台湾で出会ったおいしい豆漿(ドウジャン)の世界
台湾の朝食に欠かせない「豆漿(ドウジャン)」をご存知ですか?
これ実は、豆乳のこと。今回は塩味の豆乳スープ「鹹豆漿(シェントウジャン)」をご紹介します。
酢や醤油を入れることでふるふるに固まりかけた豆乳は、「飲む湯豆腐」といった趣を感じ、ほんのりと鼻に抜ける豆の香りに朝から心やすらぎます。 トッピングや調味料で自分好みにカスタマイズして楽しめるにぎやかさ、楽しさも持ち合わせた、とっても魅力的なスープなのです。
実はこの鹹豆漿、家でも簡単に楽しめます。レンジで温めれば、火さえ使いません。 所要時間はたったの3分。シンプルなレシピで豆乳の滋味を感じてください。
台湾の鹹豆漿
ちなみに、台湾には豆漿店といって豆乳を売る小さな店が街角にあり、朝早くからオープンしています。イートインもテイクアウトもOKで、人々は揚げパンや饅頭、小籠包などとともに、豆漿をたっぷりとるのです。まさにパワーブレックファースト。 みなさんも、活気に満ちた朝をこのスープで迎えてみてはいかがでしょうか。
台湾の豆漿店についてさらに詳しく知りたい人は、noteの記事へどうぞ!
鹹豆漿(シェントウジャン)
材料(1人分) 所要時間 約3分
無調整豆乳 200mL
酢 小さじ2
醤油 小さじ1
桜えび 3g(小さじ1程度)
ザーサイ細切り 10g(小さじ1程度)
青ねぎみじん切り 5g(細いもの1〜2本)
ラー油 適宜
1.素材の下準備
スープの器に酢小さじ2、醤油小さじ1を入れておく。★1
2.豆乳をあたためる
耐熱容器に豆乳200mLと桜えび・ザーサイを入れ、1分半〜2分ほどレンジであたためる。
3.あたためた豆乳を注ぐ
あたためた豆乳を1の器に注ぎ、スプーンで軽く混ぜ、固まり始めたら青ネギをトッピングする。★2好みでラー油などの調味料、具材を追加して食べる。★3
レシピのポイント解説
・豆乳について
・調味料について
・具材について
★ポイント1.豆乳について
豆乳は、必ず「無調整豆乳」を使ってください。
売場に行くといろいろあって迷ってしまいますが「調整豆乳」や「豆乳飲料」だと甘い味がついていたり、固まらなかったりする場合があります。製品によって濃さにも差がありますが、普通にスーパーに売られている範囲のものであれば、さほど気にしなくて大丈夫です。
いろいろありますが真ん中の「無調整豆乳」一択で!
豆乳は温めるだけでは固まりませんが、そこに酢と塩分を加えることで、ふるふるに固まります。
温めただけの豆乳はサラサラなのに
酢と醤油を合わせた器に豆乳を加えて混ぜると
おぼろ豆腐のように固まりはじめる!
