これだけで一食になる、冬のスタミナ食
芋類の中で唯一、生食できるのが山芋です。中でも山芋をすりおろして作るとろろ汁が有名ですよね。
一見ごちそう感があって、ちょっと作るのはめんどうかな…と思うとろろ汁。基本はものすごく簡単で、山芋と味噌だけでできるんです。無駄な材料を何一つ入れない、ストレートなレシピをお届けします。
山芋は秋から春にかけてが旬、1月になると水分が抜け風味も増します。シンプルにお芋を味わうとろろ汁には今がちょうど向いています。今回は最も手に入れやすい「長芋」を使いましょう。
麦ごはんにかけて食べるのがスタンダードですが、もちろん白ごはんでも。麺類にかけるのも魅力的です。気楽なのに栄養満点な和のスタミナ・ポタージュを、毎日の食事に取り入れてみませんか?
ミニマルとろろ汁
材料(2人分) 所要時間約15分
長芋 250g
味噌 大さじ2(36g)
湯 180mL
ごはん 2膳分 ※できれば麦ごはん
作り方
1.味噌を湯で溶く
味噌を器に入れ、分量の湯で少しずつ溶きのばしておく。
2.長芋をすりおろす
長芋の皮をむいて、おろし器ですりおろし、ボウルに入れる。★1
3.のばして、混ぜる
2の長いもに1を少量ずつ混ぜ、箸を4~6本重ねてよくかき立てる。★2
ごはんにかけて食べる。★3
レシピのポイント解説
・長芋の扱い方
・とろろ汁の混ぜ方
・ごはんについて
★1 長芋の扱い方
山芋にはいろいろあり、選びかたがわからない、という人が多いのではないでしょうか。簡単に種類を説明しますね。
一番よく見かけるのは「長芋」。写真のものは長いですが、売場では太い長芋が短くカットされていることも多いです。あっさりして、水分が多く、生で千切りにしたものが居酒屋などでよく出てきます。加熱してもよく、味噌汁に入れたり、輪切りにしてバター焼きにしてもおいしいです。
長芋と並んでよく見かけるのは「やまと芋(大和芋)」。その形から、「いちょう芋」とも呼ばれます。写真のように広がったタイプだけでなく、長芋のように細長いタイプもあります。長芋よりきめが細かく、粘りが強いです。こちらはとろろ汁のほか、お好み焼きに混ぜたり、海苔で巻いて磯部揚げに。
左:長芋 右:いちょう芋(やまと芋)
また、「自然薯(じねんじょ)」は、古来から日本にある野生種で、さらに粘りが強く濃厚なうまみを持つ高級品です。いちょう芋と同じような使い方をします。ほかにも、関西中心に出回るゲンコツみたいな「つくね芋」など、さまざま種類があります。
粘りは、長芋<いちょう芋<自然薯・つくね芋 と、強くなっていきます。どの芋でもとろろ汁は作れますが、今回は最も手に入れやすく、皮のむきやすい長芋を使って作ります。
粘りの強いやまと芋や自然薯を使うときは、混ぜる水と味噌の量を増やしましょう。
さて、長芋は洗って、皮をむきます。ヌルヌルして扱いづらいので、皮を一部残し、そこを持ってすりおろします。
皮に、1ミリぐらいの切れ込みをぐるりと入れる
切り込みを入れてからピーラーでむいていくと、切り込みを入れたところで止まって、きれいにむけます。
あまり強くピーラーを引くと、下までむけてしまうのでゆっくりと
皮がむけたら、おろし器で山芋をおろしていきます。山芋は金気を嫌うので、ほんとうはプラスチックやセラミックのおろし器が理想ですが、それほど気にしなくても大丈夫。
おろし器ですりおろし、ボウルに入れる
切り込みのところまでできたら、また少し切り込みを入れて皮をむき、おろします。小さくなったら皮をむいてしまい、キッチンペーパーをたたんでそれを使って押さえるようにしてすりおろすと、すべらずに最後までおろせます。
