冷凍は調理の一工程! 保存版「野菜の冷凍術」実践編

前回、野菜を上手に冷凍・解凍するための論理をご紹介しましたが、今回はよく使われる12の野菜の冷凍法と調理への活用の仕方をご紹介します。この連載もベースとなった『新しい料理の教科書』も好評発売中です。

先週、解説した「野菜の冷凍術」の第二弾、今回は実践編です。これまで家庭での冷凍に野菜は不向きと言われてきました。それは冷凍、解凍することで野菜の繊維(とくに維管束)が壊れるなど、性質が変わってしまうから。
しかし、考え方を少し変えれば、野菜の冷凍はじつは簡単です。前回、ご紹介した「冷凍おひたし」も冷凍を調理法として解釈したレシピの一つでしたが、コツは肉や魚とは違い、冷凍を「保存」のためではなく「調理」のために利用すること。

玉ねぎが1/4個余ったとして、これを冷蔵庫に放置しておくと、そのうちに写真の左側のようにしなびてしまいます。そんなときはさっさと薄切りにするか、みじん切りにして、冷凍してしまいましょう。

なぜ、薄切りやみじん切りなのでしょうか。最初に述べた通り、野菜は冷凍→解凍をすることで繊維が壊れてしまい、元の性質には戻りません。しかし、あらかじめ繊維を切ってしまえば食感は問題にならなくなります。

前回、紹介したブランチングは玉ねぎには必要でしょうか? 市販の冷凍玉ねぎ(くし形)はブランチング処理がされていますが、あめ色玉ねぎなど味のベースとして使う場合は必要ありません。

玉ねぎをきつね色やあめ色に炒めるとメイラード反応が起きますが、それには酵素反応が関係しています。玉ねぎを冷凍すると繊維が壊れるため、早く火が通ります。また、冷凍することで酵素が一部に固まり、加熱するとそれが活性化するので、色づきも早いのです。この二つの理由から玉ねぎを冷凍しておくのはメリットが多いことがわかります。


ピーマンの冷凍 

ピーマンも冷凍、解凍すると繊維が壊れてやわらかくなってしまうので、細く切って冷凍しておきます。ブランチングした方がビタミンCの損失はかなり防げますが、栄養素をそれほど気にしないのであれば(いずれにせよ加熱によってある程度は失われるので)そのまま冷凍して大丈夫です。

前回お伝えした通り、調理するときは凍った状態から。しらすとピーマンを甘辛く炊いたおかずをつくります。

しらすとピーマンの炊き物

料(二人前)
しらす…20g
ピーマン…4個分冷凍
醤油…大さじ1
砂糖…大さじ1
日本酒…大さじ2

1.鍋にすべての材料を入れ、中火にかける。


2.煮汁がなくなるまで8分間程度煮て、火を止める。


さまざまな野菜の冷凍法

冷凍トマト

トマトはそのままラップに包んで冷凍します。凍った状態で水をかけると、簡単に皮を剥くこともできます。解凍すると繊維が壊れ、加熱後の状態になってしまうので、スープや煮込みなどに使うといいでしょう。特にミニトマトは冷凍しておくと加熱料理にそのまま使えて便利です。色を悪くする酵素の影響はないので、ブランチングの必要はありません。

冷凍キャベツ

キャベツは一口大に切ってからブランチングして冷凍すると風味を保つことができます。解凍したものはやわらかい食感になるので、加熱のしすぎには注意が必要です。和え物に使う場合は繊維に与えるダメージを減らしたいので、塩もみしてから冷凍します。あらかじめ水分を抜いておくことで、細胞に与えるダメージを減らすことができます。

冷凍白菜

白菜は上部の葉の部分と下側の白い部分で水分量や繊維の大きさが異なります。上部の葉のような部分は水分が多く、繊維が緻密なので、冷凍には向きません。そのままサラダなどにして食べたほうがいいでしょう。下側の白い部分は細く切った状態で、冷凍することができます。凍ったままの状態で豚汁や鍋物に使います。

冷凍アスパラガス

アスパラガスはブランチングが必須です。沸騰した湯で1分間程度茹でて、冷水にとり、水気をよくふき取ってから、冷凍します。やはり解凍することでやややわらかくなるので、ブランチングの際は緑色が鮮やかになったらすぐに冷水にとりましょう。

