自宅だからこそ、とびきり簡単で美味な魚のスープを。

魚の調理、すこし敬遠している人も多いはず。今回は、包丁を使わないとびきり簡単な魚のスープをご紹介します。自宅だからこそ試す価値のある、コストパフォーマンス抜群の美味しいスープです。
スープ作家の有賀薫さんによる、旬の素材をたっぷり味わうベーシック・スープのレッスンです。

鯛のアラとトマトジュースで、豪快な魚のスープを。

魚のスープ、と聞くだけでハードルが高い!無理!と思う方は多いのではないでしょうか。
でも、今日作る魚のスープはとびきり簡単。魚をさばくどころか、包丁すら使いません。

魚のスープの特徴は、時間がたつと生臭みが出てしまうこと。だから缶詰やレトルトでおいしい魚のスープと巡り合うことはなかなかできません。
新鮮なアラさえ手に入れば、とても簡単に、豊かな魚のだしを楽しめます。つまり、自宅で作る価値があるのです。

主役は、魚の王様、鯛です。ご存知のように高級魚ですが、今回は「アラ」、つまり頭や中骨の部分を使います。
これ、スーパーや鮮魚店の片隅に2~300円ぐらいで売られています。私が買った今年の最安値は50円。安くて人気のアラはいつもあるとは限らないので、見つけたときが作りどきです。

アラで作るスープ・ド・ポワソンは、にんにくの香りほんのり、鯛とトマトのうまみがたっぷり。ワインにもよく合って、休日のランチやディナーに最適です。


スープ・ド・ポワソン

材料(2人分) 所要時間約30分

鯛のアラ 1尾分
トマトジュース 200mL ※無塩(有塩のときは塩の量を調節)
塩(できれば粗塩) 適量
マヨネーズ 大さじ2
にんにくすりおろし 1片(小さじ1弱) ※チューブ可
お好みで薬味・ハーブ タイム、パセリ、青ネギなど 適宜
水 約600mL

作り方

1.魚の下処理をする

鯛のアラ★1をボウルか鍋に入れ、熱湯を、かぶるようたっぷり回しかける。
鯛を箸で返し、全体が白っぽくなったら湯を切る。弱い流水で、アラの血合いやウロコをていねいに洗い流し、キッチンペーパーで水気を軽くおさえる。★2

2.アラを煮る

鍋に1のアラを入れ、水600mL とトマトジュース200mLを注いで強火にかける。沸騰したらアクをすくい、中火に落として約10分~12分煮る。塩小さじ1を加え、火を止める。

3.アイヨリソースを作って添える

マヨネーズとおろしにんにくを混ぜてアイヨリソースを作り、盛りつけたスープにかけて食べる。★3
好みでタイムの枝や、パセリや青ねぎのみじん切りなどを添える。


レシピのポイント解説

・鯛のアラについて
・アラの処理
・アイヨリソースについて

★ポイント1.鯛のアラについて

鯛のアラは、鮮魚店やスーパー、デパートの魚売り場で買うことができます。残り物として、たいてい隅の方に置いてあります。
アラは鮮度が命です。買うときは目を見ましょう。目が澄んでピカッとしているのが鮮度の良い魚です。

1尾分のアラは、写真のようになっています。この写真は中骨つき。中骨がなく頭だけが入っている場合もあり、骨からは良いだしが出ますが、頭だけでも十分です。


左右に分けた頭と、二つに切った中骨で一尾分


中骨が入っていないものもある

★ポイント2. アラの処理

このスープ最大のポイントはこの「アラの処理」に尽きます。
難しい作業はなく、①熱湯をかける、②水でキレイに汚れやウロコ、血合いを洗い落とす、これだけです。

買ってきたアラの裏側はこの写真のようになっています。赤い血合いが生臭さの原因になるので、これをきれいに取り除きましょう。


生の状態。赤い血合いの部分が生臭さの原因に


まず、アラが全部隠れるまでたっぷりと熱湯を注ぎ入れる


箸でアラを返してお湯をゆきわたらせ、全体が白っぽくなったら引き上げる

熱湯につけたままにせず、すぐに弱い流水を当てて洗います。


流水で血合いを洗い流す


このぐらいになれば大丈夫。中骨も同様に洗う

また、表側には固いウロコがついています。


スプーンなどで、うろこを取り除く

丁寧な店だとうろこを取り除いてくれている場合もありますが、たいていの場合はついたままです。口に残るので、これも丁寧にとりのぞきます。
皮は残して大丈夫ですが、はがれてもあまり気にせずうろこをしっかりとってください。