★2 とろろ汁の混ぜ方
ボウルに入れた長芋のすりおろしに、湯に味噌を溶いたものを少しずつ加え、混ぜていきます。一度に加えてしまうと混ぜにくくなるので、少量ずつやるのがコツです。
とろろ汁は常温で食べます。味噌はお湯で溶きますが、長芋は冷たいので出来上がりはぬるい温度になります。夏なら水で溶いても大丈夫です。
最初は少しずつ。ゆるくなってきたら、多めに加えても大丈夫
味噌汁が混ざったら、箸を4本から6本まとめて全体をよく泡立てるように混ぜて、ふんわりさせます。
納豆を混ぜるイメージで、空気を入れるように箸でかき立てる
本来、とろろ汁は山芋をすりおろしてから、すり鉢に入れ、すりこぎですって作ります。その作業によって、きめ細かさと、ふんわりした食感が生まれるのです。最近ではすり鉢を日常的に使う人は少ないため、箸を複数本使って、空気を含ませています。泡立て器でもいいかなと思うかもしれませんが、山芋は金気を嫌うので、箸のほうがよいのです。
★3 ごはんについて
とろろ汁には、麦ごはんを合わせるのが定番です。いわゆる「麦とろ」ですね。
大麦の皮をとり、半加熱してつぶした「押し麦」は、独特の香りとサクサクした口当たりで消化もよく、とろろ汁との相性がばつぐんです。
麦ごはんは、洗った白米に押し麦を加えて炊くだけです。ただ、一人暮らしで余ってしまうという方は、パックの麦ごはんのほうが無駄がなくよいでしょう。
押し麦ごはんが売場になくても、もっちりした食感が人気のもち麦やつぶしていない丸麦、雑穀ごはんなど、お好きなものでOKです。
パックのご飯が便利
自分で炊く場合、麦の割合は好き好きですが、白米2合(300g)に対して50gと水100mLほど加えるとよい感じです。
2~3合の炊飯に合わせた小袋に分けて売っている製品も。洗わずにそのまま白米に加えて炊ける
とろろ汁で冬の体力をつけよう!
中国では皮をむいてスライスし、干した山芋を「山薬」とし、滋養強壮の薬として料理に使われます。山芋には消化酵素も豊富に含まれていて、胃もたれしにくいのも特長です。
風邪やインフルエンザが流行する冬場の健康管理にもぴったりです。とろろ汁で体力をつけて、元気に冬を乗り切りましょう。
青のりやもみのり、刻みねぎなどを振ったり、わさびを添えると、いっそうおいしく食べられます!
【アレンジ】アレンジしてボリュームごはんに
シンプルなレシピなので、アレンジも無限です。水をだしに変えればおいしくなりますし、卵を混ぜ込むとコクが出ます。ここでは肉を加えるアレンジと、麺にかけるアレンジをご紹介します。
牛肉とろろ汁
肉を合わせて、がっつり食べ応えのあるとろろ汁です。牛の薄切り肉をさっと炒め、醤油と砂糖で甘辛く味つけして添えます。卵黄をのせれば、さらにリッチ。ここではのりを散らしていますが、刻みねぎやわさびをあしらってもいいですね。薄切り肉ではなく、ひき肉のそぼろでもおいしいです。
とろろ汁の和えラーメン
うどんや蕎麦と、とろろの組み合わせはよくありますが、ラーメンでもいけるのです。ここでは和え麺風に。
中華麺をゆで、まず鶏ガラスープ小さじ1/2を50mLほどの湯で溶き、ごま油少量を混ぜます。これを器に盛り、とろろ汁をたっぷりかけて、青ネギをトッピングします。ラー油を効かせてもおいしい! 麺は太めが相性よしです。
<次回は2月4日(月)更新予定です>
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