冷たさと熱さの入りまじる、大人のいちごミルク

いちごは春の今が旬。そのまま食べることが多いと思いますが、実は火を通すと生食にはない深い風味とやさしい食感がでるそうです。今回は冷たいバニラアイスには熱々のいちごスープをかけたスイートスープのご紹介します。
スープ作家の有賀薫さんによる、旬の野菜をたっぷり食べるベーシック・スープのレッスンです。

旬のいちごを使ったデザートスープは、胡椒が決め手。

バニラアイスに熱々のエスプレッソをかけた、アフォガート。
今日はこのイタリアのデザートを、旬のいちごで作ってみます。

ショートケーキやいちごパフェ、タルトやムースなど、スイーツには欠かせない、いちご。
家では生でそのまま食べる人が多いと思いますが、加熱してあげると、生にはないうまみが引き出されるのを知っていましたか。

冷たいバニラアイスに熱いいちごスープが混ざり合うこのアフォガートは、いわば大人のいちごミルクといった趣き。これに黒胡椒を使ってピリッと辛味を添えているのが実はポイントなんです。

ゴールデンウイークも近くなりました。休日のお茶の時間、ちょっとおしゃれな食べ方を楽しんではいかがでしょうか。

いちごのアフォガート

材料(2人分) 所要時間約15分

いちご 1パック
砂糖 50グラム
黒胡椒(できれば粗挽き胡椒) 少々
好みのバニラアイスクリーム 適量
水 200ml

1. 下ごしらえ
いちごを洗ってヘタを取り★1、1cm弱の薄切りにする。鍋に入れて砂糖をまぶし、約10分置く。★2

2. 煮る
鍋を中火にかけ、2~3分煮る。砂糖がすっかり煮溶けてとろりとしたら、水200mlを加えてあたためる。火を止めて黒胡椒をふる。★3

3. アイスクリームにかける
器にアイスクリームを盛り付け、好きなだけスープをかけて食べる。


レシピのポイント解説

・いちごについて
・砂糖について
・胡椒について

ポイント1. いちごについて

いちごは春が旬のフルーツです。露地もののいちごはまさに今、4〜5月が旬となります。
今回のスープは加熱しますので、少し酸っぱいいちご、小さないちご、また少し傷んでしまったいちごでも大丈夫です。あまり気にせず、お好きなものを選んでください。いちごは収穫してからは追熟しないので、ヘタの周辺まで赤いものが選ぶ時のポイントです。

店頭でよく見かけるいちごの品種は「あまおう」「紅ほっぺ」「とちおとめ」「さちのか」「さがほのか」あたりでしょうか。新しい品種も次々出ています。

今回は、砂糖を加えるため、甘さは気にしなくて大丈夫。むしろ酸味のあるいちごが向いているぐらいです。紅ほっぺ、とちおとめ、さちのかなどですね。

それから、果肉の色は出来上がりの色に大きく関係してきます。この5種の中では、あまおう、紅ほっぺ、さちのかは果肉まで赤い品種です。

左が果肉まで赤い「あまおう」、右は果肉の白い「とちおとめ」。赤さと甘さは関係なし。

あえて言うなら、酸味もほどよくあり香りもよく、果肉が赤い「さちのか」などは、おすすめです。
ただ、希望の品種が揃っている売場はあまりないと思うので、売られている中から手ごろな価格のものを買えば大丈夫ですよ。

不揃いの小さないちごが安く出ていたらチャンス!

ちなみに、いちごの出荷が一番多いのは、12月後半から2月。これはクリスマスケーキで大量に必要になったため、12月に照準を合わせてハウス栽培の技術が進んだからです。結果として、美味しくて大型の品種がこの季節に集中するようになりました。

ホテルやカフェのいちごフェアが、年明けとともにスタートするものが多いのも、そんな理由です。

ポイント2. 砂糖について

私は煮物のときは、花見糖というきび砂糖(さとうきび原料の砂糖)を使っています。ごく普通のグラニュー糖や白砂糖、三温糖などでもOKです。
砂糖はできるだけ控えたい、という方もいるかもしれません。減らして構いませんが、できれば大さじ2(約30g)ぐらいは入れたいところです。

