ざくざく粗つぶしした“食べる”ポタージュ
4月です。フレッシュな季節にぴったりの、新じゃがのポタージュを作りましょう。
じゃがいものおいしさを言葉で伝えようとすると「ほくほくした食感」ぐらいしか思いつかないものですが、新じゃがは、その香りも大きな魅力です。スープなら湯気と一緒に香りも十分に楽しむことができます。
長ねぎを炒めたものをベースにすることで、うまみにぐっと厚みがでます。ポタージュといってもブレンダーは不要。長ねぎと一緒に水で煮たじゃがいもを、ざっくりつぶすだけの手軽さです。
あっさりしたポタージュは、朝、昼、晩、オールマイティに食卓に取り入れられます。新じゃがのおいしさを長ねぎとバターが支える珠玉のポタージュ、どうぞお楽しみください。
新じゃがいものつぶしポタージュ
材料(2人分) 所要時間約20分
新じゃがいも 3個(400g)
長ねぎ1/2本
ハム 20g ※切り落としでOK
バター 20g
塩 小さじ1/3
水 3~400mL
作り方
1.じゃがいもを切る
じゃがいもは皮をむき、半分に切ってから幅1~1.5cmに切る。★1
2.長ねぎベースを作り、じゃがいもを煮る
長ねぎはみじん切りにし、バターと一緒に鍋に入れ、水を大さじ1~2加え、焦げないように弱火で炒める。途中で水を足してもよい。★2
長ねぎがくったりしたら、じゃがいもと水300mL、塩小さじ1/3を加え、ふたをしっかりして10分ほど煮る。
3.じゃがいもをつぶして加水する
じゃがいもがやわらかくなったら火を止め、おたまの背などで粗くつぶす。水を、100mLをめやすに少しずつ加え、好みの固さにする。
味を見て、塩で調えて温める。器に盛りつけてから、刻んだハムを飾る。★3
レシピのポイント解説
・「新じゃが」について
・ねぎのベースの作り方
・じゃがいものつぶし方
★1「新じゃが」について
「新じゃが」とは、はしり(出始め)のじゃがいものことです。
「新じゃが」は、皮が薄く、みずみずしいのが特長ですが、これは、普通のじゃがいもと品種が違うからではなく未熟の状態で収穫し、掘りたてをすぐ出荷するからです。
春先から初夏にかけて出回る「新じゃが」は、年明けに植えつけたじゃがいもが春先に収穫できる九州産のものを皮切りに、産地が北上していきます。昔は5~6月が「新じゃが」の季節でしたが、最近はもっと早まっています。
この時期の新じゃがいもは、九州産が多い
ちなみにじゃがいも最大の収穫量をほこる北海道の場合、冬は寒すぎるため、春に植えつけて秋に収穫します。ですから北海道の「新じゃが」は秋なのですが、なぜか秋に獲れたじゃがいもはあまり「新じゃが」とは呼ばれませんよね。そのあたりの定義は、あいまいなようです。
さて、堀りたてのじゃがいもは水分が多いため、実はポテトサラダや煮物より、スープに向いています。
スープの場合は、品種としては煮崩れやすい男爵、きたあかり、とうやなどがいいでしょう。コロコロの小さなサイズの新じゃがもありますが、今日は皮をむいて使うので、中~大サイズを選びます。
皮をむいたら、まず縦半分に切り、それを1㎝~1.5cm幅ぐらいに切っていきます。
あまり薄すぎると食べごたえがなく、厚すぎると加熱に時間がかかる
★2ねぎのベースの作り方
ポタージュのレシピにはよくたまねぎが入っています。根拠はないのですが、あっさりした新じゃがのスープには、たまねぎより長ねぎが合う気がします。
今回は、長ねぎでスープのベースを作ります。これはさまざまなポタージュやスープのベースになるので覚えておくと便利です。
ねぎのみじん切りは、こうすると簡単です。まず、縦にすーっと包丁を入れ、さらに90度転がしてねぎの切り口が十文字になるように、再度包丁を入れます。