4人分などを鍋で温める場合はこびりつきやすいのでテフロンの鍋があると理想です。
沸騰させすぎないようにします。 レンジでも鍋でも、温めると膜を貼ることがあります。「湯葉」ですね。そのまま食べても取り去っても構いません。
★ポイント2. 調味料について
醤油と酢は、普段お使いのごく普通のものでOKです。
より本格的に作りたい方のために、台湾の酢と醤油をご紹介してみますね。
「金蘭醤油」はポピュラーな台湾の醤油。日本の醤油より甘みがあって、刺身醤油風です。
「台湾工研烏酢」※ は甘酸っぱい風味の黒酢。原材料にニンジン果汁やオレンジ果汁が使われている、不思議な味わいです。
※ルーツはウスターソースで、台湾ではなぜか黒酢として売られています。鹹豆漿には日本の白い酢の方が合いますが、台湾的な調味料ということでご紹介します。
日本のものより甘め。酢は、ウスターソースに似た不思議な風味
東京では「台湾物産館 笹塚本店」※で購入できます。
※笹塚駅からすぐ、甲州街道沿い。営業時間10:00~20:00 (年中無休・年末年始を除く)
★ポイント3. 具材について
今回レシピでご用意いただく「桜えび」「ザーサイ」は、台湾で食べる鹹豆漿の具材として、もっともポピュラーなものです。
鹹豆漿のおいしさは、味の淡い豆乳をベースに、調味料で「酸味」と「塩味」を、さらに具材で「うまみ」「食感」「香り」「コク」などを追加していくところにあります。
特に大切なのは「うまみ」を出す食材。桜えびは、わかりやすい「うまみ」と華やかな「香り」を兼ね備えています。切る必要もあらかじめ戻す必要もなく、短時間のレンジ調理でも手軽に味が出せてとても便利です。
台湾では小ぶりな乾燥エビ(右)を使うが、日本だと入手しにくいので普通の桜海老(左)で
ザーサイにも、強力な「うまみ」と、コリコリした楽しい「食感」があります。食べた瞬間にわかりやすいエビのうまみに比べ、発酵食品であるザーサイは奥から出てくるタイプのうまみ。
今回は手に入りやすい瓶詰の味付けザーサイを使いました。丸ごとのザーサイの場合は塩抜きします。
必須ではありませんが、「コク」をプラスする具材として、台湾でポピュラーな油條(ヨウティアオ)をご紹介しておきます。
そのまま食べるほか、お粥や豆漿に合わせる「油條(ヨウティアオ)」
豆漿にこの油條を合わせるのが、台湾のスタンダードな食べ方。鹹豆漿には油條を刻んだのがあらかじめ少しだけ入ってくるところが多いです。クリスピーな食感と油のコクが加わって、さらにおいしくなります。
油條は日本では手に入りにくい上作るのもなかなか難しいので、今回代替品として油揚げを使った方法をお伝えしますね。豆腐からできる油揚げは豆乳との相性もばっちり!
オーブントースターで軽く焦げ目をつけてカリッとした食感に
食べやすい大きさに切っておく
豆腐の魅力にも通ずる、鹹豆漿の味わい。
鹹豆漿それ自体はパンチのある味ではありませんが、おだやかな波のようにうまみがじわじわと押し寄せてきます。なおかつトッピングや調味料で自分好みにカスタマイズでき、「飲む湯豆腐」といった趣を感じます。
やわらかな口当たりと体に染み込むような滋味が魅力のスープで、豆乳の魅力を堪能してください。
トッピングいろいろ、味付けいろいろ!
中に入れる具材や追加する調味料をいろいろ変えたいときは、基本のメニューから「うまみ」「香り」「食感」「辛み」などの役割を考えながら置き換えるとうまくいきます。
ラー油の辛みは豆板醤、青ネギの香りはパクチー、桜えびはのうまみは切りいか、ザーサイの食感は穂先メンマやたくあん、というように、機能の似ているものを置き換えましょう。
ひき肉そぼろとパクチーでボリューム鹹豆漿!
こちらはがっつり食べたいという人向け。ちょっと手間はかかりますがひき肉を入れた鹹豆漿を作ってみました。砂糖と醤油で味を付けたひき肉そぼろと、切干し大根を具材にしています。コクのある黒酢を使い、青ネギのかわりにパクチーをあしらって!
切り干し大根は水で戻してぎゅっと絞り、醤油とごま油で味をつける
豆腐と豆乳で精進タイプの鹹豆漿
肉や魚介の入らない鹹豆漿もあっさりしていておいしいですよ。豆乳だけでは味気ないですが、賽の目に切った豆腐を豆乳に入れて、一緒にレンジであたためてみてください。豆腐でぐっとコクが増して食べ応えが出ます。
食欲がないときや病気の時にも消化がよくてぴったり
台湾の朝ごはんの様子と鹹豆漿レシピ、いかがでしょうか。体もあたたまって栄養価も高い豆乳スープで、元気に一日過ごしましょう。
スープのレシピや研究成果を発表している有賀さんのnoteはこちら!