頭を掃除するとき、胸びれの部分が外れてしまうことが多いのですが、大丈夫です。スープには使いますので、同様にきれいにしてください。


ここまで来れば、もう終わったようなもの

こうして下ごしらえしたアラは、スープだけではなく、煮物などにも使えます。

ポイント3.アイヨリソースについて

スープ・ド・ポワソンは、本来は香味野菜やオリーブオイル、南仏でとれるハーブもたっぷり使った濃厚なスープ。アイヨリと呼ばれるにんにく風味の卵黄のソースを混ぜながら食べます。

アイヨリソースは、組成がマヨネーズと極めて似ているため、今回はマヨネーズで手軽に作るレシピにしました。

にんにくは小さめのもので十分です。大きな1片の場合は、半分使ってください。


にんにくは半分に切り、芽をとってすりおろす

すりおろしたにんにくを、マヨネーズに混ぜます。そのままだと、スープに入れるのにちょっと固めかと思いますので、水をほんのわずか(小さじ1だと多いぐらいです)加えてゆるめます。


にんにくは好みで増やしてもOK

カイエンヌペッパー(なければ一味とうがらし)を少し混ぜてもおいしいですよ。

新鮮な魚で作る作りたてのスープは、至福の味わい

新鮮な魚、トマト、にんにくをふんだんに使ったスープ・ド・ポワソンは、フランスの南東に位置するプロヴァンス地方に代表される、南仏料理です。

このスープ・ド・ポワソンにカリカリに焼いた薄切りトーストなどを添え、のんびり食べる休日ごはん。ワインを合わせるなら白はもちろん、南仏の爽やかなロゼワインも良く合います。魚のスープの美味しさを、たっぷり堪能してください!

アレンジもかなり楽しい魚のスープ

レシピ2の下処理までやってしまえば、あとはどんな味にも変幻自在。塩と水だけで煮出せば上品な鯛のあら汁、またしょうがやごま油、ねぎを使い、豆板醤をピリッと効かせれば中華風。いろいろ楽しめます。

鯛のあら汁

超シンプルなあら汁です。普通は昆布など入れますが、塩と水だけで十分おいしいと思います。日本人に生まれてきてよかった!と思えるはず。


白髪ねぎをたっぷり添えて

鯛と大根の中華風スープ

ごま油で生姜薄切りと大根のいちょう切りをまず炒め、そこへ下処理したアラを入れる。水を注いで煮出せば中華風スープのできあがり!

鯛の出汁を吸った大根がとてもおいしいスープです。


赤唐辛子の種を抜いて放り込んでおくと、ピリッとした辛みがアクセントに

残り物でも少しの手間で美味しく食べられて大満足。食材に捨てるところなしと、感じられるスープです。


本格アイヨリソースの作り方を書いた、有賀さんのnoteはこちら!


足し算のフレンチ、引き算の和食|有賀薫|note

スープ・レッスンが本になりました! 好評発売中です!

スープ・レッスン

有賀 薫
プレジデント社
2018-09-27

この連載について

初回を読む
スープ・レッスン

有賀薫

野菜、お好きですか? おいしい旬の野菜を手に入れたら、ぜひシンプルなスープで味わってみてください。旬の野菜をたっぷり食べる、究極のベーシック・スープをスープ作家の有賀薫さんが教えててくれます。

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    コメント

    kaorun6 @shuhei_ookawara 有料記事ですみませんが、以前の記事にこんなのがあります。 ‖ https://t.co/GG4OCdoMLm 1年以上前 replyretweetfavorite

    kaorun6 鯵は骨だけ売ってないので自分でさばいたご褒美みたいなものですが、逆に鯛ぐらいになるとアラ売ってるので買ってきて作ればOK。‖ 2年弱前 replyretweetfavorite

    LeviHotaki 魚屋でアラが売ってたから、これ作ってみた。→| おいしかったー!こんな簡単に 3年弱前 replyretweetfavorite

    yaiask 魚屋でアラが売ってたから、これ作ってみた。→| https://t.co/JqLL52T8wu おいしかったー!こんな簡単に 3年弱前 replyretweetfavorite