連日、暑い日が続いていますね。今日のテーマは夏野菜の活用法。
夏の野菜はみずみずしく、水分を多く含んでいます。料理をする時はそれを活かすことが大事です。
まず、つくるのは夏野菜のラタトゥイユ風。通常のラタトゥイユは野菜を一種類ずつオリーブオイルで炒め、最後にトマトソースで煮込んで仕上げますが、今回は塩味で、しかも一気に仕上げます。秘密兵器は電子レンジです。
夏野菜のラタトゥイユ風(たっぷり4人前)
玉ねぎ(小) 2個
赤パプリカ 1個
かぼちゃ 1/4個
ナス 2本
ズッキーニ 1本
ピーマン 4個
トマト 1個
オリーブオイル 大さじ4
塩 小さじ1
1.玉ねぎは頭とお尻を切り落とし、5mmの厚さにスライスして耐熱ガラスボウルか深いお皿に入れ、オリーブオイル大さじ2で和える。
*レンジ玉ねぎのコツ
レンジ調理では大きさが揃っていることが重要です。電子レンジの加熱原理はこの後に説明しますが、頭とお尻を落として、繊維に対して垂直方向にスライスします。
2.ラップをふんわりとかけて600Wで5分間加熱し、そのまま5分間蒸らす。
*レンジ調理は蒸らしがコツ
レンジにかけたばかりのボウルは熱いので注意。放置してから作業するのが原則です。ラップを外すときにも、蒸気が飛び出して火傷をすることがあるので気をつけましょう。
鍋で蒸らし炒めするよりもレンジで加熱したほうが玉ねぎは甘くなります。玉ねぎの水分が効率よく加熱されるので、玉ねぎの辛味成分である硫化アリルが揮発しやすいからです。弱点はメイラード反応が起きづらいこと。メイラード反応が必要なカレーなどに使う玉ねぎは鍋で炒め、必要のない料理にはレンジ玉ねぎをという具合に使い分けましょう。
3.ズッキーニ、ナスは1cmの厚さにスライス。パプリカは幅1cmになるように切り、ピーマンは四等分にして種をとる。かぼちゃは種をスプーンでとりのぞいてから7~8mm厚に切り、トマトは六等分の櫛形に切る。すべての野菜を2のボウルに入れて、オリーブオイル大さじ2、塩小さじ1を加えて和える。
*野菜は小さく切る
レンジ加熱の効率は食材の表面積に比例しますが、野菜が大きいとレンジから放射されるマイクロ波が中心部へ到達する前に減衰してしまい、表面と中心の温度差が大きくなってしまいます。小さめに切っておくのが無難です。
4.ふんわりとラップをして600Wで10分間加熱する。10分間以上、放置してからラップを外す。
*またまた予熱を使って加熱をする
ふんわりとラップをして、とレシピにあれば、ラップと容器のあいだに空気の逃げ道を作るという意味です。ラップの役割は『保湿』と『保温』。そして、レンジ調理の弱点である『加熱ムラ』を減らす働きがあります。しかし、完全にラップをかけてしまうと加熱中にたまった蒸気で、ラップが破裂する可能性があるので、あらかじめ空気の逃げ道をつくっておきます。
水分含有量の多い野菜類や果物はレンジで調理することで、栄養素の損失も少なく、色もきれいに仕上がります。ただ、レンジ調理は野菜の組織を構築しているペクチンが水溶化しないので、硬めに仕上がるという特徴も。そこでラップをしたまま放置することで蒸した状態をつくり、ペクチンをやわらかくします。蒸らしの時間をとるのがレンジ調理のコツです。
5.器に盛り付けて、バジルやローズマリーなど好みのハーブを添える。冷たくしてもおいしい。
*多めにつくって冷蔵庫へ
通常、この連載で紹介しているレシピは2人前ですが、今回は4人前。意図的に分量を増やしています。ラタトゥイユは冷たくしてもおいしく、パスタソースなどにも使えるので多めに作っておくと便利です。冷蔵庫で3日ほどは保存が利きます。
レンジだけでつくれる夏野菜の煮物
電子レンジでの加熱は、煮たり焼いたりといった他の加熱とは原理が異なるので、それを理解していないと使いこなせません。
鍵を握るのはマイクロ波の性質です。マイクロ波が食品内の分子に当たると、分子が回転し、その運動が熱エネルギーになって、食品の温度が上昇します。これが電子レンジの加熱原理です。
時々「電子レンジは水の分子の摩擦熱で加熱する」と説明されますが、実際には他の分子も影響を受けます。ただ、水分子がマイクロ波を特に吸収するのはたしか。水分子は電荷が動きやすく、さらに1つの酸素原子と2つの水素原子が104.5度で繋がっています。このずれがあるお陰で、分子が回転しやすいのです。
逆にタンパク質やデンプンのような大きな分子はあまり動かないので温度が上がりにくく、レンジ調理には向いていません。また、意外かもしれませんが冷凍食品も不得意です。水分子は凍っていると動かないので、温度が上がらないのです。試しに氷を電子レンジにかけてみてください。完璧に凍った氷はレンジで加熱しても溶けないことがわかります。
水分子が加熱される原理が理解できればレンジ調理に向いている食材がわかります。レンジが得意なのは85%〜95%が水分の野菜類の加熱。逆にタンパク質が多く、水分含有量が70%ほどである肉類は苦手ということになります。
次に紹介するのは「夏野菜の煮物」。出汁を使わず野菜の水分だけで煮る料理も電子レンジなら簡単です。
夏野菜の煮物(4人前)
かぼちゃ 1/4個(250g)
ナス 2本(150g)
ピーマン 5個(1パック 100gくらい)
トマト 1個(100g~150g)
濃口醤油 大さじ2
上白糖 大さじ1
1.ピーマンは頭とお尻を切り落として、1.5cm幅の輪切りにして、種とワタを取りのぞく。ナスは1.5cmの輪切り、トマトは4等分に切る。
2.種をスプーンでとりのぞいたかぼちゃは皮を縞に剥き、3cm×2cmを目安に切る。
*カボチャの切り方
硬いカボチャを切るにはいくつかのコツがあります。
まず皮を剥くときはカボチャをまな板の上において、削ぐようにしましょう。カボチャが安定するので手を切るリスクが減ります。縞に剥く、とレシピに書いてあれば緑の部分が適当に残るように処理することです。
二つ目のコツは内側から切ること。カボチャは外側ほど硬く、内側はやわらかいのでこのほうが包丁が入れやすいのです。
3.ガラスボウルにすべての材料を入れ、濃口醤油大さじ2、上白糖大さじ1を加えて和える。この時、カボチャをボウルの底に配置すると味がよく染みる。
4.ふんわりとラップをかけて600Wのレンジで10分加熱し、10分間放置する。とりだして器に盛り付ける。
ところで時々、カボチャの煮物が好きではない、という声を聞きます。現在、主流の西洋カボチャはかなり甘いので、おかずにしづらくなったのかもしれません。
昔、八百屋さんの店先で売られていたのは水分が多く、甘みの少ない日本カボチャでした。日本カボチャは出汁と砂糖、醤油で煮るとおいしい煮物になりますが、高い糖度が特徴の西洋カボチャは揚げたり、焼いたりするのに適しています。日本カボチャと同じように煮ると甘目の仕上がりになってしまいます。
しかし、こういう時こそ電子レンジの出番です。レンジで加熱すると糖が生成される前に火が通るので、甘さを抑えた仕上がりになります。電子レンジは温め直しくらいにか使われていませんが、もっと活用されてもいい調理器具だと思います。
樋口直哉さんの料理記事をもっと読みたい方はこちら!