形も色もなくなるまで煮た、ほうれんそうの深い味わい。
今回の主役は、ほうれんそうです。冬になると甘みもうまみも増す冬の葉物野菜はポテンシャルが高く、ただ茹でておひたしにするだけでもおいしいもの。
そんなほうれんそうを、くたくたになるまで煮込んでスープにします。色が悪くなるなんてお構いなし。最低でも20分は煮込んで、オイルと青菜の混然一体としたおいしさを楽しんでください。
すべての材料を鍋に詰め込んでオリーブオイルをかけまわし、火にかけるだけというシンプルな作り方ながら、寒い冬を我慢づよく耐え忍ぶ葉野菜の底力を感じられます。薄切りのトーストとワインなど添えて、寒い冬の休日ランチなどにいかがでしょうか。
くたくたほうれんそうのスープ
材料(2人分)
所要時間 約25~30分
ほうれんそう 1把(約200g)
じゃがいも 中1個
たまねぎ 1/2個
にんにく 1片
オリーブオイル 70mL
塩・胡椒 適量
水 4~500mL
1.野菜を切る
ほうれんそう★1は根を中心に水にさらして泥を落として洗い、大きな株は縦半分に切る。じゃがいもは皮をむき半分に切ってから厚さ1㎝に切る。たまねぎは薄切り。にんにくはつぶす。
2.野菜を鍋で煮る
鍋にほうれんそう、じゃがいも、たまねぎ、にんにくを入れ★2、オリーブオイルをかけまわし★3、塩小さじ1と水350mLを加えてふたをし、強火にかける。3分ほどたったらふたをあけ、菜箸などで全体を大きく返し、再びふたをして中火で煮込む。
3.仕上げる
ときどきふたをあけて水を補いながら、20分ほど煮る。最後に味を見て、足りなければ塩で補う。器に盛り、黒胡椒を振る。
レシピのポイント解説
・ほうれんそうの種類について
・ほうれんそうの扱い
・オリーブオイルについて
★ポイント1.ほうれんそうの種類について
このスープは、甘さがぐんと増し、うまみの濃くなる旬のほうれんそうで作りたいスープです。葉が肉厚で茎のしっかり太ったものを選びましょう。根が赤いのは品種によるものです。
中でもこのスープにおすすめなのが、“ちぢみほうれんそう”です。
平べったい形が特長で、これは太陽の光を少しでも浴びようと、地面に張り付くように葉を広げるからです。低温の外気にさらすことによって作るので、寒い時季しか出てきません。肉厚で糖度が高く、味わい深いものが多いのです。普通のほうれんそうと同じように使えますが、煮込みにも向いています。
右はちぢみほうれんそう。地面に這うような姿で、寒さから身を守る
また、赤根ほうれんそうという山形の在来種であるほうれんそうは、ぷっくりした根が甘くてうまみもあります。根もよく洗い、つけたまま一緒に煮込みます。
赤い部分に栄養やうまみがギュッと詰まっている
なお、葉のきれいなサラダほうれんそうはクセがなく生で食べるにはよいのですが、このスープにはあまり向いていません。
★ポイント2.ほうれんそうの扱い
ほうれんそうは、泥が茎の根元に入り込んでいることが多いので、よく洗いましょう。大きなボウルに水を張ってしばらく漬けておくか、茎を手で分けて流水で泥を流してやると落ちます。
たっぷりの水をとりかえながら洗う
葉の方も水の中で振り洗い
洗えたら水気を切り、大きな株のものは縦半分に切ります。
1株を半分に縦割りに!
小さなものはそのままでもOK
今回使ったのは、20cmの無水鍋です。材料をすべて詰め込むとこうなります。
ぎゅうぎゅう!
今回は水を加えてそのまま蒸し煮しますので、ふたさえしっかりできれば大丈夫。
3~4分ですぐにほうれんそうが小さくなってくれるので、底から大きく返して油を全体に回します。
煮えにくいじゃがいもが下に来るようにして、再びふたをして煮る
★ポイント3.オリーブオイルについて
日本で売られているオリーブオイルには、
1)果実をそのまま絞って油分を取り出した<エクストラバージンオイル>
2)精製したオイルとエクストラバージンオイルをブレンドした<ピュアオイル>
この2種類があります。
一般的にはオリーブの香り豊かなエクストラーバージンオイルは生食用、クセのないピュアオイルは加熱用に使い分けると言われます。
ですが、家庭で二本のオリーブオイルを使いわけるのは面倒です。オリーブの香りがしっかりするエクストラバージンを用意して、生食にも加熱する料理にも使えばよいと思います。もちろん、家にピュアオイルがあるという方はそれをお使いください。
あまりオリーブオイルが得意でない方は、なたね油やサラダオイルでもOKですよ。
とはいえ、どんなにいい油を買っても保存状態が悪ければ意味がありません。あまり料理をしない人は、油は多少割高になっても小さなサイズがおすすめです。
エクストラバージンオリーブオイル(右)はオリーブの風味が強い
ピュアオイル(左)は、精製したオリーブオイルを使っているためクセがない
オイルたっぷりの野菜スープは、パンを添えれば満足の一食に
どぼどぼオイルが入るこのレシピ。こんなに入れて大丈夫かな?と思われるかもしれませんが、オリーブオイルの絡んだ熱々のほうれんそうが発する思いがけない魅力を感じてください。
じゃがいもも入ってボリューム感もあるため肉なしでも満足感が高く、パンを添えればそれで軽い食事になりますし、パスタソースにしても美味しいですよ。
よく煮ておいしくなる、緑の冬野菜たち
冬の緑野菜は寒さに負けたり凍ったりしないよう、自らの水分を減らすため、うまみや甘みが増しています。ほうれんそうの他にも、煮ておいしい野菜がいくつかありますので、ぜひ試してみてください。それらを合わせたミネストローネも素敵なおいしさです。
小松菜とじゃがいものスープ
作り方はほうれんそうのスープと同じ。小松菜のほかには、菜の花もいいですね。じゃがいものかわりにかぶを合わせてもおいしいです。
他の野菜や味付けはすべて同じ
緑野菜のミネストローネ
ほうれんそう、ブロッコリー、レンズ豆など、いろいろな冬野菜を煮込んだ緑色のミネストローネ。noteにレシピをアップ済みなので、よろしければご覧ください。
見かけはすごいのですが、一口食べると深い深い野菜のうまみ
パスタソースにもおすすめ
シャキッとゆで上げたほうれんそうもおいしいものですが、とろけるような柔らかさのほうれんそうも、クセになります。ぜひ作ってみてください。
スープのレシピや研究成果を発表している有賀さんのnoteはこちら!