冷凍ブロッコリー

ブロッコリーもブランチングが必須です。アスパラガスと同様に一分ほど茹でてから冷水にとり、水気をふき取ってから冷凍します。解凍することでやや柔らかくなりますが、しっかり煮込むスープなどに使います。


大根の冷凍

大根は一般的に冷凍には向かないとされ、冷凍したい場合は繊維をあらかじめ壊す=大根おろしにしてから、というのが一般的です。しかし、冷凍によって繊維を壊すことを逆に利用すれば短時間で味を含んだ煮物をつくることが可能です。

ふろふき大根

材料(二人前)
冷凍大根…1/2本(1.5cm厚の輪切り冷凍)
水…600cc
昆布…15cm
生姜醤油…適量

1.鍋に冷凍大根、水、昆布を入れて強火にかける。

2.沸騰したら弱火に落として、15〜20分間煮る。串がすっと刺さったら出来上がり。器に盛り付けて、生姜醤油をつけて食べる。

冷凍大根は生の大根を炊いたようなふっくらした感じはなくなりますが、味が染みた印象になり、これはこれで悪くない味です。ブランチングをしておけばさらに風味を残すことができますが、大根は色が悪くなったりはしないので、そのままの状態でも冷凍できます。


ニンジンの冷凍

同じ根菜類のニンジンはどうでしょうか? ニンジンも大根と同じように輪切りにしてから冷凍することでやわらかくなり、調理時間を大幅に短縮することが可能です。栄養素を落とさないために30秒ほどブランチングしてから他の野菜と同様に冷凍します。

冷凍ニンジンはやわらか目の食感になるので、気になるという人はあらかじめみじん切りにしてから冷凍するのがオススメ。この場合は茹でると味が抜けてしまうので、適量の植物油で軽く炒めてから冷凍します。

ニンジンのみじん切りは玉ねぎと同様に早く火が入るのがメリット。アイスランド風のニンジンスープをつくります。

ニンジンスープ

材料(二人前)
みじん切り冷凍ニンジン…1/2本分(100g目安)
冷凍玉ねぎ…1/4個(50g目安)
ベーコン…3〜4枚
オリーブオイル…大さじ1
水…600cc
塩…2g
胡椒…少々

1.鍋に水以外のすべての材料を入れ、中火で加熱する。玉ねぎが解凍され、しんなりとしてきたらさらに2〜3分間炒めて、水を加える。

2.沸騰したら弱火に落として、10分間煮る。火を止めて、塩、胡椒で味をととのえる。


ネギの冷凍

薬味類も冷凍しておくと便利です。ネギは繊維を切るように輪切りにして、冷凍しておきます。味噌汁やうどんに入れる時にもそのまま使えます。しょうがやにんにくはみじん切りで冷凍すればOK。風味が抜けるのでブランチングは必要ありません。


キノコの冷凍

これまでは冷凍することで繊維が壊れる、という話をしてきましたが例外の野菜もあります。それはキノコです。キノコは繊維がなく、全体がスポンジ状なので、冷凍してもほとんど影響を受けません。ブランチングはもちろん不要です。

余ったキノコはどんどん冷凍しましょう。サバの水煮缶と一緒に水から煮込み、沸騰したら味噌を溶くことで、水煮サバときのこの味噌汁が簡単につくれます。

さて、いくつか紹介してきましたが、野菜にはまだまだ種類があります。食感が命のタケノコなど冷凍することで味が悪くなる例外もありますが、基本的にはすべて冷凍することができます。

ただ、大事なことは冷凍する前に使用目的を決めておくことです。使用目的を決めないまま冷凍庫に入れておくと、使われずにそのまま……という事態に陥りがち。はじめに述べた通り、冷凍は調理の一工程ととらえるべきなのです。ジッパー付きのビニール袋を使って、どんどん冷凍してみて、普段の料理に上手に取り入れましょう。

<次回は3月9日(土)に更新予定です>


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この連載について

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    コメント

    merm711 冷凍は調理の工程👨‍🍳 ぼくの中の常識が覆された😱 これは必読👀‼️ 約1年前 replyretweetfavorite

    yucca88 自炊頻度にばらつきがある人、必見です。 約1年前 replyretweetfavorite

    izaken77 |樋口直哉 @naoya_foodlab |「おいしい」をつくる料理の新常識 もう野菜を余らせて捨てなくてもよいと思うと心置きなく野菜を買えるー https://t.co/f5u9jGDQ5T 約1年前 replyretweetfavorite