ゆとりのある人は、何回か縦に包丁目を入れると細かく切れる
これを、端から刻んでいけば、みじん切りの出来上がり。
ねぎの青いところも汚れていなければ入れてOK
みじん切りの長ねぎをバターで炒めますが、じゃがいもの白いスープなので、なるべく焦がさないように炒めたいのです。そこで、水を利用します。
まず、長ねぎとバターを鍋に入れ、水も大さじ2ほど加えて中火にかけます。2~3分、水分が飛んで長ねぎがくたっとするまで加熱します。
焦げ付きそうなら躊躇なく水を加える
写真のように、ねぎがペーストのようになるまで炒めます。焦げそうなら少量ずつ水を加えてOKです。
この長ねぎのペーストはさまざまなスープのベースに使えるので、長ねぎ2本分ぐらい作り、小分けにして冷凍しておくと便利です。
長ねぎの刺激臭がなくなるまで炒める
長ねぎの鍋にじゃがいもを加え、300mL、ひたひたになるように水を加えて、ふたをしっかりして蒸し煮します。火は中火にし、2分ほどで沸騰するので、再度弱火に切り替えます。
水が少ないので必ずふたをして蒸し煮すること
★3 じゃがいものつぶし方
さて、時間がきたらふたをあけ、じゃがいもの様子を見てみましょう。
じゃがいもをひとつ食べてみて、口の中でやわらかくつぶれる感覚があればOKです。舌でつぶれず硬さがあったら、もう少し煮ます。
じゃがいもが煮えたら火を止めて、熱いうちにおたまの背でつぶします。冷めてしまうとつぶれにくくなってしまうので、火を止めたらすぐつぶしましょう。
あまり細かくつぶさず、粗つぶしにするのがおいしさのコツです。じゃがいもの大小で食感に変化がつきます。
あまり丁寧につぶしすぎないこと
じゃがいもがいい感じになったら、100mL前後の水で好みの固さにのばし、再度あたため味を見て塩で調えたら出来上がりです。
トッピングにハムのみじん切りを使いました。サラダチキンもいいですね。
新じゃがのフレッシュなおいしさをシンプルに楽しむ
みずみずしい新じゃがは、栄養もたっぷり。
じゃがいものビタミンCは、熱で糊化したでんぷんに包まれるため、加熱しても壊れにくいとのこと。消化をたすける食物繊維や、塩分を体外に出してくれるカリウムも豊富です。
新じゃがは水分が多く早く柔らかくなるので、ポタージュには向いており、調理も楽々。じゃがいもの素直な味をストレートに楽しむスープは、小さなお子さんとも分け合えるやさしい味わいです。
水のかわりに牛乳でのばすと、より濃厚になります。パセリなどでアクセントをつけるとさわやか。こちらもぜひお試しください。
【アレンジ】じゃがいもをごちそうにかえるふたつの方法
シンプルなポタージュは、具を変えてもおいしいです。肉類を加えるとメインディッシュにもなる豪華なスープに。また、ブレンダーにかけるとポタージュになり、お客さまにも出せる一皿です。二つの方法で変化をつけてみましょう。
ソーセージ入りじゃがいもポタージュ
ソーセージやベーコンなど、加工肉を加えてボリュームいっぱいのスープに。じゃがいもをつぶして水でのばしてから、切ったソーセージやベーコンを加えてさっとあたためます。あまり煮込まず、じゃがいものポタージュをソース代わりにして、肉を食べるという感じです。
ヴィシソワーズ
このじゃがいもポタージュをブレンダーにかけるか、うらごしして、冷蔵庫で冷やすと、冷たいポタージュ「ヴィシソワーズ」になります。なめらかな口当たりのポタージュは初夏のごちそうです。ハーブはディルを使っていますが、パセリや細ねぎの刻んだものも合います。サーモンを添えてもおいしいものです。休日のランチなどにいかがでしょうか。
<次回は4月15日(月)更新予定です>
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