もやしがメインの一品に!
毎回、この連載では旬の野菜をおいしく食べる方法をお伝えしていますが、人口栽培で作られるもやしには、旬がありません。季節感は感じられないかわりに、天候などにかかわらずいつでも安定的に手に入れることができ、包丁を使う必要もなく火も通りやすいという、極めて使いやすい野菜のひとつです。
このもやしを主役にしたボリュームたっぷりのスープをつくります。ポイントは、とろみ。もやしは水分が多いので、通常のスープのとろみよりもぐっと濃いとろみにして、その中にもやしを閉じ込める感覚です。たまごも、とろみのおかげできれいなかき玉になります。
ナムルなどにも使われる豆もやしを使いましょう。香りもよくおいしく、食べ応えもあります。普通のもやしよりは多少高めですが、それでも他の野菜に比べればはるかに安価。もやしの魅力を再発見できます!
もやしのぽってりスープ
材料(2人分) 所要時間約7 分
豆もやし 1袋(200g)
たまご 1個
にんにく 約1/3片分 ※チューブにんにくでもOK
片栗粉 大さじ2
塩 小さじ1
水 約400mL
作り方
1.材料の下ごしらえ
豆もやしは水で洗ってざるに上げる。にんにくは1/3片ほどをすりおろす。たまごは小さな器に割り入れ、ときほぐしておく。片栗粉は同量の水(分量外)で溶いておく。★1
2.豆もやしを蒸し煮する
蓋のできる鍋に、豆もやしを広げて入れる。そこに水大さじ2とすりおろしにんにくを加え、ふたをしっかりして強火で1分、その後中火に落として3分加熱する★2
3.片栗粉でとろみをつけ卵でとじる
もやしが蒸し上がったら、水400mLと分量の塩を加えて煮立て、混ぜながら水どき片栗粉を少しずつ入れ、とろみをつける。溶きたまごを流して、20秒ほどで火を止める。★3
レシピのポイント解説
・豆もやしについて
・豆もやしの加熱について
・片栗粉のとろみ
★1 豆もやしについて
私たちが普段見かける一般的なもやしは緑豆から作った「緑豆もやし」ですが、今回使うのは「豆もやし」。大豆から作られたもやしです。豆がついているまま売られており、食感はもちろん、うま味成分が多いので、今回のようにたまごを使うことで、だしなしでも料理としては十分です。なるべく変色の少ないものを選びましょう。
豆もやし(左)と、緑豆もやし(右)
★2 豆もやしの加熱について
このレシピの最大のポイントは、豆もやしの加熱方法にあります。水や湯にもやしを入れて煮るのではなく、ふたをして密閉して蒸し煮することで、独特の匂いがとれてすっきりしたおいしさになります。このもやしの加熱方法を覚えると、和え物やサラダなどに大活躍です。
鍋にもやし、大さじ2~3の水、すりおろしにんにくを入れて、鍋にふたをする
強火でスタート。1分ほどで全体が温まったら、中火に落とします。
全体で約3~4分、鍋のふたは開けないこと
ふたはなるべく開けないように。しばらく蒸すと、鍋のふたがカタカタ言って、湯気が漏れてきます。
湯気が豆のいい香りになっていたら成功。生っぽい匂いが残っていたら再加熱
このまま余分な水を切り、ごま油と塩を混ぜればナムルですが、今日はスープにするので、もやしが蒸し上がったら、水を加えてあたためます。
★3 片栗粉について
このスープのもうひとつのポイントは、片栗粉の量です。一人分大さじ1はかなり多めで、スープというよりあんかけのようなとろみになりますが、食べているうちにもやしから水分が出てきますので、問題ありません。
もやしはあまり煮すぎない方がおいしいので、片栗粉もあらかじめ混ぜておいて、手間取らないようにしましょう。鍋に入れる前に、必ず再度よく混ぜます。鍋を箸やへらで混ぜながら、「少しずつ」鍋に加えます。一度に加えると、大きなダマができてしまいます。
片栗粉はほんの少しずつ、入れる場所もずらしながら
ぽってりしたとろみがついたら、溶きたまごを加えます。
溶きたまごを少しずつ加えて、20~30秒加熱したらできあがり
片栗粉のとろみで、体をあたためる
ノンオイルのスープですが、濃厚なとろみをつけるため保温力が高く、冷めにくいのが特長です。もちろん体もほかほかあたたまります。急に肌寒くなってきたこの頃、熱々スープで体を冷やさないようにしましょう。
もやしは決して栄養価の高い野菜ではありませんが、繊維が多く、また大豆もやしに関しては、豆がついているため大豆の持っている栄養素も含まれます。
豆もやしのうまみ、卵のうまみ、にんにくの風味を利用した、塩味だけのシンプルな味つけの、このスープ。
ラー油やごま油を使うと、さらにコクがアップします。お好みでどうぞ。
【アレンジ】中華風に振ったアレンジがぴったり
もやしとにんにくが入っているので、中華風のアレンジが合います。肉や油を足したり、麺にかけたりすると、ぐっと食べ応えやコクが出ますよ。とくに、ゆでた中華麺にかけるのはおすすめ!
ひき肉入りもやしのぽってりスープ
豆もやしではなくもやしで作りたい、という方がいると思いますが、その場合は肉で少しうま味を足しましょう。蒸し煮するとき、ひき肉50gを広げてもやしの上にのせ、一緒に蒸します。あとは同じように作るだけ。
もやしのあんかけ麺
ゆでた中華麺、またはフライパンで焼いた焼きそばに、このスープをたっぷりかけます。麺にするときは、味を濃い目に、そして油が入っている方がおいしいので、塩を多めに、ごま油を最後にかけます。
チャーシューやネギなど加えるのは、お好みでどうぞ。
『スープ・レッスン』が本になりました!
9月27日、この連載が『スープ・レッスン』のタイトルそのままに、プレジデント社から本になりました!
「旬の野菜をたっぷり食べる、究極のベーシック・スープ」ということで2016年にスタートして2年半。
多くのレシピから厳選スープを絞り込み、大幅な加筆修正をしています。
また、「鍋」「塩」「火」など、スープのコラムも書き下ろしました。
とても素敵な写真とデザインで、ウェブの連載とはまた違った魅力があります。毎回の連載を楽しんでくださっている方には、ぜひお手元に置いていただきたい一冊です。
『スープ・レッスン』プレジデント社 1,404円(税込)
私のnoteでは、どんな本かをもう少し詳しく紹介しています。よかったら読んでみてください!
『スープ・レッスンは何のレッスン?』