このレシピの砂糖には、甘みをつけるということだけではなく、いちごから水分を早めに出すという役割があります。いちご自身の水分でいちごを鍋の中で蒸し煮するようにして、いちごのうまみを引き出します。いちごに砂糖をまぶしてから少し時間を置くのはそのためです。
いきなり煮始めてもよいのですが、水分の少ないいちごの場合焦げ付くことがあります。そのときはときどき混ぜて、焦げ付かないよう気をつけてください。

砂糖をまぶして10分おくと、いちごから出た水分で砂糖が溶けてスープにうまみが出やすくなる

ポイント3. 胡椒について

胡椒は黒の粗びき胡椒を使うのがベストです。辛みと、胡椒独特のスパイシーな香りが一番感じられます。また、いちごの赤にはえるという意味でも、今回は黒胡椒がいいと思います。

日常的に使っている胡椒ですが、黒胡椒と白胡椒の違いはご存知でしょうか?
これらは品種の違いではなく、摘果時期(未熟、完熟)と、乾燥の手法によって分かれています。

胡椒が未熟のうちに摘んで天日干ししたものが黒胡椒。フリーズドライなどで速乾させるとエスニック料理などに使う緑胡椒(グリーンペッパー)ができます。どちらも鮮烈な香りや辛みが特長です。

一方、胡椒の実を完熟させ、皮をむいて乾燥させたのが白胡椒です。黒胡椒に比べ、マイルドでやわらかな香りとなります。あまり出回っていませんが、皮付きの完熟胡椒(赤胡椒)もあります。フルーティーで味わい深い胡椒です。

胡椒についてもっとくわしく知りたい方はこちらのnoteへどうぞ!

ホットフルーツの魅力を再発見!

北欧では、ベリー類を甘いスープにして日常的に食べる習慣があります。日本の家庭ではフルーツを加熱して食べることは少ないのではないでしょうか。ジャムやコンポートより気軽にできるスープで、火を通したフルーツの、生食にはない深いうまみとやさしい食感を知っていただければと思います。

今回は熱いスープを使っていますが、もちろん冷やしてもいいですよ!

朝ごはんからドリンクまで使いまわし

いちごスープはそのまま食べるのもありですが、薄いいちごシロップでもありますので、いろいろなものに使えます。朝食やおやつにぜひどうぞ。

シリアルにかけて。ヨーグルトも一緒にかければ、一皿でバランスもとれた朝食となります。

スープが甘いので、シリアルはノンシュガーのものがベター

冷やしたいちごスープを炭酸水で割って、いちごソーダ。いちごの天然色に、癒されます。

炭酸水は無糖のものを

いちごの香りと真っ赤な色に、元気をもらえるスイートスープ。どうぞお試しください!


スープのレシピや研究成果を発表している有賀さんのnoteはこちら!


有賀薫|note

スープ・レッスンが本になりました! 好評発売中です!

スープ・レッスン

有賀 薫
プレジデント社
2018-09-27

この連載について

初回を読む
スープ・レッスン

有賀薫

野菜、お好きですか? おいしい旬の野菜を手に入れたら、ぜひシンプルなスープで味わってみてください。旬の野菜をたっぷり食べる、究極のベーシック・スープをスープ作家の有賀薫さんが教えててくれます。

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    コメント

    aximovich @piyopiyo_tititi これの材料欄を参考にしたんですが、無料でお試し購読できることに今気づきました(完食) https://t.co/rgZB5Qo5PD 11ヶ月前 replyretweetfavorite

    alice0903 @ktos_tw そろそろ、この季節だな…とワクワクしています… https://t.co/6erkZll3r0 11ヶ月前 replyretweetfavorite

    yuricamome412 @honya_arai #帰遅スープ にものっていて、雨の日に特に作りたくなるのはこちらのいちごのスープです。旬ではないですが・・・! https://t.co/JbMkStjYmK 1年以上前 replyretweetfavorite

    acrylica_yoko 日曜日のおやつは有賀薫さんの @kaorun6 のいちご 3年弱前 replyretweetfavorite