすぎなければいいので、ゆっくりと弱火で加熱すればいいだけです。
弱火では火が通ったか心配……と思われるかもしれませんが、卵液は85℃で完全に凝固するので低温でも大丈夫。弱火でゆっくりと加熱しても、最終的には表面に焼き色がちゃんとつきます。目安としてなかがしっかりと熱くなるまで加熱しましょう。

はじめからバターで焼くのも焦げる原因です。温度が上がるとバターのなかの固形分が焦げてしまうからですが、それを防ぐためにお店では澄ましバターというあらかじめ固形分をとりのぞいた油脂を使います。家庭ではいちいち、澄ましバターをつくるのは手間なので、サラダ油を使うのが簡単。はじめにサラダ油で焼いてから仕上げにバターをつければ香りもつき、焦げないので合理的です。


付けあわせにスライスしたバナナを添えています。トースト用の薄めのパンを選んでいるので加熱時間も短く、手早くできるのがこのレシピのメリット。メープルシロップの代わりにハチミツやジャムを添えたり、バニラアイスクリームと一緒に食べるなどアレンジも無限です。仕上げに粉糖をふりかけてもきれいです。

フレンチトーストのような卵液で浸したパンを焼く手法はフランス料理では「パンペルデュ」(失われたパン)といい、古くなったパンの再利用として活用されてきました。しかし、フレンチトーストは古くなったパンよりも新しいパンのほうがおいしくできます。

パンが古くなると硬くなりますが、これは水分が失われたのではなく、主にデンプンの老化によるもの。その証拠にふわふわのパンと硬くなったパンの重量の差を計ると5%ほど。つまり、パンが硬くなるのは水分損失よりもデンプンの老化による影響のほうが大きいのです。温め直したご飯がパサつくように、パンも以前の状態には戻りません。
そのため、おいしいフレンチトーストをつくりたい、という場合は、パンをあらかじめ160℃のオーブンで5分ほど焼き、水分を飛ばしてから卵液に漬け込むという手法もあります。興味のある方は試してみてください。


【アレンジ】クロワッサンのパンペルデュ オレンジ風味

油脂分の多いクロワッサンを使うとリッチな味が楽しめます。クロワッサンに含まれるバターの脂肪分とバランスをとるために、牛乳を減らし、代わりにオレンジジュースで酸味を加えました。アイスクリームを添えるとデザートにもなるレシピです。

料(2人前)
クロワッサン…2個
卵…1個
グラニュー糖…15g
牛乳…30cc
オレンジジュース…60cc
サラダ油…小さじ1

作り方

1.クロワッサンは横半分に切る。卵とグラニュー糖を混ぜ、牛乳とオレンジジュースを加え、さらに混ぜ、クロワッサンに注ぐ。

2.裏返しながら5分ほど置き、クロワッサンが卵液を吸い込んだら、サラダ油小さじ1を敷いたフライパンに並べ、蓋をして弱火にかける。

3.3分ほど経ち焦げ目がついたら裏返し、反対側を同様に2分焼く。器に盛り付ける。

* クロワッサンはすぐに卵液を吸い込むので、レンジにかける必要はありません。

<次回は3月23日(土)に更新予定です>


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この連載について

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樋口直哉

食の博識、樋口直哉さん(Travelingfoodlab.)が、味噌汁、ハンバーグ、チャーハンなどの定番メニューを、家庭でいちばんおいしく作る方法を紹介します。どういう理由でおいしくなるのか、なぜこの工程が必要なのかを徹底的に紹介し、...もっと読む

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    harico5656 @Hsweet2325 わーありがとうございます😊 樋口直哉さんのレシピで作ったらいつもより美味しそうに焼けました👍 https://t.co/XDBdMByQ50 12ヶ月前 replyretweetfavorite

    _murotani 朝こちらをやらせていただいて、厚切りじゃない方が手軽だしいいなとなった 12ヶ月前 replyretweetfavorite

    CUteNeuron 6枚切りでつくったけどこれはおいしい https://t.co/Q1nD33acsF 12ヶ月前 replyretweetfavorite

    d_forest こ、これは!俺得レシピ! 妻にせがまれてしょっちゅう作ってるので、次はこのレシピでやってみよう。 12ヶ月前 replyretweetfavorite