日本には1月7日、人日の節句に七草粥を食べる習慣があります。正月の酒やごちそうで疲れた胃を癒やすという意味もあったのでしょう。
今日は七草粥をつくりながら、おいしいおかゆの作り方をご紹介します。考慮すべきは米に含まれるデンプンの性質です。
米…75g(半合)
水…800cc
カブの葉…2〜3個分(体積で1カップ)
塩…3g(小さじ1/2)
作り方
1.鍋に800ccの水を沸かしたところに、米を入れる(Tips1『湯から加熱することで究極のお粥に』)。一度だけざっくりとかき混ぜ、弱火に落として30分煮る。(炊きあがりは450cc〜500ccが目安)
2.塩3gと刻んだカブの葉を入れて1分間だけ弱火で煮る。器に盛り付ける。(Tips2『春の七草』)
★レシピの解説
【Tips1】湯から加熱することで究極のお粥に
今回、お米は研がずにそのまま使っています。研いでから炊いたものと研がずに炊いたものを比較すると仕上がりにほとんど差はなく、むしろ、研がないほうがお米の香りが若干強くなりました。気になるようなら米を研いでもいいですが、その場合はしっかりと水気を切ってから鍋に入れましょう。
余ったご飯を湯のなかで煮ても粥にはなりますが、炊いたご飯でお粥をつくると粒感がなくて頼りない感じになります。おいしさを目指すなら生米から炊いてください。
水と米を鍋に入れ、かき混ぜながら沸騰させ、弱火でコトコト煮るというのが普通の作り方。しかし、究極のおいしさを目指すなら沸騰したところに生米を入れます。水から煮ると米のデンプンが糊化する前に溶け出しますが、湯に入れると米の表面のデンプンが溶け出す前に固まります。結果としてデンプンの流出量が減り、サラッとした粒感のある仕上がりにすることができるのです。
熱い湯にお米を入れると表面のデンプンが固まるので、ダマになることがあります。そこで最初だけかき混ぜますが、このあたりはパスタの茹で方と原理的には一緒です。
炊き上がりの目安は米と水分が一体化したこのタイミング。お粥は作り置きすると米が水分を吸い込み味が落ちますが、湯から炊くことで必要以上に水分を吸い込まずおいしさが長持ちします。とはいえ、できたてが美味しい料理ではあるので、自分でつくる価値があるのです
【Tips2】春の七草について
春の七草とはセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロを指し、時期になるとスーパーでセットになって販売されています。パックに小さなカブや大根が入っている場合は細く刻んで米と一緒に炊きます。
ただ、スーパーでパック詰めされて販売されているのは若干割高感がありますし、すべての種類を入れる必要はありません
スーパーで入手しやすいのはセリ、スズナ=カブの葉、スズシロ=大根の葉の三種類。このうちの一種類か、二種類を刻んで、体積で1カップ分くらいの量を目安に入れるといいでしょう。1〜2種類でも全種類入れても味にはほとんど差がありません。
この七種類が春の七草として一般化したのは戦後のこと。それまでは各地方で三つ葉やごぼうをいれたバージョンなど、様々な七草粥がつくられていました。自由な発想で具材を粥に足していってもいいのかもしれません。
【アレンジ】餅入り七草粥
胃を休めるため、という意味はなくなってしまいますが、粥だけでは物足りないという方には焼けた餅を入れたバージョンもおすすめです。
餅の焼き方は前回、お雑煮の記事でご紹介した通り。ユネスコの『無形文化遺産』に登録された和食はこうした節句で食べる行事食。無形文化遺産へ登録されたということは、この文化を守る義務があるということ。お節と七草粥くらいは家でつくる習慣を残していきたいものですね。
<次回は1月12日(土)に更新予定です>
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